ワーケーションで従業員のウェルビーイング向上 長野県「信州リゾートテレワーク」の価値と魅力

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2020年以来、にわかに注目を集めるようになったワーケーション。だが、長野県はそれ以前から豊かな自然環境下で働くことが、従業員の生産性とウェルビーイングの向上に寄与するとして、「信州リゾートテレワーク」の名称で積極的にワーケーションを推進してきた。これまでの経緯や実際の取り組み、今後の展望などを紹介する。

ワーケーションを企業価値向上につなげる

長野県といえば、連なる3000m級の山々、美しい星空や清流、温泉、スキーやトレッキング等のアウトドアスポーツなどで知られる日本有数のリゾート県だ。大自然の恵みである野菜・果物・米などの農作物や、その加工品であるワイン、日本酒などの食も充実。移住したいエリアとしても人気が高く、リゾート、レジャーだけではなく、暮らすという側面でも魅力を放つ。

そんな長野県が、都会を離れ豊かな自然の中で仕事と暮らしと休暇を楽しむ新しいライフスタイルを提案し始めたのは2018年のことだ。その経緯について長野県知事の阿部守一氏は次のように話す。

長野県知事
阿部 守一

「人生100年時代、働き方改革といったテーマに対して社会の取り組みが進む中で、長野県としてはどう貢献できるのか、どう地域の活性化につなげていくのか。それを考えたときに、長野県の豊かな自然と首都圏・中京圏からのアクセスのよさを生かし、長野県をテレワークの拠点として多くの方に活用していただこうと思ったのです」

長野県は、県内に滞在して仕事をする人・企業を「つながり人口(いわゆる関係人口)」の1つのあり方と位置付けている。信州リゾートテレワークを選択することで通勤ラッシュや人混みなどの都会的ストレスを遠ざけることが可能だ。そのうえ、緑豊かな環境で働くことで集中力の向上、生産性アップも期待できる。効率的な働き方は、生活の質の改善にもつながるだろう。

企業はそうした環境を提供することで従業員の満足度を高めるとともに、従業員のウェルビーイングに取り組む会社として、企業価値の向上も図れる。さらに、さまざまなアクティビティーを活用したチームビルディングや、新規プロジェクトのための研修、ワークショップなど組織開発や人材育成の場としても使える。

長野県としても、関係人口の増加で地域経済の活性化や新たなビジネス創出の機会を得られるはずだ。信州リゾートテレワークの舞台で働く当事者、ワーケーションを推進する企業、そして長野県にとってもメリットは大きい。

県全域で生まれるそれぞれの魅力と新しい機運

もちろん、関係人口を誘致するためには、受け入れ環境を整備、充実させなければならない。そこで18年度から県内12エリアをモデル地域として選定し、空き施設を活用したリゾートテレワーク環境の整備や体験会開催などに取り組む民間事業者を支援。これらのモデル地域を含め、県内で80カ所以上の受け入れ施設が誕生している。

すでに、軽井沢町をはじめ、法人向け貸し切り型リモートオフィス「ノマドワークセンター」を有する信濃町、国際山岳リゾート地の白馬村など、各地域の民間事業者がそれぞれの特性を生かしながら信州リゾートテレワークの運営に当たり、その魅力を発信しつづけている。

ふろしきや代表取締役
田村 英彦

モデル地域の1つ、千曲市で地域資源を生かした協働型ワーケーションの推進事業に取り組んでいるのは「ふろしきや」だ。信州らしい「温泉・絶景など地域資源」を活用しながら「快適かつ刺激的な働き方」を実践するワーケーションイベントを企画、運営している。コロナ禍にあっても働き方を考える機会として定期的に「ワーケーション・ウェルカムデイズ」を開催し「観光列車ろくもん」を貸し切っての「トレインワーケーション」や、絶景が広がる寺での瞑想、社会問題を考えるアイデアソンなど、仕事と非日常体験を組み合わせたさまざまな体感型プログラムを用意している。

観光列車を貸し切って実施したトレインワーケーションの車内風景。変わりゆく風景を眺めながら仕事ができる環境に参加者から好意的な反応が寄せられたという

参加者はフリーランスだけでなく多くの経営者・企業勤務者が含まれ、業種はさまざまだ。中には社会問題や環境問題、働き方の模索など大きなテーマを持って参加している人もいる。

ふろしきやが催すイベントには、多彩なバックグラウンドを持った人たちが参加している。視野を広げ、新たな気づきを得ることにもつながるだろう

ふろしきや代表取締役の田村英彦氏によると、ワーケーションをきっかけに地元の参加者と共に地域を超えて協働するプロジェクトが生まれてきているという。

「ワーケーションの裾野が広がり、来訪の形が多様化しているのを感じています。単純に心地よく働きたいことに加えて、より視野を広げるための出会いや学びを求めている印象です。千曲市に限らず、ワーケーションを入り口とした出会いと創造が生まれる機運を感じています」

地元の参加者との交流機会も積極的につくっている。写真は、地域の課題をテーマとしたアイデアソンの様子。より深い関わり合いがお互いを刺激するはずだ

信州リゾートテレワークが進化する

実際、注目度、認知度も高まっているようだ。長野県は今後さらに都市圏企業等に向けた広報を継続・拡大しつつ、「信州リゾートテレワーク推進チーム」を立ち上げ、情報交換会の開催などを通じて、地域のネットワーク形成や優良事例の横展開を支援し、受入体制を強化していく考えだ。また、大都市圏から同県への人や企業の誘致を強化するために、県内市町村、民間団体等と連携し、「信州回帰プロジェクト」としてさまざまな分野の取り組みをパッケージ展開していく予定だ。

阿部知事は自然の中で働く効用についてこう語る。

「私自身、執務室にこもっているときよりも、少し郊外に出かけたときのほうがいろいろなアイデアが湧いてくることが多い。おそらく自然の中に身を置くことで、リフレッシュされ五感が研ぎ澄まされるからだと思っている。リゾートテレワークを、仕事を進める上での1つの選択肢としていただければと思っています」

企業で働く人も経営陣も、ビジネスをクリエイティブに進め、生産性とウェルビーイングの向上を図るための手段として、信州リゾートテレワークを活用してみてはいかがだろう。

信州リゾートテレワークの詳細はこちら