人事は今やビジネス最前線とリンクすべき時代だ なぜ人事で「HRBP」が注目を集めるのか?

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ビジネスを取り巻く環境が激変する中で、人事の役割は大きく変わりつつある。とりわけ近年注目を集めているのが、経営者や事業責任者のパートナーとして戦略人事を担う「HRBP(HRビジネスパートナー)」だ。なぜこのポジションを新設する企業が増えているのか。そして、実際にどう企業内で機能しているのだろうか。JFEエンジニアリングでHRBPとして活躍する白田 要氏と、マーサージャパンで組織・人事変革コンサルティングを担う前川尚大氏に話を聞いた。

経営の非連続性が人事の役割を大きく変えた

――社会が複雑・多様化する中で、ビジネスモデルも変化を余儀なくされています。その中で、「人事」はどのように変わってきているのでしょうか。

JFEエンジニアリング
人事部 人事室 HRBP
白田 要 氏
2003年に新卒入社。経理部、海外プロジェクト駐在などを経て12年から人事部に配属。18年から人事室長、21年からHRBP。中途採用の最終面接や海外危機管理対応のほか、人事評価手法の改革にも携わっている

白田 まさにJFEエンジニアリングも、事業が大きく変化しているところです。従来のように各種プラントを造るだけでなく、数十年といった長いスパンでの事業運営のニーズや事業再編の機会が増えてきました。そうなると「活躍する人材」の定義も変わりますので、必然的に育成や採用の仕方も変わらざるをえません。

前川 とくに昨今は、どの企業でもDXの推進を急いでいますので、今までにない人材が求められるようになってきています。しかし、各事業部でどんな人材が必要なのかは、現場の最前線で戦っている人じゃないとわかりません。そうした意味で、経営の非連続性が、ビジネスの最前線と人事の距離を急速に縮めているといえます。

白田 前川さんのご指摘どおり、弊社でも人事が事業現場の最前線に精通していることを求められるようになってきました。以前は人事のキャリアを長く積んできたメンバーが多かった印象がありますが、私自身もそうであるように、他部門から配属されるケースが増えつつあります。今年新たに着任した人事部長も、ずっと営業畑を歩んできた方でした。

また、5年ほど前からは、各事業部門を人事部のメンバーが担当するようになりました。以来、明らかに事業本部長や担当役員から相談を受ける機会が増えています。従来は「適任者の案を出してほしい」と依頼を受けていたのが、「一緒に組織体制を考えてくれ」という形になってきたのです。私自身HRBPになってからはとくに顕著で、先日は副社長と1対1で1時間半にわたって組織マネジメントの意見交換をしました。

マーサージャパン
組織・人事変革コンサルティング
シニアプリンシパル
前川 尚大 氏
事業会社人事部、欧米系コンサルティング会社を経て2006年にマーサー入社。グローバルな人事戦略、タレントマネジメント構築、人事制度構築など幅広いコンサルティングに従事。現在、組織・人材開発プラクティスリーダーとして教育事業を推進している

前川 以前から「事業部人事」は存在していましたが、事業部内の機能の一つに過ぎなかったのではないでしょうか。しかし、白田さんのようなHRBPは、文字どおり経営者や事業責任者のパートナーです。上司部下の関係性とは大きく違います。経営者や事業責任者が事業のみの視点で方針を出すのに対し、あえてパートナーとして「今いる人材と組織体制では難しい」と直言するとともに、きちんとした対策を提示することも時には必要です。JFEエンジニアリングさんはそうしたコミュニケーションが成立するようトップも意識しているのではないでしょうか。

各部署とHRBPの意図的な連携が組織を活性化させる

――一方で、経営者や事業責任者のパートナーとしてしっかり機能するには、HRBPのスキルアップなど、人事部門のケイパビリティーを高める必要もあるように思います。そのためにどのような取り組みをするべきでしょうか。

白田 弊社が実践しているのは、事業戦略を肌感覚で知ろうとするアクションです。私自身、HRBPとして担当する事業本部の営業会議にも頻繁に出るようになりました。メモも残さないようなコアな内容の会議に出ていると、現場の感覚がやはり養われます。あとは、ただ対話をするだけでなく、ちょっとしたことでもタスクに協同で取り組むようにしています。そうやって共に汗をかくことが重要だと思うのです。

前川 すばらしいですね。私がこれまで見てきたHRBPの育成に成功した企業でも、同様のアクションを取っています。日常から距離を詰めていくことで、新たなプロジェクトをスタートさせようというとき「HRBPに意見をもらおう」と自然に声がかかるようになります。

結局、事業戦略を実行するのは人ですので、マンパワーの確保から、メンバーにやる気を出させるための仕掛け、必要な知識やスキルを習得するための研修プログラムの選定などが必要なわけです。しかし、そのための適切な施策はやはり人事のプロフェッショナルでなければわかりませんので、HRBPが果たすべき役割は非常に大きいといえるでしょう。

白田 だからこそ、HRBPには教育やリスキリングが欠かせないと思います。人事の日常は非常に目まぐるしく、なかなか落ち着いて学べません。それに、先ほども申し上げましたが現在の弊社人事部は、他部署から配属された経験の浅いメンバーがたくさんいます。先日、マーサージャパンの人事向け研修プログラムを受講したのは、そうした課題を解決しようと考えたからです。

効率的なリスキリングが可能なeラーニングプログラム

――いくつもの人事向け研修プログラムがある中で、マーサージャパンのプログラムを選んだ決め手は何だったのでしょうか。

白田 まず、HRBPとしてスキルアップしていくためには、自分なりに役割を定義づける必要があると考えました。マーサージャパンはHR分野での実績が豊富なだけあって、ケーススタディーも具体的ですし、実務ベースでの学びができることに魅力を感じました。

実際、最前線で活躍しているコンサルタントの話を聞くだけでなく、チャットなどで「私の会社はこうなのですが、どう思いますか」といった質問ができ、それに対してしっかり答えてくれたのが非常によかったですね。それに、日常業務に追われているとなかなか体系的に学ぶ機会がありませんので、他部署から配属された経験の浅いメンバーのリスキリングには効果的でした。

前川 ありがとうございます。私たち自身も感じていたことですが、人事の各領域を網羅的に学べる書籍やコンテンツはなかなかありません。そのため、各領域のつながりもわかりにくいのが実情です。そこで当社のプログラムでは、コンサルタントの知見をきっちり整理し、受講すれば全体的なつながりが理解できるように工夫しました。

今後、従来の新卒一括採用・研修から各部署へ配属するスタイルではなくなり、部署ごとに採用や評価、教育といった人事業務を行うようになる可能性は十分にあります。そうなれば人事の役割はより戦略的なものとなり、経営者や従業員一人ひとりと向き合う仕事になっていくでしょう。そのためのスキルを効率的に磨けるプログラムとして、白田さんにご受講いただいたプログラムをさらに進化させeラーニングとして学べる「Mercer College」を10月よりスタートさせています。今後は、人事だけではなく経営者やマネジメント職も体系的に学べるプラットフォームにしていきたいと思っています。

白田 HRBPになって強く感じているのは、人事という仕事をもっと魅力的にしたいというものです。他部署から少し疎まれることもある人事ですが、共に働く会社をよりよくして、事業戦略の実現に尽力する存在として認められるようにしたいですね。そのために欠かせない人事向け研修、リスキリングのプラットフォームとして、「Mercer College」のさらなる進化に期待しています。

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