「アプリ開発」で気候変動に挑む、学生コンテスト

アドビ、サステイナブル企業パタゴニアと協力

予測不可能な世界を生きる私たちは、ビジネス環境においても湧き起こる課題に目を向け、事業成長と掛け合わせてそれを創造的に解決していく姿勢が欠かせない。アドビでは、UI/UXを課題解決の効果的な手法として位置づけ、環境配慮に力を入れるアウトドア用品ブランド「パタゴニア」とともに、学生が現実社会の課題に挑むデザインコンペ「College Creative Jam 2021」を開催した。未来の持続可能な社会を担う、学生たちの熱い取り組みに迫る。

環境問題の解決を目指した、学生たちの熱いプレゼン

2020年からスタートした「College Creative Jam」は、大学生がモバイルアプリのプロトタイプの作成をゴールにしたコンテストだ。

2回目の開催となる21年は、アウトドア用品のブランド「パタゴニア」が課題を出題。世界的なサステイナブル企業として知られる同社から与えられた課題は「有機農業者の増加につながるモバイルアプリのデザイン」だった。学生は有機農業の専門家やUI/UX設計のエキスパートからレクチャーを受けながら、1カ月半近くにわたり課題に取り組んだ。

1次審査を通過しファイナル審査に挑戦した学生たち。現場では熱いプレゼンが繰り広げられた

そもそも、なぜこうしたコンペを開催しているのか。アドビのエデュケーションエバンジェリストで企画担当者の井上リサ氏は次のように話す。

「現在、ビジネスの世界ではWebサイトやモバイルアプリの存在が不可欠です。アプリはビジネスを支える存在としてだけではなく、収益の根幹を担うケースも少なくありません。こうした背景から、今後ビジネスのフィールドで活躍する人は、Webサイトやモバイルアプリの作り方や仕組みを知る必要があると考え、College Creative Jamの開催に至りました」

今回のコンペではモバイルアプリによる解決策に絞り、そのアイデアとアプリ設計を審査。学生はプロのデザイナーにも活用されているAdobe XDでプロトタイプの作成に挑戦した。加えて、学生自身に課題を身近な事柄として感じてもらえるよう、気候変動に間接的に影響を与える「有機農業」をテーマに据えた。

「今回アプリの設計に活用してもらったAdobe XDというツールはただアプリをデザインするためだけのツールではなく、他者に自分なりのアイデアをロジカルに伝えられるんです。学生の皆さんには、その強みを実感してもらいたい。だから今回のコンペでは有機農業について学生が探索的にリサーチする機会を増やしAdobe XDで考えを整理する機会を意識的につくっています。最終のプレゼンでもアプリのデザインや機能の使い勝手はもちろんですが、その背景にある学生らの仮説や解決策としてのアイデアの価値に比重を置いて審査しました」(井上氏)

優勝チーム「デザイン未経験でも、深い洞察」で高評価

21年の「College Creative Jam」には、全国23の大学と大学院から、65チーム168人がエントリー。最終審査は10チームで行われ、情熱あふれるプレゼンが展開された。そうした中で、1位に輝いたのは「農地を売りたい人と買いたい借りたい人のマッチングを円滑にする」着眼点のプロトタイプ「Norch(ノーチ)」。

日本女子大学家政学部の3人で構成されるチーム「ラタトゥイユ」の提案だった。彼女たちは、あえて「自分ごと化」しやすい消費者視点ではなく、農業を始める際の実践的な課題の解決をゴールとして設定し、その着眼点と深い洞察が大きく評価された。

審査員の面々は、「実際に農業を始める際にぶつかる壁が農地を借りたり買ったりするハードルの高さ。それをどうクリアするか、とてもよく設計されている」(パタゴニア日本支社 環境社会部門 アクティビズム・コーディネーター 中西悦子氏)、「課題を取り巻く状況の冷静な見極めが効いていてソリューションの解像度も高い」(電通 CXCC クリエーティブ・ディレクター/アートディレクター 高草木博純氏)、「賃貸などの物件探しサービスのアプリとマッチングアプリのいいとこ取りで、すぐにでも実用化できそう」(フェリシモ カスタマーマネジメントグループディレクター 吉田綾貴子氏)とコメント。

ラタトゥイユのメンバー3人は、ゼミの先生からの紹介でコンペに興味を持ち参加。プレゼンを担当した嘉山さんは、プロトタイプの設計に当たりこだわったのはアイデアの部分だったと振り返る。

「農業従事者から直接話を伺ったり、ネットで情報をリサーチしたりして、そもそも有機農業が抱えている課題は何なのか、細かく調べたところ、農業従事者の平均年齢が67歳でした。そこから、時間さえあればディスカッションをしていって、その層の方を有機農業へと動かすモバイルソリューションは難しいと予想したんです。そこで『アプリ』とマッチする若手の新規就労者向けの解決策に絞りこんでいきました」(嘉山さん)

実際にラタトゥイユが制作したプロトタイプの一部。

3人ともAdobe XDは未経験だったが、レクチャーを受けながら操作方法を習得。農地の貸し手と借り手双方のボトルネックの解消に必要なことを踏まえ、アプリの機能やデザインを磨いた。メンバーの宮嶋さんはAdobe XDを初めて使ったことでこんな気づきを得た。

「普段さまざまなアプリを何げなく使っていましたが、仕組みがどうなっているのか考えたことはありませんでした。Adobe XDを使ったことで、なぜタッチすると画面が切り替わるのか、どうすればアニメーションになるのかと、アプリを制作するに当たっての発見がたくさんあり、アプリの見方が変わりました」(宮嶋さん)

今回のコンペに参加したことは、将来の財産になるとメンバーの小沢さんは手応えを感じている。

「アイデアを形にして表現する取り組みは、自分にとって大きな経験になりました。最初は革新的なアイデアを出さねばと気を張っていたのですが、メンバー同士でアイデアを詰めていくことで適切な解決策なのかどうか、何度も立ち戻って課題を掘り下げる思考力を鍛えることができました。この経験は社会に出たときに役立つと信じています」(小沢さん)

若い世代の強靱な思考力が将来をつくる

これからも学生の創造的課題解決能力を鍛える場を提供していきたい、と井上氏は話す。

「複雑さを増す社会において、経営やマネジメントする立場の人はどのような仕事を誰に任せればいいのか迷うことも増えていくはずです。そのとき、社員一人ひとりがリサーチに基づいて戦略を立て、周囲の納得を得られるようなプレゼンができると強い組織になると思います。

アドビ エデュケーションエバンジェリスト
井上 リサ

創造的な解決方法はすぐに思いつくものではないので、人の話を聞き、分析してアイデアをひねることが重要です。そしてそのアイデアをいかに表現して、他者と共有できるか。アドビでは、その一連のプロセスをサポートできる学習機会やツールを提供しています」

「世界を動かすデジタル体験を」をミッションに掲げるアドビ。今後は中高生を対象にしたコンテストも視野に入れている。人間の思考やクリエイティビティの発揮をアシストするツールや体験は、持続可能な社会を構築していくためにも必要な思考力の向上に直結する。教育の現場でもアドビのツールを活用することで、これからの企業や社会の将来を担う人材の育成方法をアップデートできるのではないだろうか。

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