コア事業の不動産+電力で持続的な成長を目指す

「エネルギー事業」を次の50年に向けた柱に

タカラレーベン代表取締役の島田和一氏
2022年に創業50年を迎える不動産総合デベロッパーのタカラレーベン。新築分譲マンション事業を中心に成長してきた同社は、郊外や地方都市での供給に強みを持ち、地域の活性化に寄与してきた。近年はさらにエネルギー事業にも力を入れ、今年度(22年3月期)からスタートした中期経営計画では「グループ内カーボンニュートラルの実現」を目標の1つとして、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーへの取り組みを推進する方針だ。そこには、単なる事業としての成長だけでなく、脱炭素化や地域貢献の意図もあるという。代表取締役の島田和一氏に、50周年を控える中でのこれまでのビジネスの振り返り、そして次の50年に向けて描くビジョンについて尋ねた。

マンション供給で「エネルギー」が重要な要素に

レーベン長野中御所 THE PEERLESS

2021年2月。タカラレーベンは、長野市で分譲マンション「レーベン長野中御所 THE PEERLESS」の販売を開始した。このマンションは長野市の中心駅である長野駅から徒歩8分の距離に位置し、「信州のシンボル」ともいわれる善光寺にもほど近い場所にある。長野県の行政、商業の中心である県庁通り沿いという立地特性を生かし、新たなランドマークの創出を目指して建設された物件だ。

このマンションの特長はそれだけではない。インターネット接続により電力使用のピークを抑制可能なヒートポンプ給湯機を備えるほか、専有部のオール電化とマンション全体の高圧一括受電を採用、さらには再生可能エネルギー由来の電気を各戸で利用できるなど、エネルギー使用量を減らすためのさまざまな仕組みを取り入れているのだ。これらの導入によって、このマンションは「ZEH-M Oriented(ゼッチ・マンション・オリエンテッド)」※1の認証を取得。販売も好調で、全47戸がすでに完売している。

新築分譲マンションの供給において、タカラレーベンが評価される理由はどこにあるのか。同社代表取締役の島田和一氏は、「最近になって、地方都市の中心部の活性化が大きなテーマになっています。当社では早くから、コンパクトな街づくりなどを視野に入れた提案を行ってきました。これまでの実績と知見には自信を持っています」と説明する。

10年には、中心市街地活性化法に基づく再開発事業の全国認定第1号案件となった富山市でのプロジェクトに同社は参画している。複数の地権者の取りまとめ、建築規制の緩和や補助制度などを活用したプラン作り、官民連携の事業推進などでも豊富な経験を持つ。

レーベン青森新町 THE GRAND MID

直近では、21年10月にタカラレーベンのグループ会社であるタカラレーベン東北が、青森市で分譲マンション「レーベン青森新町 THE GRAND MID」の販売を始めた。青森市民に愛されてきた百貨店「中三」跡地に建設され、中心市街地ならではの複合商業施設と一体化したレジデンスだ。

「地方都市では、その都市のシンボルであった百貨店が閉店するなど、厳しい状況が続いています。中心街のにぎわいを復活させ、市民が生き生きと暮らせる街づくりを目指す再開発プロジェクトも進んでいますが、そこで当社を選んでいただける機会が増えています」と島田氏。

現在ではさらに、街づくりにおいて、省エネや再生可能エネルギー利用の観点が求められるようになってきているという。冒頭で紹介した「レーベン長野中御所 THE PEERLESS」も、その観点を反映した事例の1つだ。

さかのぼれば、省エネや再生可能エネルギーの点でも同社は早くから実績を重ねてきた。10年に、太陽光発電システム搭載マンションの供給を開始。18年には、戸別売電※2に対応する太陽光発電システムと燃料電池を採用した分譲マンションを供給した。21年3月時点で、太陽光発電マンションの供給累積数は50棟5604戸に達している。

太陽光発電マンションのレーベン東鷲宮テラス(埼玉県久喜市)

再生可能エネルギーに早期参入し、地域貢献へ

政府は2030年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減すること、および50年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする(カーボンニュートラル)目標を設定した。新しい目標が出てきたことで、にわかに再生可能エネルギーに言及する企業も出てきたが、タカラレーベンはこの領域でも草分け的存在といえる。

10年に太陽光発電マンションの供給を始めたことが、再生可能エネルギー、ひいては脱炭素へいち早く取り組む最初のきっかけとなった。「当時から、不動産を本業として、省エネや再生可能エネルギーの推進による、よりよい住宅供給を意識していました。マンションで発電し、発電した電力を各戸で利用して余剰電力を売電するという合理的なマンションを供給した実績の延長で、メガソーラー発電事業に参入しました」と島田氏は語る。

実際に、12年の「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」施行を踏まえ、翌年にはメガソーラー発電事業に参入。すでに数多くのメガソーラー発電所の開発を手がけ、21年9月末時点で全国で206施設(売却分を含む・ライセンス数に基づく集計)が稼働中だ。総発電規模は約355MWに及び、25年3月期末までに360MWの稼働を目標にしている。

(写真左から時計回りに)LS千葉勝浦発電所、LS岡山津山発電所、LS那須那珂川発電所

また、これらの太陽光発電設備などを主な投資対象とするタカラレーベン・インフラ投資法人は、16年6月に上場した国内初の上場インフラファンドとなった。さらに21年4月には、小規模太陽光発電の開発で実績のあるACAクリーンエナジー(現レーベンクリーンエナジー)の発行済み株式の100%を取得し、連結子会社化。グループのエネルギー事業のさらなる強化を図っている。

一方で、FIT買い取り期間の終了や22年度のFIP制度※3開始など、太陽光発電をめぐっては大きな変化も起きている。同社はそこでどのようなビジネスモデルを描いているのか。島田氏は次のように話す。

「1つは、PPA(電力販売契約)による相対取引への積極参入です。オンサイト(現場で電力を作る)とオフサイト(遠隔地から電力を運ぶ)の両面でのPPAを進めていきたいと考えています。また、今後は地域でのマイクログリッド(小規模電力網)の構築にも参入していきます。そのために、太陽光以外の発電事業も推進します」

21年7月には、牛ふんを利用したバイオマス発電事業を行う企業に出資した。バイオマス発電事業はタカラレーベンにとって初めての取り組みだ。乳牛農家の牛ふん処理問題解決に向けた地域貢献も目的にしているという。マイクログリッド構想は、その地域で使用する電力をその地域内でまかなうという、「電力の地産地消」構想だ。牛ふんを利用したバイオマス発電事業は、地域で発生した廃棄物を循環させるという観点でもマイクログリッド構想の実現に寄与する。

富士山朝霧バイオマス発電所

「当社は中期経営計画でESGへの積極対応を掲げています。これをお題目にするのではなく、本当の意味での環境改善やエネルギー自給率向上、さらには遊休地の活用をはじめとした地域活性化を実現したいと考えています」

次の50年を見据え、エネルギー事業を成長させる

2021年5月、タカラレーベンは25年3月期までの新たな中期経営計画を発表した。コア事業である新築分譲マンション事業では、仕入れ・商品企画・販売の一貫体制を構築し、全国での安定供給化をさらに推進していく考えだ。

「コロナ禍の影響で、23年3月期までは売り上げ戸数の減少を見込んでいます。しかし、実際の需要は高まっており、とくに地方都市では、在宅勤務など自宅で過ごす時間が増えたため、快適な住まいが欲しいというお客様が増えています。当社が得意とするエリアで、強みを発揮できると考えています」と島田氏は話す。

同社は1972年に、戸建ての分譲を行う「宝工務店」としてスタートした。マンション事業を中心に着実に実績を積み重ね、来る22年に創業50年を迎える。

「50周年に向けて『ライフスタイルに、新常識を。』というスローガンを掲げています。いつの時代も、新しい常識が人々のライフスタイルをよりよい方向へと導いてきました。これからも、どこにもないもの、誰もやったことのないことなど、さまざまな工夫を組み合わせて、これまでにないインパクトで人々のライフスタイルを変えていきたいと思っています。そして、そのすべてがいつか新しい常識になる日まで、私たちは挑戦を続けていく考えです」

SDGsやESGも新たな常識の1つとなるだろう。カーボンニュートラルの実現は日本国内のみならず、世界でも喫緊の課題になっている。「課題の解決のためにも、エネルギー事業をマンション事業に匹敵するような事業に引き上げていきたい」と島田氏は力を込める。次の50年を見据えたタカラレーベンの取り組みにも期待したい。

※1 高断熱化と高効率な設備の導入により、快適な室内環境を維持しながら共用部を含むマンション全体での年間の一次エネルギー量の収支を「ゼロ」とすることを目指したマンション
※2 太陽光発電で発電した電力を各家庭に割り振り、各家庭で自家消費し、余った電力を売電できるシステム
※3 FIP(フィード・イン・プレミアム)制度:再生エネルギー発電事業者が卸市場などで売電する際に、市場価格に一定のプレミアム(補助額)を上乗せする制度

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