5Gや自動車に注力する「コアコンポーネント」事業 半導体から宝飾品まで、多様な事業を包括

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京セラが、かつてない大規模な組織再編を行い、既存事業を3つのセグメントに集約した。その1つ「コアコンポーネント」セグメントは、事業間連携によって経営基盤を強化しつつ拡大する市場にフォーカスし、事業拡大を図る。事業成長に向け、どのような戦略に打って出るのか、セグメントを率いる触浩(ふれ・ひろし)取締役執行役員常務に聞いた。

部門横断組織で経営基盤を強化

2021年4月、京セラは、既存組織の枠組みを刷新し、迅速かつダイナミックな経営を実践するべく大規模な組織再編を行った。多岐にわたる事業を3つのセグメントに集約。その1つ「コアコンポーネント」は、同社の創業製品であるファインセラミック部品をはじめ、自動車部品、光学部品、半導体関連部品、また医療機器宝飾品など、7つの事業を包括するセグメントになった。

――多様な事業を包括し、どのようなシナジーを創出していこうとお考えですか。

 事業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する中、とくに成長事業への設備投資や人的資源の活用に当たって、時機を待たず、迅速に経営判断を下せるようになったのは大きなメリットです。また7つの事業を超えて情報交換や連携を密にすることで、各事業の強みを横展開し、総合力でセグメント共通の課題を解決することも可能になります。

現在、事業成長に向けて足場となる経営基盤を強化するため、部門を横断したプロジェクト活動を進めています。その一つの「技術推進」プロジェクトでは、セグメント内の優先課題を見定め、各部門から技術者が集まって解決に取り組むとともに、技術力の向上や技術者育成も図っています。

また「戦略企画」プロジェクトでは、コア技術と開発テーマの棚卸しを行い、将来を見据えて強みや新製品を探索し、成長戦略の立案に取り組んでいます。さらに「HRD(人材開発)推進」と「QMS(品質管理システム)推進」を加えた4プロジェクトを通して人材と組織力を強化し、成長のための基盤を確かなものにしていきます。

伸びる市場に焦点を当て生産増強と新製品開発

――新セグメントで注力する事業分野を教えてください。

 1つは、半導体関連事業です。情報通信市場が大きく拡大する中、半導体製造装置用のファインセラミック部品のほか、半導体に用いられるセラミックパッケージ有機基板の需要が大きく伸びており、これにいかに応えていくかが課題です。そのため国内外で設備投資と人的投資を行い、生産力の増強に取り組んでいます。

もう1つは、自動車関連事業です。こちらも旺盛な需要に応えていく必要があります。とりわけ注力するのが、ADAS(先進運転支援システム)関連製品です。センサーやプロセッサー、カメラモジュールの搭載拡大に対応するため、タイの生産工場を増強するなど増産体制を強化しています。

――新製品開発も着々と進められていますね。

 現在、2つの方向で開発を進めています。1つは、既存製品を進化させることです。半導体製造装置部品や半導体パッケージなど、これまで最先端分野に提供してきた実績がわれわれの強みです。情報収集力を生かして技術開発を進め、先端分野のニーズに応えられるよう製品を進化させていきます。

もう1つは、コア技術を融合し、これまでにない製品を生み出すことです。例えば当社は、ファインセラミックスの技術を生かし、エネルギー効率が極めて高いSOFC(固体酸化物形燃料電池)の心臓部に当たるセルスタックの開発、量産を実現しました。このSOFC技術をさらに進化させ、ユニークな製品の開発を進めています。

SOFCセルスタック(写真右)
家庭用燃料電池エネファームミニの発電ユニット(写真左)

――グローバルの生産・販売体制における連携はお考えですか。

 2019年にグループ入りした欧州の2つの拠点では、ユニークなファインセラミック部品を製造しています。これまでは欧州市場にとどまっていましたが、今後は京セラのグローバルな販売網を活用し、欧州以外にも展開することを考えています。また、セラミックパッケージが強固な販売網を有し、世界でもトップクラスのシェアを誇る一方で、有機パッケージのシェアはまだそれに及びません。こちらもセグメント内で情報共有と連携を進め、受注の拡大に取り組んでいきます。

――セグメントが目指すビジョンをお聞かせください。

 コアコンポーネントセグメントでは「持続的な社会の発展、健康で心豊かな生活のコアとなる製品を提供し、経営理念を実現する」というビジョンを掲げています。SOFCをはじめ脱炭素やエネルギー問題解決に寄与する事業や、天然石の採掘に置き換わる製品として再結晶宝石を展開する宝飾品事業、健康な生活に役立つ医療関連事業を含め、すべての事業を通じて社会の発展に貢献していきます。

目指すのは、「全従業員の物心両面の幸福」と「人類、社会の進歩発展」をうたった当社の経営理念の実現です。そのために自らの仕事を通じて社会に貢献する幸せを実感するチャンスを社員に与えることが、私の役割だと考えています。困難な課題こそ、成長のチャンスです。私自身これまで多くの部門で、数々の課題解決を経験する中で成長を実感してきました。だからこそ難しい課題に挑戦し、乗り越えるチャンスを与え、成長を後押ししたい。それがひいては京セラの、そして人類、社会の進歩発展につながると信じています。

ファインセラミックスや半導体関連で需要拡大に応える積極的な設備投資
コアコンポーネントセグメントでは、情報通信分野など成長が見込める市場に焦点を当て、事業拡大を図っている。足元で業績を大きく伸ばしている産業・車載用部品もその1つだ。現在も需要が生産能力を上回っており、さらなる生産拡大を進めている。とりわけ好調な半導体製造装置用ファインセラミック部品の生産力向上に向け、鹿児島国分工場に新建屋を2棟建設する。「2022年10月から順次生産を開始し、生産能力を倍増させる」と触氏は計画を語る。これに加えて車載ADAS関連製品の需要拡大にも対応していくという。
もう1つ、売上を伸ばしているのが、半導体関連部品である。こちらも生産能力を超える需要が続いていることから、国内外で生産能力の拡張を進めている。その1つとして、ベトナム工場に設備投資を実施。セラミックパッケージの生産能力拡大を図っている。また国内では京都綾部第3工場への設備投資により、有機パッケージ事業の拡大に注力する。
技術開発も積極的に進める。「情報通信分野では、次世代に向けて高周波への対応が必要となることを見据え、ミリ波レーダーの技術を生かして、大型高多層FC-BGA(高密度半導体パッケージ基板)や高性能SoC基板の技術開発に取り組んでいる」と触氏。今後、大きな事業に成長することを見込み、需要の取り込みに尽力していく。
 
鹿児島国分新工場2棟の完成予想図