知られざる“BtoB決済キャッシュレス化”の利点 「解約率が1/3に」BtoBクレカ導入の意外な効果

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近年、BtoC決済におけるキャッシュレス化は大きく進んでいるが、BtoB決済においてはあまり進んでいない印象がある。ところが、実は「BtoB決済のキャッシュレス化」には、意外なメリットがあることをご存じだろうか。丸紅新電力は、2019年以降顧客からの支払いをクレジットカードで受け付けて新規顧客を拡大した、いわば成功例だ。いったいなぜ――キャッシュレス化の意外な効果に迫った。

クレジットカード会社からの紹介を機に、2年間で100件超契約

コロナ禍の非接触ニーズも後押しし、キャッシュレス決済はここ数年で大きく進んだ。ただ、それは消費者が会計を行うBtoC決済での話。法人間取引については今なお銀行振込と口座振替が主流で、クレジットカードなどによるキャッシュレス化は正直進んでいない。

こうした状況で、BtoB決済に利用する法人向けクレジットカード、「ビジネス・カード」を導入したことで、業績を伸ばしている会社がある。それが、電力小売事業を手がける丸紅新電力だ。ここでは、背景にあるビジネス・カードならではのユニークな仕組みを取り上げよう。

丸紅新電力は、2019年にアメリカン・エキスプレスのBtoB決済を導入した。同社は法人や個人に向けた電力販売を主幹事業としているが、法人からの売り上げが全体の約7割を占めている。同社法人営業部課長・石橋氏と、主任・髙垣氏はこう話す。

丸紅新電力 法人営業部 課長
石橋 卓也 氏

「当社がアメリカン・エキスプレスの加盟企業となったのは、2019年のことです。当時は、法人顧客のクレジットカード決済を受け付けている電力会社はほとんどありませんでしたが、お客様の中に『カードで決済したい』というニーズがあるのではと仮説をたて、こちらからアメックスに相談を持ちかけました」(石橋氏)

顧客からのニーズの高まりを感じていたという同社。数あるクレジットカード会社の中から、なぜアメックスに声をかけたのだろうか。

「1つには、当時アメリカン・エキスプレスを使っているお客様が比較的多かったことがあります。また、一律の利用上限が設けられていないことも大きな決め手となりました。法人向けの電力販売においては、お客様の1カ月の支払い額が数百万円に上る場合もあります。利用上限が一様に定められているカードでは、これに引っかかって決済できないおそれがありました。対してアメリカン・エキスプレスでは、会員ごとに利用上限が異なり、アメックスへの事前の相談次第で高額利用も可能になります。この仕組みは、われわれのようなエネルギー事業での決済にはありがたいものでした」(石橋氏)

アメリカン・エキスプレスのビジネス・カードによるBtoB決済を導入して以降、同社の事業では、いくつかの目に見える変化が起こった。まず変わったのが、新規顧客獲得のプロセスだ。

丸紅新電力 法人営業部 主任
髙垣 智也 氏

「アメックスは、膨大な数の会員企業に対し、さまざまな接点から当社のサービスを勧めてくださいます。その中から当社に興味を持った企業をご紹介いただき、提案することができるんです。アメックスからの紹介を通じ、2年間ですでに100件超の新規契約が生まれています。

おかげで顧客の幅も広がりましたね。これまでは首都圏の企業がメインでしたが、アメックスがどんどん紹介してくださるおかげで、これまでにはない地域や業種にもアプローチできています。アメックスには、お客様や見込み顧客へのフォローアップはもちろん、『お客様からこんな声がありましたよ』といった情報共有もしていただいています」(髙垣氏)

カード決済導入後、解約率が3分の1に

アメックスは国内屈指の法人カード会員数を抱えており、各法人会員には加盟店企業へのサービス紹介をはじめとする事業支援を行っている。一方で加盟店側でも、顧客にアメリカン・エキスプレスのビジネス・カードの導入を促すなど、加盟店とアメックス間での“相互送客”の仕組みが成り立つ点は特筆に値する。先の丸紅新電力でも、この仕組みを機能させるためにアメックスと協同で入念な準備を行ったという。

丸紅新電力とアメックスの相互送客(イメージ)

「相互送客のためには、双方の事業を正確に理解し合う必要があります。そこで、互いのサービス内容に関する勉強会をそれぞれ受講し合い、また紹介したお客様のその後の進捗を共有する管理表も設けました。クレジットカード会社とここまでしっかりタッグを組むことは、今までなかったかもしれません」(髙垣氏)

さらに、取材ではこちらが想定していなかった数字も挙がった。

相互送客を通じて「加盟店がアメックスを信頼していることがわかる。加盟店同士のシンパシーもあると思います」と語る(髙垣氏)

「解約率の低さにも成果がありました。これまで、1年ごとに約3割のお客様が解約されていましたが、カード決済のお客様では約1割にとどまっています。お客様にとって、電気料金をカードで支払えるメリットはそれだけ大きいのでしょう」(石橋氏)

確かに、電気料金をカード決済にすることで、企業は経費の支払いをカードに一元化できる場合が多い。それによって経理業務の手間が削減されるほか、カード利用で発生するポイントを福利厚生として社員に還元することもできる。一方、事業者側にとっては差別化を図りにくいクレジットカードという商品の付加価値となる。

それを象徴するのがこんなエピソードだ。

「ある企業様に営業をかけたとき、当社の見積もりが、同時に検討されていたほかの電力会社様と比べて3%ほど高かったのです。それにもかかわらず、カード決済ができるという理由で当社が選ばれたときには、ニーズの高まりを実感しましたね」(髙垣氏)。

同社は今後も、アメリカン・エキスプレスのビジネス・カードを有効に活用していきたいと話す。

「カード決済が切り札になることはもちろん、アメックスからの送客支援は新しい販路開拓において大きな助けになります。当社は今後、再エネ電力プランや太陽光、省エネ機器の販売など、多様なサービスも展開していきたいと考えていますが、その際にもぜひアメックスと一緒に取り組みたいです」(石橋氏)

「アメックスを通じて、さまざまなお客様の声を聞くことができるので、社内のサービス向上にも役立てていきたいです」(石橋氏)

アメリカン・エキスプレスのビジネス・カードの真のうまみは、カード会員・加盟企業・アメックスの3者が相互に得をする、いわば「アメックス経済圏」に参入できる点だろうか。もちろん、加盟企業には手数料がかかるが、それと同等以上に加盟企業にとってのベネフィットが大きいことも事実のようだ。確かなニーズがありながら、まだまだ普及の余地があり、先行者利益を期待できる今こそ、企業がカード決済導入を検討するタイミングかもしれない。

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