再生可能エネルギーと水素利用を加速させる挑戦 日本発のカーボンニュートラルが世界を変える

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温室効果ガス排出量の削減が喫緊の課題になっている。目標の達成に向けて、再生可能エネルギーと水素を軸に挑戦を進めているのが電源開発(以下、Jパワー)だ。取り組みについて、タレント・コメンテーターのパックンと、Jパワーの菅野等取締役常務執行役員が話し合った。

事業を通して社会課題を解決するJパワー

2021年10月31日から約2週間、英スコットランドのグラスゴーで、国連の第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が開かれた。

エネルギーや環境問題に関してテレビ番組などでコメンテーターを務めるパトリック・ハーラン氏(以下、パックン)は次のように語る。

お笑いコンビ「パックンマックン」 東京工業大学非常勤講師
パトリック・ハーラン

「地球人の1人として、地球の先行きは気になります。今回のCOPでも日本を含む多くの国・地域の首脳が演説し、温暖化ガスの削減の取り組みを訴えました。ただ、具体策をどうするのかという懸念もあります。画餅に終わらせてはいけません」。

パリ協定では、気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑える目標を掲げている。また国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、目標達成には50年に実質炭素排出ゼロとなる必要があるとしている。実行は可能なのだろうか。Jパワー取締役常務執行役員の菅野等氏は次のように答える。

J-POWER(電源開発)
取締役常務執行役員
菅野 等

「実現は可能だと思います。ただし、課題はエネルギー供給コストが上がる要因が多いことです。例えば再生可能エネルギー(以下、再エネ)は天候や時間帯で変動する出力を調整する仕組みが必要です。CO2を出さずに水素を作るにも一手間も二手間もかかります。その負担をなるべく抑制するのが私たちの役割だと考えています」

Jパワーはこれまでも、時代ごとのさまざまなエネルギーに関する課題解決に事業を通じて貢献してきた。同社は1952年に成立した「電源開発促進法」に基づき、戦後の電力不足解消を目的に発足した。中でも、大規模水力発電の開発を進め、国内設備出力シェアは2位となっている。2000年代初頭から気候変動問題にもいち早く着手しており、風力発電では大規模なウィンドファーム開発に20年以上前から取り組む。現在、英国での洋上風力の大型プロジェクトや、米国や豪州での太陽光開発に携わるなど、グローバルに再エネ拡大を進めている。

原油やLNGの輸入は地政学リスクも高い

パックンは、カーボンニュートラルに向けた道のりについて、次のように問題を指摘する。「僕が懸念しているのは、日本のエネルギー自給率が11%前後と、OECD(経済協力開発機構)諸国と比較して、とても低いことです。さらに輸入される原油やLNG(液化天然ガス)の多くはホルムズ海峡を通過するため地政学リスクもあります」。

菅野氏は「おっしゃるとおり、CO2削減とエネルギーセキュリティー確保の両立は不可欠です」と話す。エネルギーの安定供給を続けながらどのようにCO2削減を進めるのだろうか。「当社では21年2月に、経営戦略『J-POWER "BLUE MISSION 2050"』を発表しました。50年に国内事業からのCO2排出実質ゼロを目指し、取り組みを加速させています」と菅野氏は紹介する。ロードマップや具体的なアクションプランについては、「再エネなどCO2フリー電源拡大、CO2フリー水素と電源のゼロエミッション化、電力ネットワークの安定と増強、の3つの柱を掲げています」と言う。

参画するトライトン・ノール洋上風力発電所(英国)

パックンは「再エネだけでエネルギー自給率を100%にするのは夢物語でしょうか」と問いかける。それに対して菅野氏は「たしかに純国産エネルギーである再エネは自給率向上に寄与します。再エネを国内で最大限に活用しつつ、再エネ拡大の課題である安定供給面をほかの電源で支えながら、カーボンニュートラルへ移行していきます」と語る。

実際に、Jパワーは国内外で再エネ拡大を進めながら、CO2フリー水素の製造・利用・供給の実現に向けて取り組んでいる。「再エネ電力を用いた水素製造と並ぶ技術として当社が注力するのが、石炭を原料とした水素製造です。地政学リスクの低い石炭をCO2を出さずに水素として利用することで、カーボンニュートラル社会における電力需要を支えていきます」と菅野氏は紹介する。

水素社会の実現に向け実証などを進める

水素は利用時にCO2を出さず、幅広い分野のCO2削減への貢献が期待される。Jパワーでは長年の研究開発で確立した技術を用いて、石炭から製造過程でCO2を出さずに水素の製造を目指すという。パックンは「石炭を使ってCO2排出ゼロの水素を作ることなどできるのですか」と素朴な疑問を投げかける。

それに対して菅野氏は「当社では、石炭を蒸し焼きにして生じる水素(H2)と一酸化炭素(CO)から成るガスを水蒸気(H2O)と反応させ、そこからCO2を取り除くことでCO2フリーの水素を作ります」と話す。

すでに、広島県・大崎上島では水素製造と発電利用の実証が進むほか、長崎県の松島火力発電所では、その成果を商用化すべく準備段階に入っているという。CO2を分離・回収して地中に埋める技術(CCS)や、その一部を有効利用する技術(CCU)も研究を進めており、これらの技術と組み合わせ、CO2フリー水素となるのだ。

オーストラリアの褐炭ガス化・水素製造設備
HySTRA、J-POWER、J-POWER Latrobe Valley

「さらに、オーストラリアでは未利用の褐炭から水素を作り、航路で日本へ輸送するというプロジェクトに参画しています。実際に、今年1月から水素製造を始めています」と菅野氏は言う。まさに、多国間の水素サプライチェーンが構築されるわけだ。

パックンは「石炭由来でありながらCO2排出をゼロ化するというのは革新的です。新たな発見がありました」と感想を述べた。

菅野氏は「CO2フリー水素の普及が進むことにより、水素社会の実現が近づくと自負しています。エネルギーの安定供給と気候変動対応の両立はさまざまな社会課題解決の基盤となるものであり、当社の大きな使命です。水素に限らず、あらゆる可能性に目を向け、カーボンニュートラル実現に向けた挑戦を続けていきます」と結んだ。