ロッテ「カカオへの愛情」とものづくりの神髄 7年越しの新商品発売、裏には強いこだわりが

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1月13日、ロッテが新商品「DO Cacao chocolate」を発売した。ロッテといえば、50年以上前からチョコレートの可能性と向き合い続けてきた誰もが知る老舗メーカーだ。新商品の誕生には、そんな同社が培ってきた「ものづくりの本質」にかける想いとともに、カカオへの深い愛情とこだわりがある。「DO Cacao chocolate」の開発担当者である五十嵐拓磨氏に、ロッテならではの「ものづくりへの想い」を聞いた。

ものづくりの源流にさかのぼった、異例のチャレンジ

美しい水彩画が描かれた包装の封を開けると、芳醇な香りがふわりと広がった。中に入っていたのはシンプルな外観の中箱だ。そっと開くと、極彩色のパプアニューギニアをイメージした背景に、カカオの実の形をしたチョコレートが現れた。宝石の原石のようなその一粒を口に入れると、深い香りとともに、甘味と苦味、酸味が調和しながら口いっぱいに広がった。

これは、ロッテが1月13日に発売した新商品「DO Cacao chocolate」だ。甘すぎず、奥行きのある風味の秘密。それは、「ロッテがカカオの可能性を追い求める中で見つけた一つの理想形」というカカオ豆の風味を、そのまま生かした点にある。それもそのはず、これはロッテが苗から育てることに携わったカカオ豆なのだ。

カカオは、苗が順調に育ち、実がなるまで時間がかかるうえ、質量ともに安定的に確保するのが難しい。そのため、チョコレートメーカーはカカオ豆の状態で仕入れて、商品を製造することが多い。ロッテのように、大手メーカーが一から土地を選定し、苗を植えるところからカカオに携わるのは異例で、ハードルも高い。

では、ロッテはなぜこの難題に挑んだのか。「DO Cacao chocolate」の開発担当者・五十嵐拓磨氏は、プロジェクト発足当初を振り返ってこう話す。

ロッテ 中央研究所チョコ・ビス研究部 チョコレート研究課 主査
五十嵐 拓磨

「もともと当社では、カカオ豆からチョコレートを作ってきました。しかし、カカオ豆が日本に輸入される前段階にも、味に関わる工程はたくさんあります。そこで、最高のチョコレートを作るためにはさらに源流にまでさかのぼる必要があるのではないか、という考えに至りました。それが、このプロジェクトの始まりでした」

ロッテはこれまでも、数々のヒット商品を作ってきた実績とノウハウがある。だからこそ、「カカオ豆を一から育てて発酵や焙煎まで研究する」という発想が生まれ、また実現に至ったのだ。

パプアニューギニア現地で過ごした、試行錯誤の日々

2015年にこのプロジェクトが発足した際、ロッテがまず行ったのは農園候補地の選定だった。

「ロッテでは、以前から様々な主要産地への訪問を重ねていましたが、プロジェクトのスタートをきっかけに新たな産地へも目を向け、たどり着いたのがパプアニューギニアでした。パプアニューギニアは、カカオの主要産地というわけではありません。しかし、現地のカカオ豆を生の状態で食べた時、苦味の奥にフルーティーな風味を感じ、『こんなにポテンシャルの高いカカオ豆を使えば、面白いものができるのでは』と感じました。また、パプアニューギニアは日本との時差が1時間ほどと少ないため、日本と連携しながら研究するには最適でした」と五十嵐氏は振り返る。

しかしこのプロジェクトでは、現地の農園に管理を依頼しながらも、すべてを任せることはしていない。五十嵐氏は現地に長期滞在し、栽培にも携わった。

「パプアニューギニアは熱帯気候で植物の生育が旺盛な土地ですが、当初はカカオがなかなかうまく育たず、苦労しました。最初の1〜2年は土壌改良をはじめ、ひたすら試行錯誤を重ねる毎日。順調に育ち始めたのは2018年頃でしょうか。諦めずに続けて本当によかったと思いました」

カカオの栽培以外に発酵方法を模索する中でも、壁に直面した。

「例えばガーナなら1週間ほどでできたはずの発酵が、パプアニューギニアではなぜかうまくいかず、まるで納豆のような匂いになってしまったこともありました。研究論文のとおりにはいかないのだと、身に染みて感じましたね。それでも、めげずにいろいろなアプローチを試したことで、当社独自のノウハウを得ることができました」

華やかなパッケージに込められた、ある想い

発酵工程1つに対しても、数百もの実験を積み重ねる毎日。それは、これまで数多くのものづくりに携わってきた五十嵐氏にとって、このうえなくワクワクする挑戦の日々だったという。それを支えたのはほかでもない、パプアニューギニア現地の人々だ。

「実験していると、現地の方々が手伝ってくれたり、実験用の道具を作ってくれたりと、パプアニューギニアの方々の真面目で朗らかな人柄に助けていただきました。今回『DO Cacao chocolate』のパッケージの内側には、現地の植物や動物のイラストを描きました。ぜひ、お客様にもそんなパプアニューギニアの空気を感じながらチョコレートを味わってほしいと思います」

そして、育て上げたカカオ豆から商品を作り出す過程では、改めてものづくりの本質に向き合ったという。

「カカオ豆をチョコレートとして商品化するまでには、さまざまなプロセスがあります。例えば『DO Cacao chocolate』は、カカオの実をモチーフとした形をしています。この形に至るまでには『なぜこの形か?』『食べやすい大きさは?』『どう食べてほしいのか?』など、さまざまな問いを投げかけられました。当社はいつも『最上の品質を追求し続ける』という想いでものづくりをしていますが、その姿勢が端的に表れた製作工程でした。カカオ豆の栽培から発酵、パッケージに至るまでこだわった『DO Cacao chocolate』には、私たち開発者の想いが詰まっています」

細部にまでこだわって、よりよいものを作る。「DO Cacao chocolate」には、ロッテのものづくりの神髄が詰まっているといえるだろう。

「カカオのポテンシャルを最大化する」外部との共創

カカオが持つ高いポテンシャルに着目し、新しい価値を生み出す「DO Cacao Project」を推進しているロッテ。その領域は上述の「DO Cacao chocolate」だけでなく、外部パートナーとの共創にも広がっている。何より特徴的なのは、カカオ豆を発酵・乾燥させた後に取り除く皮(ハスク)のアップサイクルに挑戦していることだ。

 外部パートナーとの共創により生まれたアルコール飲料(左)とネクタイ(右)
外部パートナーとの共創により生まれたアルコール飲料(上)とネクタイ(下)

ロッテは以前から「カカオハスクを、お客様の生活に寄り添う何かに生まれ変わらせることはできないか」と考えていたという。ある時、取引先企業から「カカオを使ったボタニカルダイという染色方法がある」と情報提供を受けたことがきっかけとなり、染料にカカオハスクを使ったネクタイ「CACAO TIE」が誕生した。

さらに、カカオハスクを使用したアルコール飲料「CACAO & HOP」も商品化に成功した。カカオ豆そのものは油脂を多く含んでいるため、アルコールと組み合わせることは難しい。しかし、カカオハスクならカカオの香りをしっかり持っているうえに油脂が少なく、適しているのだという。

「カカオハスクに限らず、今後はカカオポッド(殻の部分)や、実がつかなくなった木などの活用も外部パートナーとともに柔軟に取り組んでいきたいですね。カカオのポテンシャルを最大限に引き出す技術、当社ならではのものづくりを通して、これからも全国のお客様にチョコレートを食べる幸せと楽しさを届けていきたいです」

カカオの可能性を最大化することに挑戦している、「DO Cacao Project」。ここから生まれたチョコレートは、ロッテのものづくりの本質と、開発担当者の熱い想いが結晶した極上の一粒だった。

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