就活生の会社選び「給料」よりも「WLB充実」 働きやすさを重視した企業と学生のマッチング

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近年、ワーク・ライフ・バランス(WLB)を重視する学生が増え、企業にもそれに応えられる体制が求められている。そんな中、よりよい人材を集めたい中小企業と、よりよい企業に就職したい学生のマッチングを後押しする「ユースエール認定制度」が、その価値を高めている。実際に同制度を活用して、「自分の条件をすべて満たす会社」を見つけられたという新入社員に、リアルな実情を聞いた。

中小企業と学生のギャップ

「仕事だけでなく、複数の社外サークル活動を含めたプライベートも充実させられること。それが就職先に求める条件の1つでした」

アシザワ・ファインテック
試作課 テストグループ
半澤 博基さん

そう話すのは、2021年4月に千葉県習志野市のビーズミル(微粉砕機・分散機)メーカー、アシザワ・ファインテックに就職した半澤博基さんだ。同社は従業員約150名のいわゆる中小企業でありながら、直近3年で約20名の正社員を採用する勢いのある会社でもある。

19年より働き方改革関連法が順次施行され、近年はワーク・ライフ・バランスという言葉が定着。就活生の間でも、プライベートを充実させられるような企業を志望する傾向が強まっている。ところが働き方改革に手が回らないケースも多く、中小企業というだけで「ブラック企業なのでは」と根拠のないイメージを持たれてしまうこともある。人材集めに苦労する企業が少なくないのだ。

一方就活生にとっても、ワーク・ライフ・バランスを大切にする企業をピックアップするのはなかなか難しく、中小規模の優良企業はとくに見つけにくい。半澤さんも、学生時代に参加した企業の説明会では「企業側はマイナスの部分を言わないのが当然なので、話半分で聞くようにしていました」という。そんな中小企業と学生のギャップを埋め、双方を支援するのが、厚生労働省が認定する「ユースエール認定制度」だ。

ユースエール認定制度とは、若者の雇用や育成に積極的な中小企業を認定するもので、15年に創設された比較的新しい制度だ。

認定企業は、国からの“お墨付き”を得ることで学生からの信頼を集められるうえ、ハローワークで重点的にPRできたり、認定企業限定の就職面接会などに参加できたりと、国から採用活動を後押ししてもらえる。当然、優秀な人材が集まることが期待できる。

また求職者にとっても同認定制度は、「ワーク・ライフ・バランスを重視している」「離職率が低い」「若者の育成に力を入れている」などの条件を満たす優良な中小企業を見つけるための、わかりやすい指標となる。

認定を得る条件は「新卒正社員の離職率が20%以下」「正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下」「正社員の有給休暇の年平均取得率が70%以上または年平均取得日数が10日以上」などとハードルは低くないが、すでに864社の中小企業が認定を受け(21年11月時点)、その恩恵を享受する。

すべての“条件”を満たす会社に出会えた

そんなユースエール認定制度を活用して就活を成功させたのが、冒頭で紹介した半澤さんだ。千葉県内にある大学の工学部に在籍していた半澤さんは、就活中にユースエール認定制度の存在を知り、千葉県内のユースエール認定企業を調べてアシザワ・ファインテックにたどり着いた。もともと大企業より、中小企業を志向していた。

「若いうちから現場の実務に就いて仕事を早く覚えられることと、慣れ親しんだ千葉で働き続けられることを、就職先の条件に挙げていました。だから全国転勤や下積み仕事が多そうな大企業よりは、中小企業が自分には合っていると考えたんです。それともう1つの条件が、ワーク・ライフ・バランスです。

といっても、仕事が嫌でラクしたいとか、残業は絶対にしたくないというわけではありません。くたくたになって家に帰って食事も作れずに寝て、翌日仕事に行きたくない、となるよりは、適度にプライベートも充実したほうが、仕事にもポジティブに臨めるだろうと。そんな意味合いでのワーク・ライフ・バランスです。以上の条件にすべて合致したのが、弊社だったんです」(半澤さん)

半澤さんは多趣味で、卓球部、アカペラ部という2つの社外サークルに所属し、さらにはアイドルグループの熱心なファンでもある。

「仕事は定時に終わることが多く、残業はあっても1~2時間程度です。また基本的に、有休も好きなときに取れます。したがって、予定外の仕事で私生活の予定が犠牲になることは、ほぼありません。おかげで自炊もできています。また仕事のほうでも、粉砕機のテスト業務の主担当として、早くからさまざまな経験を積ませていただいています」(半澤さん)

改めてユースエール認定制度について、半澤さんはこう話す。

「就職活動で企業の方に労働環境の話を聞いても、実態はどうなんだろうと疑ってしまうこともあります。だからこそユースエール認定という厚労省の客観的な評価が、1つの大きな基準になりました。実際に働いてみて、今回の会社選びが間違いではなかったことを実感しています」

欲しい人材をピンポイントで採用できている

では、半澤さんを採用したアシザワ・ファインテック側は、同制度をどのように受け止めているのか。同社がユースエール制度の認定を受けたのは、2016年のこと。千葉県で初の認定企業となった。同社人事総務課の宮下絢さんはこう話す。

アシザワ・ファインテック
人事総務課 課長
衛生管理者
宮下 絢さん

「制度が始まったばかりの頃に条件を見たところ、弊社はすべて満たしていたので、申請してみようかとなったんです。ただ申請はなかなか大変で、多くの書類を提出し、申請後のお問い合わせにも何度か対応しました。本当にきちんと根拠がないと認定されない、非常にまじめな制度なんだなと感じました」

同制度の認定を受けるうえで、そして認定を維持するうえで1つのハードルとなるのが、前述の所定外労働時間=残業時間(※)だ。

※「前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下かつ、月平均の法定時間外労働60時間以上の正社員が1人もいないこと」が条件
 

同社では、15個ある課が個別に3カ月単位で残業予定時間を事前申請し、その後、実際に発生した残業時間と照らし合わせ検証することで、残業時間を合理的に管理している。

「最近は社員の間にもユースエール認定制度の存在が浸透し、『認定を受けていい人材が集まるなら』と社員が主体的に残業を減らす工夫や業務改善をしたり、積極的に有休を取ったりする動きが見られます。もともと弊社では働きやすい環境づくりに早くから力を入れていましたが、ユースエールによりわかりやすい達成目標ができ、『みんなで働きやすい環境をつくっていこう』という流れが加速した形です」(宮下さん)

直近3年の新入社員の離職率も、5%程度にとどまっているという。こうした現状を受け、宮下さんはユースエール認定制度を、こう捉えている。

「人事担当として近年感じるのが、『給料うんぬんよりも、仕事以外の大切なこともきちんと実現できる会社で働きたい』という学生さんが増えていることです。ユースエール認定制度とは、そうした学生と、それが実現可能な企業とをマッチングする制度です。おかげで弊社も近年は機械工学系の方とか、中国語が堪能な方など、欲しい人材をピンポイントで採用できています」(宮下さん)

学生は、普通には見つけにくい優良な中小企業を見つけられる。企業側は、国が会社のPRを後押しすることも手伝って、自社にマッチした優秀な人材を集められる。知名度や事業規模以外の価値を会社に求める学生がますます増えるであろう今後、ユースエール認定制度の価値も、一層高まっていきそうだ。

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