勝負にこだわる人が「免疫機能」重視する納得理由 「乳酸菌B240」で病原体を防ぐ粘膜免疫を強化

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激しいトレーニングで自分を追い込み、より高い記録や自身のレベルアップに挑戦するアスリートは、負荷の大きさゆえに免疫機能が低下しやすい。しかし近年の研究の進展により、トレーニングで低下した免疫機能の回復や維持、向上に有効な対策が明らかになり、コンディショニングに取り入れられるようになってきた。
体調管理が重要なビジネススキルの1つといえる昨今。最新の知見やアスリートの取り組みを基に、一般の人々が日常生活で役立てられる知恵を探った。

アスリートの感染症対策は以前から重要視されていた

過酷なトレーニングに明け暮れるアスリートのイメージはもはや昔の話。現在は休養の重要性が広く浸透し、「休むことも練習の一環」と考えられている。

さらに最近では免疫機能の維持、向上が注目され始めた。免疫とは文字どおり、疫(疾患、病気)を免れるための機能である。日本スポーツ振興センター・ハイパフォーマンススポーツセンターの清水和弘先任研究員は次のように解説する。

日本スポーツ振興センター
ハイパフォーマンススポーツセンター
清水和弘 先任研究員

「トップアスリートでも激しいトレーニングを長時間行うと、免疫機能は低下することがわかっています。ボクシングやレスリングなど体重階級制の競技で行われる減量や女性アスリートの無月経、大会出場のための長距離移動といったアスリートに付きものの要因も免疫機能に影響すると、この10~20年くらいの研究で明らかになってきました。そうした研究成果が徐々にアスリートたちへ届き始め、強化活動に取り入れられるようになってきたのです。さらにこの傾向を強めるきっかけになったのが、新型コロナウイルスでした」

もともと冬季スポーツの選手や世界を転戦するトップアスリートにとって、感染症対策は重要視されてきた。激しいトレーニングで免疫機能が低下しやすいアスリートがこれを維持、向上させて感染症を防ぐことは、日々の練習を継続しベストコンディションで本番に臨むために不可欠である。

コンディション維持のポイントは「粘膜免疫」

最近よく聞くようになった免疫機能とは、病気を防ぐ機能という意味合いが強い。より具体的にはウイルスや細菌といった非自己なものが体の中に入ってこようとしたとき、その侵入を防ぎ、侵入してしまったら撃退する機能である。

「免疫には2つの段階があり、1つは『粘膜免疫』です。これは目や鼻、口、気道、小腸など外界と接する部分の粘膜で働いている免疫機能で、粘膜中に存在している抗体や免疫物質が外界から入ってくる病原体を防ぐ役割を果たします。例えば母乳にも含まれる『分泌型IgA』という物質は、病原体にくっついて粘膜より体の奥に入らないようにしたり、細菌の毒素を中和したりして感染を防ぎます。もう1つは『全身免疫』で、分泌型IgAなどの抗体の分泌調整や、粘膜を通過して入ってきた病原体が細胞に感染し増殖する過程において発熱や炎症を起こし、病原体を退治する役割があります」

粘膜免疫を破られて感染を許してしまうと、全身免疫が働いて発熱や炎症が発生する。これにより体調悪化の状態になってしまう。

したがってアスリートが体調悪化を防ぎ、良好なコンディションをキープして大会や日々の継続的な練習に取り組むには、発熱や炎症が起こる前の段階、すなわち病原体を体に侵入させない粘膜免疫を高めることが重要である。

粘膜免疫で働く分泌型IgAを増加させる「乳酸菌B240」

アスリートは激しいトレーニングで低下した粘膜免疫を高めるために、マッサージや鍼(はり)治療といった物理療法を行ったり、免疫機能を良好に保つために意識的に食事で必要な栄養素を重点的に摂取したりしている。とくに重要なのはレバーやのり、ウナギ等に含まれるビタミンAと、キクラゲやイワシ、鮭等に含まれるビタミンD、そして乳酸菌の3つで、これらを取り続けることが大切である。

ただ、一口に乳酸菌といってもいろいろな種類がある。その中で粘膜免疫に含まれる分泌型IgAを増加させる効果が高いと報告されているのは、Lactobacillus pentosus ONRICb0240(以下、乳酸菌B240)という乳酸菌だ。これは東南アジアのミヤンという発酵茶から抽出されたもので、乳酸菌B240を1カ月間継続して摂取すると唾液中の分泌型IgAを高い水準で維持できることがわかっている。また、乳酸菌B240を摂取し続けている人は摂取していない人に比べ、その間の風邪の罹患率が低下することも明らかにされている 。(出典:Br J Nutr.2013;109:1856-65より)

こうした免疫機能の維持向上、あるいは低下した免疫機能の回復に関する知見やアスリートの取り組みは当然、忙しい毎日を送る一般の人々が良好なコンディションをキープし、快適な日々を過ごすうえで大いに参考になるだろう。

「免疫機能が大幅に低下すると病原体に感染するリスクが高まります。そのサインとなるのはまず、朝起きていつも以上に疲れを感じ、だるさが抜けていないときです。夜なかなか寝付けない、いつもより寝起きが悪いという睡眠に関する問題も、免疫機能の低下に関連しています。また、口の中が普段より渇いている状態は、粘膜の防衛機能が低下しています。このような体の変調を自覚したら、対策を考えるとよいでしょう」

免疫機能の維持は、日々のケアから

一般の人々が日常生活の中で免疫機能を維持、向上させるには、適度な運動がよい。運動といっても激しいスポーツではなく、まずは毎日の歩行量を少しでも増やしていく。できるだけ速く歩くのもよいし、もう少し負荷を高めても大丈夫な人ならジョギングや自転車、ウェートトレーニングもお勧めだ。

「適度」の目安は最大心拍数の50%程度で、ジョギングならおしゃべりをしながら走ると息が切れるくらいの強度である。

一方、免疫機能を回復させるには休息が非常に大切である。毎日十分な睡眠を取り、仕事が休みの日はしっかり休む。入浴はシャワーだけで済ませずバスタブに入って体を温め、心身共にリラックスさせるとよい。

「体の働きを調整する自律神経である交感神経、副交感神経は、免疫機能と密接な関係があり、単純化して言うと交感神経が優位に働くと免疫機能が下がり、副交感神経が優位に働くと免疫機能が高まります。ですから気持ちよいと感じる音楽をかけたりアロマをたいたり、あるいはヨガでも何でもよいので、自分がリラックスできることをやると、副交感神経が優位に働いて免疫機能の向上につながります」

運動はもちろん、休息やリラックスも決して軽視してはいけない。日常生活のちょっとした心がけで、免疫機能は高めることもできる。体調万全な状態で最大限のパフォーマンスを発揮するためにも、免疫機能を意識することから始めてみてはいかがだろうか。