ワークデイ社長「日本企業に正面から向き合う」 「人事クラウドの雄」中規模企業へ新メニュー
大退職時代が到来する?日本が抱える人事の課題
「米国では、自主的に退職を選ぶ社員が増える大退職時代(ザ・グレート・レジグネーション/The Great Resignation)が到来しているといわれています。日本でも人財の流動化が加速してきており、2022年には世界的な動きになると考えています」と話すのは、企業向けクラウド型財務・人事・計画・分析の統合アプリケーションプロバイダー、ワークデイ日本法人社長の正井拓己氏。
従業員の価値観が大きく変わり、一人ひとりの働き方の柔軟性が重要視されるようになった今、企業は従業員のエクスペリエンス(体験)やエンゲージメント(満足度)に意識して配慮していかなければ、高い離職率に直面しかねない状況にある。
一方、コロナ禍による労働市場の変化の影響で、企業が求めるスキルと従業員の持つスキルが食い違う「スキルギャップ」も日に日に大きくなってきている。
「労働力不足が叫ばれる今、スキルギャップの解消は重要な経営課題となっています。解消のためには、採用時はもちろん雇用後も従業員のスキルを都度正しく理解し、一人ひとりに合った育成プランを計画していく必要があります。とはいえ、人事担当者やマネジャーが従業員一人ひとりと直接キャリアプランやスキルについて協議・定義し、継続的に支援を行うのは、大変骨の折れる作業です。また、新しい事業を立ち上げる、あるいはビジネス環境の変化に追随してビジネスの内容を変更するときに、そこで必要になるスキルセットをすべて自社で雇用または育成し、維持していくのは難しいでしょう。今後はテクノロジーの力を活用しながら、社内外のスキルをいかにシームレスに統合管理できるかということが重要になります」(正井氏)
世界175カ国で9500社が採用、「戦略人事」を実現
そこでワークデイが展開するのが、⼈事や財務、経営計画の機能を1つのプラットフォームに集約して提供する「Workday エンタープライズ マネジメント クラウド」の思想だ。すでに世界175カ国に展開し、導入社数は全世界で9500社、エンドユーザーは5500万人に上る※。ワークデイは、人財管理の「Workday HCM」、財務・会計管理の「Workday ファイナンシャルマネジメント」、分析・計画の「Workday プランニング」を1つのプラットフォーム上で展開でき、経営戦略と財務会計、人財データの横串での連携を可能にしている。※同社調べ
「例えば、地域ごとに売り上げ(財務データ)を比較する際に、それぞれの地域で働く人財のスキルセットやキャリア経験なども、売り上げ実績にひも付けて参照することができます。成功している地域のスキルセットをほかの地域でも適用するなどの施策をグローバル全体でスピーディーに実行することが可能になります」(正井氏)
プラットフォーム内への新たなソリューションの取り込みにも注力しており、個々の従業員のスキルを管理し、スキルギャップを特定して個人の能力開発や社内の人財配置、スキルマッチングに寄与する「Workday Skills Cloud」といったソリューションも既に実装済みだ。
「『Workday Skills Cloud』では、5500万人を超えるエンドユーザーの膨大なデータから、グローバル共通のスキルセットを定義しています。従業員の方々は自らが目指すキャリアに必要なスキルや、そのスキルを得るために必要な経験についてのインサイトを、経営者やマネジャーの方々は新しいプロジェクトの立ち上げに必要なスキルや、そのスキルを持った従業員についてのインサイトを、簡単に得られるようになっています」(正井氏)
新型コロナウイルスに関連したソリューションの実装も欠かさない。「昨今は、『Return to Workplace(職場の再開に関する時期の検討や人財管理)』が、多くの企業でホットなキーワードとなっています。われわれは、コロナワクチンの接種情報とWorkday上で管理されている人財データをシームレスに結び付ける機能を実装しました。この機能を利用することで、従業員の方々のワクチン接種情報を把握したうえで職場の再開を検討したり、日々のウェルビーイングをサポートしたりできるようになります」(正井氏)。
中規模企業の人事・経営改革のパートナーに
最近では日本市場においても多岐にわたる業種、業界、規模の企業へとWorkday導入の裾野が広がってきていることから、2021年11月には、従業員3500名までの中規模企業向けにソリューションをパッケージ化。グローバルで導入展開している「Workday Launch」の提供を日本においても開始した。大企業向けと同様のソリューションで、異なるのは導入アプローチの違いだという。
「大企業様が人事システムの要件をプロジェクト開始時に詳細に協議・設定し実装される傾向があるのに対し、中規模企業様は改革を支援するシステムをいち早く立ち上げ、その後は経営環境の変化に合わせて必要な要件や機能を柔軟に追加、変更できるソリューションを求める傾向にあります。Workday Launchはそうしたニーズにお応えすべく、われわれのグローバルでの導入実績に基づき、事前に必要となる機能や設定をセッティングし、柔軟に追加機能も実装できる導入アプローチになっています」(正井氏)
中規模企業の事例としては、クラウド名刺管理サービスのSansanが、2020年にWorkdayを導入。IT部門ではなく人事部がプロジェクトを主導、かつコロナ禍にリモートで導入を実施したにもかかわらず、業務プロセスの見直し開始からわずか5カ月で実運用にこぎ着けたという。
「Workdayはお客様の個別用件をビジネスプロセスとして実装するにあたって、ワークフローの機能を使ってノンコーディングで実装できる点が大きな魅力です。これは旧来のERPではなしえなかったことであると考えています」(正井氏)
料理レシピのサイトで知られ、グローバル展開を推進しているクックパッドも、中規模企業でWorkdayを導入したうちの1社だ。
「クックパッド様はもともと、財務、給与計算、採用、人事評価などコーポレート部門の業務でそれぞれ異なるシステムを導入されていました。海外拠点でも日本とは異なるシステムを採用していたため、効率や精度の問題を改善すべく、Workday導入を通じて人財と財務のデータを統合されました」(正井氏)
企業が抱える個別の人事課題にのみ対応するソリューションが多く存在する中で、業務機能の不足や散在するデータを異なるソリューションの継ぎはぎで補完することを繰り返すと、データモデルやセキュリティ要件、ビジネスプロセスが分断され、企業の改革を支える業務・部門横断的な連携が難しくなってしまうという課題が残る。Workdayは基本的な人財管理業務に加え、ジョブ型雇用への対応や個別のスキル育成、標準的な評価制度の導入、従業員エンゲージメントの向上など、新たに必要となる人事施策についても同じプラットフォーム上でデータモデルを共有し、業務間の連携をシームレスに実行できる。
「Workdayを導入するプロセスは、単なるシステム導入ではなく、トランスフォーメーションのプロセスそのものであると考えています。Workdayを導入することで、人事・経営の連携やジョブ型への移行など、お客様自身の制度改革が進んでいきます」と語る正井氏。大企業のみならず中規模企業にも寄り添う同社は、日本における人事・経営改革の推進に貢献してくれるだろう。