田中理恵「目標は今も、立つだけで絵になる女性」 持続可能な食生活に向けて、注目は植物性食品

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体操元日本代表の田中理恵さん。現役時代は、芸術性の高い体操で多くの観客を魅了した。2013年に現役を引退し、現在はメディアへの出演や体操教室の講師などに加え、3歳の子を育てる母としても活躍中だ。「美しく健康で、パワフルな自分でいたい」と語る田中さんには、食生活そしてサステナブルなライフスタイルについて、強い意識があった。

現役時代は緻密な食事制限、今は食を楽しめるように

今もなお、ヘルシーな美しさが印象的な田中さん。現役時代はストイックな食事制限をして、体重をコントロールしていたという。

「体操競技は全身運動なので、体が重すぎるとケガにつながりやすく、逆に軽すぎるとパワーが出ません。私のベストである46〜46.5kgという体重を365日キープしないといけないので、毎日、栄養やカロリーを細かく計算して厳しく食事を管理していました。栄養補助食品でアミノ酸を補給するのも、あの頃の習慣でしたね」

アスリート一家で育った田中さんは「幼少期から、おやつといえば漬物や納豆。ヘルシーな食生活が当たり前の環境だったので、現役を引退した後は、とにかく自分の好きなものを食べよう!と心に決めていました」と振り返る。しかし、ジャンクフードやスイーツを日常的に食べるようになると、肌荒れが気になったり、スリムだった体形が崩れるなど悪変。改めて、食事の大切さを痛感したという。

「健康的な食生活は、パワフルで強い自分でい続けるために欠かせないものだと気づきました。普段は和食をメインとして、野菜や魚、肉などを1日3食バランスよく食べるよう意識しています。実は、ラーメンが大好きなんですが、何か目標を達成したときに『自分へのご褒美』として食べると決めています」

栄養バランスは、1食当たりではなく1日トータルで考えるのが田中さん流。今は母として健康でありたいという気持ちが強いというが、それでも美意識の根本は揺らがない。

「体操は、1回当たりの演技時間が数分だけ。そのわずかな時間で、観客の心に何かしら感動を残したいというのが、現役時代のいちばんの目標でした。そこで目指したのは、芸術性と表現力が豊かな選手。ずっと、観客に『田中理恵はきれいだな、美しいな』と思わせるオーラを出そうと意識していました。子どもの頃から、体操のコーチだった父に『立っているだけで絵になる選手になりなさい』と指導され続けていたことが影響しているかもしれません。齢を重ねても、母になっても、『立ち姿が美しい女性』は変わらない理想です」

SDGsにぴったり「プラントベースフード」に興味津々

2021年10月に『2021世界体操・新体操選手権北九州大会』の大会組織委員会委員を務めた田中さん。同大会はSDGsを推進するイベントとして、SDGs達成につながる100項目の取り組みに挑戦した。

「この大会に関わったことで、SDGsについて日常的に意識するように。サステナブルな食生活にも興味が湧いて、どんなものを食べるべきか考える機会がすごく増えました。中でも注目しているのは、環境意識や健康志向にぴったりな『プラントベースフード』です」

プラントベースフードとはその名のとおり、植物性の食材や原料から作られる食品のこと。おいしさはもちろんのこと、食肉の供給不足による「タンパク質危機」の回避、生産過程でCO2排出量や水資源使用量を低減できるといった観点から幅広い世代の支持を集め、急速に存在感を増している。とくに欧米を中心に、世界的なトレンドになりつつある食品だ。

そしてプラントベースフードの中でも、動物肉の代替として注目されているのが「大豆ミート」をはじめとする植物肉だ。植物肉市場は2020年に86億米ドル(約9500億円)の規模に達し、21年から26年の間に年間約17%で成長すると予想されている(※)。低カロリー・高タンパクであることに加え、製造プロセスでの環境負荷が低いことから、サステナブルな食品であることも需要を後押ししていると考えられる。

「例えば大豆ミートは、もはや牛肉や豚肉と変わらない食感と味わいに進化していますよね。これまであまり意識していませんでしたが、日常使いのスーパーにも多くの商品が並んでいます。私の食生活は体重や体脂肪のコントロールのため昔から植物性食品の割合が多いですが、選手時代は『お肉類はなるべく控えめに』と気にしていたところもあったので、こんなにおいしいものがあることを早く知りたかったです。現役を引退してからも食事のバランスには気をつけているので、プラントベースフードをうまく食生活に取り入れてバリエーションを広げ、いろいろな味わいを楽しんでいきたいですね」

※出典:グローバルインフォメーション「プラントベースミート市場:世界の業界動向、シェア、規模、成長、機会、予測(2021~26年)」(IMARC Services Private Limited)

急速に広がるプラントベースフード市場

日本におけるプラントベースフードの浸透に一役買っているのが、食品や飲料に用いられる機能性素材の輸出入・製造を行う長瀬産業だ。1832年に京都で創業して以来、時代が求める幅広い素材をグローバルに取り扱っており、新たにプラントベースフードの原料も手がけるようになった。

海外グループ会社とのタッグで、アスリートが摂取する「アミノ酸」や「プロテイン」の原料も手がける長瀬産業。プロテイン市場では、植物性プロテイン(大豆タンパク、エンドウ豆タンパク)も注目だ

田中さんが「もはや牛肉や豚肉と変わらない食感と味わい」と語る大豆ミートだが、大豆を使用した代替肉やハム、ソーセージは、どうしても食感がボソボソしたり、大豆特有のにおいが残ったりして「肉っぽく」なりにくい。

そこで長瀬産業では、食品メーカーに対して食感の改善やにおいの封止(マスキング)に効果的な素材や酵素をグループ内で製造・提案している。さらに、大豆タンパクや、大豆がアレルゲンで摂取できない人向けに、低アレルゲンで栄養バランスに優れたエンドウ豆タンパクを輸入して国内に紹介するなど、商社として消費者の選択肢を広げることにも一役買っている。

「SDGsが私たちの生活に浸透し始めた今、環境問題に思いを巡らせる人は確実に増えていると思います。動物性食品から植物性食品へのシフトは、環境負荷の低減にもつながりますから、一人ひとりが日常的にできるSDGsの取り組みともいえるのではないでしょうか。私も、毎日の食が将来の住みよい社会につながるということを、娘を持つ母親としてもっと意識していきたいと思います」

今、国際社会が一丸となって目指すサステナブルな世界。環境と健康への意識の高まりに合致したプラントベースフードは、今後さらに広がっていきそうだ。

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