コロナ禍の注目家電「23年前に誕生」の深い理由 「空気の本質」を追求し続ける、空調専業の使命

コロナ禍で注目の家電といえば、「換気ができるエアコン」だ。人々の換気意識が高まったことで、一気に脚光を浴びた。しかし実は、換気機能付きのエアコンはコロナ禍よりずっと昔、1990年代から存在していた。発売元は、空調専業メーカーのダイキン。同社は99年、加湿と換気を同時に行うルームエアコン「うるるとさらら」を開発。それから23年間、ダイキンはずっと、エアコンに換気機能を搭載し続けてきた。その背景にあるのは「空調専業メーカーだからこそ、空気を通じた本質的な価値を提供したい」という、確固たる思いだ。

空気で「本質的な価値提供をするため」換気機能に挑戦

なぜダイキンは1999年、当時他社が手を出していなかった「換気機能」付きのエアコンを発売するに至ったのか。

「当社は、消費者にとって心地いい空間をつくろうとしているからです。そのことをとことん突き詰めて考えたところ、自然に『換気と加湿』の機能が必要だったんです」。そう話すのは、長年にわたりルームエアコンの設計・開発に携わり、現在はルームエアコンの国内生産拠点の滋賀製作所長を務める羽東公一(はとう・きみかず)執行役員だ。

ダイキン工業 執行役員
羽東 公一(はとう・きみかず)

「設定温度に達しさえすれば、快適な空間が出来上がるわけではありません。室内を快適な空気環境に整えるには、『温度』『湿度』『清浄度』『気流』から成る、『空調の4要素』の調整が必要です。われわれは空気の本質的な価値を提供するためには4つのすべてを満たさなければならないと考え、技術開発に取り組んできました。

空気質は、健康で快適な生活を支えるために欠かせないものです。だから、エアコンを使って外の新鮮な空気を取り込む換気機能が必要だと考えました。エアコンを通して外の新鮮な空気を室内に送り込むことができれば、室内の空気がきれいになり、清浄度を高められます。

また、つい窓開けを躊躇してしまう冬場に、エアコンでの『換気』に加えて『加湿』までできれば、これこそ空気の本質的な価値を提供することになると考えました」

空気は、誰もが毎日大量に体に取り入れる物質だ。空気の質の良しあしが心身の健康をも左右することは、想像にかたくないだろう。

「一般的なエアコンのユーザーから、『朝起きると、何となく頭が重い』という声が寄せられたことがありました。調べてみると、寝室のCO2濃度がとても高い値を示していました。睡眠時にも新鮮な外の空気を部屋に送り届けられる換気機能は、健康で快適な生活を支えるもの。とくに最近は高気密・高断熱の住宅が増えています。窓を閉めていてもルームエアコンで換気ができたら、便利だしうれしいですよね」

90年代、他社に引けを取っていたダイキンだったが…

ダイキンはこれまで、数々の日本初・世界初の機能を搭載した製品を世に送り出してきた。空調専業メーカーとして、今では同社の名前は世界中に広く知られている。

しかし1990年代にさかのぼると、少し事情が違う。当時ダイキンは業務用エアコンでは高いシェアと知名度を誇っていたものの、ルームエアコン領域ではシェアが低く、あまり存在感を発揮できていなかった。さらに90年代後半になると、市場では空気清浄機能付きのルームエアコンがトレンドに。ダイキンもこのタイミングで量販ルートに進出したが、他社のキャッチーな機能やデザイン性に押され、売り上げは伸び悩んでいた。

1999年誕生当時の、ルームエアコン「うるるとさらら」

だが、ダイキンはそうした市場のはやりやトレンドに振り回されることなく、いい空気づくりに欠かせない「換気と加湿」にフォーカスしてルームエアコンの開発を推進。そして1999年、ついに換気と加湿を同時に行うルームエアコン「うるるとさらら」が誕生した。

もちろん、他社の動向や消費者ニーズを起点として商品を開発するという戦略も考えられたはずだ。しかし、技術者でもある羽東氏の使命感の源泉は、短期的な売り上げや目先のトレンドよりも「空気の本質」を追求し、心地いい空間をつくることにある。空調専業メーカーとして見据えた目標を、愚直に追い求めた結果が、「うるるとさらら」の誕生だったというわけだ。

換気機能は、「無給水加湿」とセットで開発された

換気機能は加湿機能とセットで開発された。ユーザーの利便性を考え、給水せずに屋外の空気から水分を取り込んで加湿に利用する「無給水加湿」が実現したからこそ、新鮮な外の空気を部屋の中に送り込めるようになったのだ。

「単に給水して加湿するだけなら、タンクにためた水を使って室内機から吹き出される風を加湿すればいいので、技術的には簡単です。しかし、安定的に加湿するためには、室内機のサイズアップが避けられませんし、水を入れ替えるにも手間がかかります。そこで、いい方法がないかと社内の技術者が議論を重ねたところ、除湿機に使われていた部品を応用し、空気中の水分を取り出せることを発見。この方法なら無給水で加湿できると目をつけて、難易度の高い機能開発にチャレンジしました」

外気から取り出した水分は、ホースを通して新鮮な外の空気とともに室内機に運ぶ仕組みにした。開発の過程では、ホースの内部で結露が発生してしまうなど数々の課題が生じたが、1つずつ解決。こうして、換気と加湿を両立したルームエアコンを世の中に送り届けることができたのだ。

「空気の本質」への思いが、ダイキンの今をつくっている

かくして出来上がった「うるるとさらら」。「換気」と「無給水加湿」の機能を搭載した新しいルームエアコンとして注目を浴びたが、発売後すぐに消費者に受け入れられたわけではなかった。羽東氏はその要因について「ユーザーに、商品の価値を伝えきれていなかったこと。製品そのものが玄人好みで、ユーザーにわかりやすく価値を伝えられていなかったこと」と振り返る。

しかしダイキンは、どんなに時代や市場が変化しても、エアコンを通じて空気の本質的な価値を提供していくのだというぶれない姿勢を貫き、製品の改良を重ねた。すると2003年以降、徐々に量販ルートでも認知されるようになり、ルームエアコン領域のシェアが大幅に拡大。そして、換気への関心が高まったコロナ禍。ダイキンが20年以上積み重ねてきた技術が、改めて脚光を浴びることになった。

「換気ニーズの高まりを受けて、ルームエアコンの換気機能搭載機を新たに開発、ラインナップを拡充しました。短期間で商品をそろえることができたのは、長年にわたり換気の技術に取り組んできた成果の1つだと思います。

空気を通じて、消費者に提供すべき『本質的な価値』とは何なのか。そこから目をそらさず、こだわり続けて開発した技術は、必ず評価してもらえます。逆にそこが空虚になっていたら、お客様にはすぐ見破られてしまう。空気の本質にこだわり抜き、それを満たす技術の開発に一貫して取り組み続けてきたことが、ダイキンの今につながっていると思いますね。

コロナ禍で「換気」の重要性が顕在化したことで、他社もようやく換気機能に注目するようになり、『換気できるエアコン』が市場に多く出てきました。空間を快適に保つために不可欠な『換気』機能が付いた商品が増えれば、消費者の選択肢が広がるうえにメーカー同士の切磋琢磨にもつながりますので、結果的に社会のためになると思います」

羽東氏が製品開発で大切にしているのは、「お客様の期待を超える商品になっているか?」という視点。そこには、空調専業メーカーとして空気の本質的な価値を提供したいという使命感と、空調では他社に負けられないという危機感が表れている。

「時代の変化は激しいですから、先のことはなかなか読めません。だからこそ、一つひとつの技術開発の先にどういう世界が広がるか、みんなで議論しなければいけない。23年前に換気機能付きのエアコンを世に送り出したように、一時の流行やキャッチーさに目を奪われるのではなく、つねに空気の本質的な価値の提供を見据えて開発に当たっていきたいですね」

メーカーは、自社が消費者に与えられる本質的な価値について、商品を通して伝え続けなくてはならない。ダイキンは、絶対に譲れないこと、守るべきことを見失わなかったからこそ、多くの消費者の支持を得ることができたのだろう。

>換気できるエアコンで、お家を快適に。換気のことならダイキン

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