日本人の資産形成、81%「必要」も77%「動かず」 コロナ禍調査で発覚64%「専門家の相談有益」
77%の人が、資産運用の取り組み「なし」
1927年に米国で発足したMDRTは、世界をリードする500社以上の生命保険および金融サービス会社から、卓越した専門家で構成されたグローバルな独立組織。現在70の国・地域から集結しており、豊富な知識と経験を基に、高水準のサービスを提供する。
今回のアンケート調査「資産形成における不安と対策 消費者意識調査から見る専門家ニーズ」は、MDRTが日本国内の22〜79歳の男女2000人(専門家と相談経験のある人、458人を含む)を対象に、2021年8月27〜30日の期間で行ったものだ。
実際、63%が「国内景気は後退している」、31%が「今後2年以上にわたり資金計画への悪影響が続く」と考えており、半数以上の53%が個人資産への影響は「08年のリーマンショックより悪い」と回答した。
とくに衝撃的なのは、ほとんどの人がコロナ禍で資産形成・運用の必要性を感じていながら、具体的な行動は何も取っていないという事実。
MDRT日本会2021年度会長の山﨑圭氏は、「81%が資産形成・運用の必要性を感じており、52%は現在の貯蓄・貯金状況に不満を持っている一方で、77%の人が、コロナ禍で新たに始めた資産形成は『ない』と回答しました。頭ではわかっていても、行動に結びつかない。このギャップは想像以上でした」と語る。
資産形成の「目的」はネット上を探しても見つからない
とはいえ、調査からは「何とかしなくては」という意識もうかがえる。「資産設計に関して、どのようなことを行いたいか(複数回答可)」という項目には、40%が「自分で勉強したい」、24%が「専門家のサポートを受けたい」と回答した。
とくに近頃はインターネットなどで簡単かつ無料で資産形成・運用の情報を入手でき、自分でも勉強しやすい環境がある。ただ、懸念すべき点もある。
「資産形成・運用で重要なのは『目的と手段』を考えることです。『目的』とは、個人であれば豊かで幸せな人生や、かなえたい夢、万が一の備えなど。法人であれば、会社の繁栄はもちろん、地域社会への貢献や従業員の生きがいなどでしょう。一方、インターネット上の情報の多くは、商品や運用ノウハウなど『手段』に特化しています。まずは『何のために』を明確にしてから、『どの商品で運用するか』という具体的な手段を講じるべきです」(山﨑氏)
そうは言っても、目的や夢を言語化するのはなかなか難しい。また、山﨑氏によれば、資産の現状把握が苦手な人や、そもそも現状と向き合うのが怖くて目をそむけてしまう人も多いそうだ。それゆえ、客観的なアドバイスができる専門家の存在には注目が集まる。
実際、47%の人は「コロナ禍で専門家に相談したい気持ちが増した/実際に相談した」、もしくは「多少増した」という。また、64%が専門家による資産設計の相談・アドバイスを有益だと感じており、さらに35%が有料でも専門家のサポートを受けたいと回答した。
資産形成の「近道」とは?
「資産形成には、スポーツ同様に『オフェンス』と『ディフェンス』のバランスが必要です。多くの方は、運用してリターンを上げる『オフェンス』に意識が向きがち。しかし実は、現状の生活や労働収入に対するリスクヘッジも同様に大切なのです。確かに『4点取られても5点取れば勝ち』なのですが、同様に『5点取っても6点取られれば負け』なんです」
山﨑氏が語る「資産形成の近道」とは、労働収入を資産運用のリスクヘッジとし、保険(社会保障と民間保険)を労働収入のリスクヘッジにするという考え方だ。
「最近会ったビジネスパーソンや経営者の方は、口をそろえて、『収入が不安定になると怖い』『給付金や支援金はありがたい』とおっしゃいます。いずれも当たり前のことですが、この2年間は多くの方々の『当たり前』が崩れ、また、その重要性に気づかされました。こうした状況で当たり前を守ることこそが保険の役割です」
私たちは「継承者」であるべき
今、山﨑氏が懸念するのは、東日本大震災や今回のパンデミックで人々が味わった不安や苦しみが、この先も繰り返されることだ。疑いもしなかった「当たり前の明日」が訪れなかった経験を、次の世代に伝えていくことが自分の使命だと山﨑氏は語る。
「私たちは今回、さまざまな『当たり前』が実は当たり前ではなかったことに気づかされました。それでも、時が経てばまた忘れてしまうのが人間です。私自身、東日本大震災を経て車のガソリンをつねに満タンにしておこうと決めたのに、今は実践できていません。
ただ、今回のアンケートから、消費者の皆様が具体的な行動に移るには、何か心理的なハードルがあることがよくわかりました。私たちは、皆様からの相談を待つだけではなく、われわれに相談することでどのような効果が得られるのか、明確に示すべきだと認識を新たにしています」
一般社団法人MDRT日本会の2021年事業方針テーマは、「継承者 ~変化の時代に、過去と未来を繋ぐ~」だ。
「MDRTの歴史は、挑戦の歴史といわれます。困難な状況は続くかもしれませんが、私たちは挑戦を続けます。一度限りの人生を楽しく幸せに生きたいというお客様の『ウォンツ(欲求)』に耳を傾け、寄り添い続けることが、皆様の不安を安心に変えると信じ、活動してまいります」
われわれは、コロナ禍で足止めを食らい、図らずも、自分にとって本当に大切なものと向き合う機会を得た。ニューノーマル時代に向けた準備は今しかできない。10年後、20年後の自分や家族のために、資産形成・運用を考えるチャンスであることは確かだろう。