「Internet Explorer」四半世紀の歴史に幕、対策は 業務アプリの停止で甚大な損害を生むおそれも

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インターネットといえば、このアイコンを思い浮かべる人も多いだろう
インターネットを牽引してきたブラウザー「Internet Explorer」(インターネットエクスプローラー)が、2022年6月15日にサポート終了、起動できなくなる。IEを利用した業務用Webアプリケーションも動かなくなるというが、企業はどのような対応を取るべきか。インターネット初期からの四半世紀にわたる歴史に幕を閉じることとなった経緯も含め、日本マイクロソフトの担当者に話を聞いた。

世界のイノベーションに貢献すべく、終了

――インターネット初期から全盛期を支えた「Internet Explorer」(以下、IE)のサポートが終了すると聞きました。

春日井 この20年くらいを振り返ると、インターネットを利用するデバイスや技術が多様化し、Webの標準化が進んだことが最も大きな変化であると思います。ひところ、HTML5が盛り上がったのがその一例ですね。

日本マイクロソフト
モダンワーク&セキュリティビジネス本部
モダンワークビジネス部
エグゼクティブ プロダクト マーケティング マネージャー
春日井 良隆 氏

IEというブラウザーは、インターネットが普及するきっかけとなった「Windows 95」の頃に生まれたブラウザーです。2000年前半にはMac版の開発を終了し、以来、Windows専用のブラウザーとして今に至ります。ブラウザーは、レンダリングエンジンという、文字どおりWebページを構成するHTMLなどのコードを読み解き、人に見える形へ変換するエンジンを搭載していますが、IEのエンジンであるTridentは、最新のWeb技術についていけなくなったことが否めませんでした。

そこで、2015年にWindows 10とともに登場したMicrosoft Edge(以下、Edge)ではエンジンを開発し直し、その後、オープンソースであるChromiumを採用しました。

現在、多くのユーザーはスマートフォンでWebにアクセスしますが、そのスマートフォンのOSはWindowsではなく、また、ブラウザーもIEではありません。IoTもどんどん普及しています。Chromiumを採用することで、Interoperabilityと呼ばれる相互運用性を目指したのです。

――率直な質問ですが、IEを進化させるという選択肢はなかったんですか?

春日井 25年前の車をどれだけチューンナップしても、最新モデルよりも、速く、安全には走れません。現代のWeb標準技術に対応し、セキュアなブラウジング環境をユーザーに届けるために、一からコア部分や構成要素を見直し、作り直しました。それがEdgeです。

Webアプリやサービスの開発者は、レンダリングエンジンごとに動作検証をし、デバッグをしなければなりませんが、そうした手間を省ける環境になったことは、Webのイノベーションの加速にも貢献できているのではないかと考えています。

IEでないと動作しないアプリは多い

――IEのサポートが終了することで、ユーザーはどのような対応をしなければならないのでしょうか。

日本マイクロソフト
Microsoft 365製品チーム
プログラム マネージャー
草場 康司 氏

草場 今回のサポート終了のポイントは2つです。1つ目は、IEから別のブラウザーに切り替えていただく必要があるということ。とくにWebサービスを提供している事業者様には、社内ブラウザーの切り替えはもちろん、提供サービス利用時のブラウザーからIEを外し、クライアントに対してブラウザーの切り替えを呼びかけていただく必要があります。

2つ目に、EdgeではIEを呼び出す「IEモード」をご利用いただけるということ。まだまだ多くの会社で、IEでしか動作しないサイトやアプリが使われていますが、IEモードであればそのまま継続してご利用いただけます。なお、EdgeのIEモードはWindows版のEdgeでしか動作しませんのでご注意ください。

Windows版のEdgeでは、引き続きIEそのものが使用できる

――具体的にIEモードを利用する場合、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。

草場 企業の場合は、情報システム部門のご担当者に、どのサイトやアプリをIEモードで開くのか記載した「サイトリスト」をご用意いただく。あるいは、従業員の方々が能動的にEdge内でIEモードを起動する必要があります。いずれにしても、IEでしか動作しないサイトやアプリの洗い出しが必要です。組織の大きさによっては、1~2カ月かかる可能性もありますので、早めの着手をお願いしています。

IEでしか動作しないサイトをリストに登録する

――IEでしか動作しないサイトやアプリを使っていることを、企業側で把握しきれていないケースはありますか?

草場 例えば、情報システム部門は事の重大さを把握していても、ほかの部門の管轄下にあるクローズドなサイトやアプリまでは把握しきれていないケースがあります。また、長年当たり前のように使っているため、見落とすおそれが高いサイトやアプリも多いのではないかと思います。

春日井 イントラネットで動いている社内の経費精算システムや勤怠アプリは要注意です。飲食店や小売店の発注システム、インターネットバンキング、自治体の電子入札システムのように日常的なサービスで利用しているものが突然止まってしまうと甚大な損害に発展しかねません。少しでも早く状況を把握し、準備を進めていただきたいと考えています。

速く、セキュアで多機能なブラウザー「Edge」

――少なくとも、IEでしか動かないサイトやアプリはEdgeのIEモードでしか使えなくなるわけですが、Edgeの特徴を教えてください。

春日井Edgeの開発でとにかくこだわったのは「速さ」と「セキュア」の2点です。サクサク動き、ウイルスやマルウェアを全面的に防ぐことを基本仕様としています。フィッシングページをうっかり踏んでしまったり、マルウェアをダウンロードしたりするとすぐに検知して警告してくれるので、リスクを最小限に抑えることができます。

草場 利便性に配慮したアドオンの機能もあります。例えばWebページの広告を除いて表示し、音声でテキスト部分を読み上げる「イマーシブリーダー」という機能。音声読み上げ機能は英語にも対応しているのですが、米国英語やインド英語など細かく選べます。発音がネイティブに忠実で、読み上げスピードも変えられるので、英語の学習にも最適です。読み上げ以外にも品詞の色分けができるため、動詞や形容詞の勉強もできます。

イマーシブリーダーの機能で、テキストサイズや文字間隔等も調整できる

指定エリアだけ、もしくはページ全体が簡単にキャプチャーできるWebキャプチャ機能や、興味のあるWebページを「お気に入り」のように保存できる「コレクション」の機能もお勧めです。

春日井 あとは省電力の機能として、「スリーピングタブ」や「効率モード(Efficiency mode)」があります。「スリーピングタブ」は表示しないまま一定時間が経過したタブをスリープ状態にして、メモリやCPUの使用率を向上させるものです。電力消費量を抑えられますので、脱炭素効果もあります。「効率モード」は、デバイスのバッテリー残量が少なくなるとCPUなどの消費を大幅に抑える機能です。

IEからの移行支援などサポート体制は万全

――Edgeが非常に多機能で、しかもIEのサポート終了後にも役立つIEモードを搭載しているため、有用性が高いことがよくわかりました。

草場IEモードに関しては、どのように対応を進めていけばよいかをまとめたスタートガイドもご用意していますので、ぜひ参考にしてください。また、法人のお客様向けの支援プログラム「FastTrack」の中の「App Assure」では IEベースのWebアプリの互換性問題の解決のための支援を提供しています。不安なことがありましたらお気軽にお問い合わせください。

春日井 最後に、IEをこれまでご愛顧いただいた皆様に、改めて深く感謝いたします。IEは皆様とともにインターネットの一時代を築いてきましたが、2021年という今の状況においては、役割を全うしたと言わざるを得ません。先ほど、Edgeで相互運用性の話をしましたが、もう一つ目指したのがCompatibility、互換性です。Chromiumで相互運用性を、IEモードで過去との互換性を保っているのがEdgeというブラウザーです。Webの世界を未来へと進めていくためにも、皆様にはWebの過去と未来をつなぐ役割を果たすEdgeをご利用いただければと考えています。