中小企業こそ知るべき脱炭素の「経営的メリット」 中小企業診断士に聞く「社員を巻き込む」第一歩

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カーボンニュートラルに向けてアクションを起こす必要性を感じつつも、具体的な第一歩を踏み出せずにいる中小企業は多いだろう。実際に、海外では大企業が取引先企業にCO₂削減を求める動きが広まり、日本でも同様の事例が出てきている。待ったなしの状況が続く今、中小企業が脱炭素に取り組むことで得られるメリットと、社員を巻き込みながら脱炭素を進める方法を探るため、中小企業診断士の高鹿初子氏に話を聞いた。

脱炭素という視点から企業を評価する動きがある中、取引先をはじめとするさまざまなステークホルダーから選ばれる存在となるため、具体的な行動を始めている中小企業も少なくないようだ。実際、脱炭素という課題を克服していく挑戦は企業価値を向上させるチャンスでもある。「すでにそのことに気がついている経営者からの相談が相次いでいます」と明かすのは、中小企業診断士の高鹿初子(こうろく・はつこ)氏だ。

独立行政法人 中小企業基盤整備機構
中小企業診断士
高鹿初子氏

高鹿氏は独立行政法人中小企業基盤整備機構のカーボンニュートラルのオンライン相談窓口でアドバイザーも担当しており、脱炭素への意識について中小企業経営者の二極化を実感しているという。

「先日、『カーボンニュートラルの設備投資をしたい』と、中小企業の経営者が金融機関の方と一緒に相談に来ました。上場企業ではESG投資が注目されていますが、その傾向は中小企業も同じ。金融機関はCO₂削減に取り組む企業を評価します。そのことを知っている経営者は、自社の企業価値を高めるためにカーボンニュートラルをうまく活用しています」

このように脱炭素の取り組みにより、取引先獲得や融資獲得などの対外的な高評価につながる事例もある。さらに高鹿氏は脱炭素へ取り組むメリットとして、社内の活性化とコスト削減の2点を挙げる。

「カーボンニュートラルの取り組みは世の中でも注目されており、モチベーションや誇りになります。とくに環境意識が高い若い世代は、その傾向が強い。社員の採用や定着にも寄与するはずです。ほかにも目に見える効果としては、省エネによる電気や燃料の費用削減でしょう。ある企業は脱炭素と同時に働き方改革を行い、残業時間を削減。電気代に加えて人件費も抑制できました。社員のワーク・ライフ・バランス改善にもなり、一石三鳥でしたね」

オフィスでまずやるべきなのは「現状を知ること」

脱炭素への取り組みは、再生可能エネルギーの活用なども含めて考えていく必要があるが、最初の一歩としては省エネから始めることが一般的だ。では、具体的にどうやって省エネを進めればいいのか。高鹿氏は、「まずは現状を知ること。電気代の内訳を調べて『見える化』すべき」とアドバイスする。

「オフィスの場合、一般的に空調、次に照明の電気使用量が多いです。新しい設備に交換することも効果がありますが、毎月どれだけの費用がかかっているのかを把握したうえで、社員の皆さんを巻き込んで省エネのアイデアを出し合い、実践してみてください。そして翌月に数字を確認し、一歩ずつ進めていくことが大切です。やみくもに節電するより、成果を確認しながらやると継続しやすいと思います。例えば節約代をイメージし、『今日のおやつ代はこの節約分で賄えた』と考えるなどでも、ささいなことですが効果を実感できるのではないでしょうか」

空調や照明は省エネの対象としてわかりやすい。一方、盲点になりがちなのがプリンターや複合機だ。実はオフィスで使う電気の約10%はプリンター・複合機のものだ(エプソン販売調べ)。

プリンター・複合機で脱炭素に貢献するアプローチは2つある。1つは、消費電力の大きいレーザー方式から、省エネ性能が高いインクジェット方式に変えることだ。レーザー方式を使ったことがある人なら、印刷ボタンを押してから予熱に時間がかかり、印刷が始まるまでプリンターの前で待った経験があるだろう。あの予熱でまさに電気を使っている。それに対して、インクジェット方式は予熱なしですぐインクを吐出(としゅつ)するため、少ない消費電力での印刷が可能になる。

一般的にレーザー方式は高速印刷するほど消費電力が大きくなるが、エプソンが開発したHeat-Free Technology搭載の〈LX〉シリーズは、スピードが上がっても消費電力量はほぼ一定。レーザー方式から〈LX〉シリーズに置き換えると、年間のCO₂排出量を47~57%削減できるという。※1 ※2

※1 CO₂排出量は、環境省の「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」に掲載の算定方法(電気使用量×単位使用量当たりの排出量)を用い、「令和3年提出用」に掲載の係数(代替値0.000470t-CO₂/kWh)を使用し算出

※2 〈LX〉シリーズのTEC値とENERGY STAR®画像機器基準Version3.0にて定められたTEC基準値で比較した場合の削減比率

社員を巻き込み取り組める「計画的ペーパーレス」

プリンター・複合機で脱炭素を進めるもう1つのアプローチが、ペーパーレス化だ。総務省のデータによると、A4用紙1枚につき5.12g のCO₂が排出されている。仮に年間2万枚の紙を使用しているなら、電気使用と別に約102kgものCO₂を排出している計算になる。

そこで、新たなサービスとして注目されているのが、エプソン販売が生み出した、計画的なペーパーレスとコスト削減を実現させる「ペーパーレスサクセスプラン」だ。もともと同社には月々の規定枚数やメンテナンス料金などをパッケージにした「オール・イン・ワンプラン」がある。ペーパーレスサクセスプランは、オール・イン・ワンプランをベースに、規定枚数を毎年段階的に減らしていくプラン。機種によるが、LX-10050Mの場合、規定枚数が毎年10%減り、5年目には1年目に比べて34.5%の削減になる。当然、規定枚数の削減に合わせて月々の料金も安くなる。

しかし、気になるのは、複合機メーカー・販売会社であるエプソン販売が、あえてペーパーレス化を提案している点だ。顧客になるべく多くの紙を印刷してもらったほうが売り上げにつながるはずだが、なぜこのプランを始めたのか。そこには、未来を見据えたエプソン販売の思いがあった。

コロナ禍で顧客の働き方や働く場所の多様化が一気に進む中、エプソン販売社内で議論が重ねられていた。きっかけは、これからの働き方が大きく変わろうとしている中、今までどおり印刷することを応援するプランだけでいいのか、という社内の声。自分たちに何ができるのかを考え、たどり着いたのが、インクジェットの環境性能に加えて紙を減らすことで顧客の業務効率化と脱炭素化社会の実現に貢献できるペーパーレスサクセスプランだった。

このプランについて、冒頭の中小企業診断士、高鹿氏は次のように評価する。

「ツールに投資できる額や社員のITスキルなどを考えると、中小企業がいきなり紙を大きく減らすのは困難です。しかし、毎年少しずつなら現実感があって取り組みやすい。プランに沿って手を打つことで自然にペーパーレス化が進められるのは、中小企業にとって魅力的です。また中小企業では、ほぼ全社員が何らかの形で印刷業務に関わっているので、減らす枚数が明確になるからこそ、社員を巻き込んでの目標達成につながると思います」

2050年のカーボンニュートラルに向けて、企業規模にかかわらず、今後ますます積極的な対応が求められる。その1つの手段として、エプソン販売が提案する計画的なペーパーレスは、中小企業の取り組みの一助となるだろう。まずはプリンター・複合機をきっかけに、業務効率化とコスト削減を検討してみてはいかがだろうか。

計画的なペーパーレス化で脱炭素化の取り組みを実現する

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