京セラが「大規模な組織再編」で目指す境地

部門間のシナジーを創出、DXや新事業にも注力

京セラが、1959年の創業以来初めてともいえる大規模な組織再編を実行した。新たな組織体制の下、攻めの成長戦略を立案して新規事業の創出やDX(デジタルトランスフォーメーション)、人材活用を進め、売上高2兆円を射程に入れる。新たな組織で今後、何に注力し、中長期的にはどのような未来を描いているのか。代表取締役社長の谷本秀夫氏に聞いた。

組織再編で狙う部門間連携と新事業創出

ファインセラミック部品をはじめ自動車部品、電子部品、情報・通信機器、医療機器など多岐にわたる製品を擁し、広範に事業を展開する京セラが、2021年4月、かつてないグループ全体にわたる組織再編を実行した。16あったプロダクトラインを「コアコンポーネント」「電子部品」「ソリューション」の3つのセグメントに集約するとともに、管理部門も「コーポレート」として統合。部門間の連携強化や組織の活性化、経営資源の再配分によって、新たな成長軌道を描き出そうとしている。

――まず組織再編の狙いを聞かせてください。

谷本 これまで多領域に事業を拡大する中で、縦割り組織による部門間の隔たりが課題になっていました。さらなる発展を遂げていくためには、その壁を取り払って組織間の交流を促進し、部門の垣根を越えたシナジーや新規事業の創出を促す必要があると考えました。もう1つの狙いは、組織をフラットにして事業スピードを速めることです。そのために各部門のトップに大幅に権限を委ね、迅速な意思決定と思い切った事業展開を可能にしました。

――新規事業の創出について進捗を聞かせてください。

谷本 製品や技術の寿命は年々短くなっており、コモディティー化した製品だけでは将来の成長は望めません。厳しい競争を生き残っていくためには、まったく新しい視点でほかとは一線を画す製品や事業を生み出していく必要があります。そのため全社横断的な開発課題や事業テーマを見いだし、社長直轄プロジェクトとして推進しています。

21年1月、M&Aにより、米国のSLD Laser社を傘下に加えたこともその1つです。同社は、GaN(窒化ガリウム)技術を基盤とするレーザー光源で世界屈指の企業です。この技術と当社のさまざまな開発技術を融合させることで、自動車のヘッドライトや各種照明、無線給電、情報通信分野のソリューションなど、新しい分野への応用展開を考えています。

またAIを用いて多様な生産現場に適用できる自律型協働ロボット・システムを開発し、22年度の事業化を計画しています。そのほか、ローカル5Gシステムや、インクジェットプリンターの製造技術を活用したデジタル捺染機の開発など、これまでにない分野で新規事業を創出しています。

左:自律型協働ロボット・システム 右:GaN技術を応用したレーザーダイオード

成長戦略実現を支えるDX推進と人材活用

――成長戦略の実現に向けた経営基盤の強化についてはいかがですか。

谷本 まず会社の総合力を最大化するために、全社を挙げたDXを推進しています。部門を超えて全社からメンバーを集め、「デジタルビジネス推進本部」を発足。製造部門において「生産性倍増」を掲げ、AIやITを用いた自動生産システムを構築しました。滋賀野洲工場に新設した蓄電池の生産ラインにシステムを導入し、生産性と品質の向上を実現しています。今後は順次、全製造部門に「スマートファクトリー」を展開していく計画です。また間接部門においてもさまざまな部門のシステムを統合し、管理の一元化を図る「業務革新」の取り組みを進めています。

もう1つ注力するのが、最も重要な経営資源である人材の活用と育成です。時代の変化に即応し、新しいものを創出していくためには、自由に意見を出し合い、ボトムアップで多様なアイデアが生み出される環境づくりを進めています。その1つとして3年前から行っているのが「新規事業アイデアスタートアッププログラム」です。初年度の応募数は800以上。社員たちの想像以上に高い意欲を感じ、うれしい驚きでした。その中から3つのアイデアに絞り、現在、事業化の準備を進めています。重視しているのは、社員の経験値とモチベーションを高め、成長を促すことです。そのほかにも、実力ある社員を抜擢したり、若手社員の海外赴任を後押しするなど、次代を担う人材の育成に力を注いでいます。

――京セラが目指す企業像を聞かせてください。

谷本 私が社長に就任した時、「売上高2兆円」を目標に定めました。中長期的には各セグメントで着実に事業拡大を進めるとともに、新規事業を大きく育てることで、現在、売上高3兆円も視野に入れています。目指すのは、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」という当社の経営理念を実現すること。社会課題の解決を通じて社会に信頼され、必要とされると同時に、従業員が誇りとやりがいを持って働ける、そんな「企業の中の企業」を目指していきます。

「攻め」の4施策で強固な経営体質を目指す
京セラは、持続的な成長に向けて設備投資や研究開発投資を増やし、「攻め」の経営に力を注ぐとともに、成長のベースとして強固な経営体質を構築するべく、経営基盤強化策を実行してきた。
その1つが、積極的なM&Aだ。M&Aを通じて、既存事業の強化と新事業の創造に取り組んでいる。とくに機械工具やドキュメントソリューションの事業分野で積極的に進め、事業領域を拡大してきた。谷本氏は、「今後、さらにM&Aの成果を収益につなげるため、PMI(M&A後の統合プロセス)を推進していく」と言う。
2つ目は、構造改革だ。「長年経営課題だった通信機器や有機パッケージの各事業において拠点統合などの施策を行い、特徴ある製品や事業に特化することで黒字化への転換を果たした」と成果を語る。2021年、組織再編による3セグメント体制への移行は、その延長線上にあった。
3つ目には製造部門において「生産性倍増」を掲げ、自動化の推進やロボットの活用、デジタル化の推進に尽力する。これにより採算改善だけでなく、社員の働き方改革にもつながっているという。
最後にガバナンス強化も実施。女性取締役の選任や社外取締役比率の向上を実現した。またROE(自己資本利益率)目標を設定して自社株買いを実施し、資本効率の向上にも取り組んでいる。こうして強固な経営基盤を支えに、新経営体制の下、さらなる成長を目指している。
 
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