導入した「Salesforce」もっと使いこなすには 社内の業務改革担当者、必見

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「新型コロナウイルスが収束したとしても、日本には大都市一極集中、少子高齢化、長時間労働、教育・医療格差といった社会課題は残っています。こうした課題を解決するためにデジタルツールの活用機会は増えていくと思います」と語るのは、クラウド型の映像コミュニケーションサービスを主力事業にするブイキューブITソリューション室 室長の天坂匡希氏。

1998年設立の同社は、ミッションに距離と時間の壁を取り払い、すべての人が平等に機会を得られる「Evenな社会の実現」を掲げ、Web会議向けのプロダクトをはじめ、オンラインセミナーやイベント配信のソフトウェア提供をセットにした配信の運用サポートサービスを手がけている。

人と人のコミュニケーションをつなぎ、ワークスタイル、ライフスタイルを変えることを目指す同社は、社内の業務改革にも積極的に取り組んできた。

ブイキューブ
ITソリューション室 室長
天坂匡希氏

「当初CRM(顧客情報管理)を含むERP(統合業務システム)製品を導入していましたが、社内でうまく利用できず、並行して表計算ソフトなどで顧客管理をしていました。関連するワークフローも紙を使ったアナログなやり取りが多く、効率が悪い状況でした。さらにデータの一元管理ができていなかったことから経営判断に遅れが生じていました。そこで2011年、データ管理と活用を見直すため、Salesforceの導入に至りました」(天坂氏)

顧客管理の一元化による部門間の連携はもとより、レポート機能や項目変更のしやすさなど、Salesforceの優れたユーザーインターフェースを評価したという。

また、SaaSのフロントランナーでもあるSalesforceの強みは「機能の拡張性」にある。それを体現しているのは、Salesforceが提供する企業向けアプリストア「AppExchange(アップエクスチェンジ)」だ。

AppExchangeには、営業・サービス・マーケティング・バックオフィスなど企業活動全般を支援する4000種類以上のソリューション(グローバル実績)が提供されている。さながらスマートフォンでアプリを探すように手軽に、ニーズに合うアプリを探し出せるところが特徴だ。

入手したアプリは簡単にインストールできるため、Salesforceの機能を迅速に拡張できる。グローバルでは、Salesforceの顧客の91%がAppExchangeを利用。ブイキューブは10年前にSalesforceを導入して以降、いち早くAppExchangeの活用メリットを把握。天坂氏を中心に、各種アプリをSalesforceに連携させながら業務改善を推進した。

AppExchangeは、Salesforceの機能を簡単に拡張させられるアプリのマーケットプレイスだ

「Salesforceを導入して以降、社内から機能の追加要望がたくさんありました。社内で開発するのではなく、アプリケーションの追加で機能を拡張できることが非常に優れていると感じました」(天坂氏)

中でも業務改善に大きく寄与したアプリだと天坂氏が話すのは、申請業務の自動化をかなえる「TeamSpirit」、請求書作成・発行を円滑にする「RobotPayment」、Salesforceデータを表計算ソフトのように閲覧編集できる「Mashmatrix Sheet」の3つだ。それぞれのメリットについて、次のように話す。

「TeamSpirit」「RobotPayment」「Mashmatrix Sheet」について話す天坂氏

「『TeamSpirit』は営業本部にSalesforceが浸透し始めた頃に導入しました。当時、表計算ソフトに交通費を入力して紙に出力し、押印するという極めてアナログな方法で経費精算をしていました。それを『TeamSpirit』に置き換えたことで、申請者は経費に関する情報をシステムに入力するだけで済み、経理も確認や支払い業務の効率を上げられるようになりました。

現在は、システム部門の工数管理にも活用しています。これまで原価管理には別のシステムを使用して、何に何時間要したかを入力していたのですが、『TeamSpirit』は勤怠と工数の両方を入力できるので矛盾を見つけやすくなりました。

次に『RobotPayment』は、請求書発行までの非効率なフローを改善したいと考えて導入しました。営業担当は案件を受注するとSalesforceにあらかじめ登録している顧客ページで受注申請を行っていましたが、請求書発行のシステムが独立しており、Salesforceと情報連携ができませんでした。そのため、手作業でデータを転記しなければならず、時間も労力もかかっていました。そこで、Salesforceと連携できる請求書発行システムをAppExchangeで探したところ『RobotPayment』がヒット。Salesforceとの連携により、案件の受注から請求書発行までの生産性の大幅向上につながりました。

売り上げが伸び請求の処理量が増加の一途をたどる中、請求書の発行に時間がかかってしまい、お客様に迷惑をかけることも少なくなかったので、信頼という意味でも『RobotPayment』の貢献度は非常に大きかったです。

また、『Mashmatrix Sheet』は案件の管理に役立っています。オンラインでのイベント配信のニーズが増加する中で、パートナー企業との情報共有や人の手配などの情報の管理も膨大になってきました。最初はSalesforceのほかに表計算ソフトなども使用して管理していたのですが、転記作業が必要になるため、転記ミスにより案件との齟齬(そご)が生じるなどの問題がありました。『Mashmatrix Sheet』の導入によって、Salesforceに登録した情報とひも付けてディレクション依頼を管理したり、一括でディレクション依頼の情報を編集できるようになり、対応が必要なセルの色を変えて処理漏れを防止するなど、効率的に管理できるようになりました」(天坂氏)

そのほかにも電子契約のアプリ「DocuSign」を活用して、契約情報をSalesforceに自動で反映できるように仕組み化するなど、Salesforceを基軸に細部にわたり業務効率の改善に努めてきた天坂氏。これまで各部門の判断でシステムを活用し、個別に管理運用していたが、1年前にITソリューション室で全社横断的な社内DXプロジェクトの企画・実行をするようになってからは、Salesforceを顧客データ基盤の中心として、業務の「仕組み化」に取り組んでいるという。

「システムの導入をゴールにするのではなく、業務をどう設計し、効率化するのかという観点でシステムの連携を検討しています。顧客管理に関してはSalesforceを中心にいろいろなシステムと連携させることがベストだと考えています。目下Salesforceを使って、顧客向けのウェブサイト構築を進めています。顧客自身で契約情報を変更できるような会員ポータルサイトのようなイメージのウェブサイトで、更新された情報がSalesforceに反映されるような仕組みを考えています」(天坂氏)

今後もSalesforceとAppExchangeで見つけたアプリを活用しながら仕事の生産性を高め、より創造的な仕事に注力することによって、ミッションに向かっていくスピードを速めたいと天坂氏。最先端のSaaSアプリを武器に、ビジネスのさらなる飛躍を目指す。

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