中国「農業用ドローン」、整備・修理網を改革の事情 極飛科技、販売代理店任せのサービスに限界

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中国の農村部では農薬の散布や種子の散播などにドローンの活用が広がっている。写真は小麦の種子を散播する極飛科技製のドローン(同社ウェブサイトより)

中国の農業用ドローン専業大手の極飛科技(XAG)は、(販売代理店に委託していた)機体の整備や修理などのアフターサービスに「直営方式」を導入する。2021年12月22日、同社が開催したイベントで創業者兼CEO(経営最高責任者)の彭斌氏が明らかにした。

きっかけは2021年の前半、中国東北部の黒竜江省の一部地域で、同社製ドローン「P80」に多数の不具合が発生したことだ。その際の対応をめぐって、極飛科技は製品およびアフターサービスの品質に対して顧客から厳しい批判を浴びた。

この教訓をもとに極飛科技が打ち出した解決策が、直営方式によるアフターサービスの改革だ。「われわれは目下、中国全土に25カ所の直営サービスセンターを立ち上げている最中だ。加えて、直営の移動サービスカーも50台投入する」。彭氏はそう説明した。

農業用ドローンの主な用途は農薬の散布、肥料の散布、種の散播などだ。中国の農村部では、若年労働力の減少や農地集約の加速を背景に農業用ドローンの活用が広がり、販売機数は年を追うごとに増加してきた。

ドローン6000機を無料貸し出し

極飛科技は、民生用ドローン最大手の大疆創新科技(DJI)と並ぶ農業用ドローンの2大メーカーの1社だ。中国の農業用ドローン市場で、両社は合計9割近いシェアを握っている。

農業用ドローンメーカーが直営方式のアフターサービスを導入するのは、極飛科技の試みが初めてだ。事情に詳しい関係者によれば、同社が代理店任せは限界と判断した背景には、農閑期と農繁期のサイクルによるアフターサービス需要の変動がある。

農閑期にはユーザーがドローンをほとんど飛ばさないため、販売代理店は(アフターサービス要員を含めて)従業員をレイオフしてしまう。そして農繁期に入ると、販売代理店は臨時雇いを含めて従業員を増員するが、新人は(ドローンの修理技術など)専門的な研修を受ける余裕がほとんどない。そのためアフターサービスの品質が犠牲になっていたのだ。

本記事は「財新」の提供記事です

直営方式のアフターサービスは、極飛科技が(P80の不具合によって傷ついた)評判を回復させるのに役立つはずだ。彭CEOによれば、農繁期に顧客の農作業を中断させることがないよう、直営サービス網に6000機のドローンを用意しておく。そして顧客のドローンが故障した時は、修理が終わるまでこれらの代替機を無料で貸し出すという。

(財新記者:方祖望)
※原文の配信は2021年12月22日

財新 Biz&Tech

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