調査でわかった「経営者と社員の、致命的なズレ」

働く「時間」の柔軟性がない職場の重大リスク

コロナ禍で、リモートワークが新しい働き方として広まって1年以上が経過した。一方でオフィス回帰の動きもあり、これから働く環境をどのように整えていくか、頭を悩ませている経営者は多いだろう。働く環境を考えるうえで注意したいのが、経営層と従業員の意識のズレ。従業員のニーズを踏まえて働く環境を提供しないと、モチベーション低下や離職につながるおそれがある。グローバル調査の結果を基に、いま企業が取り組むべき3つのテーマを紹介しよう。

「完全オフィス勤務」に戻したがっている経営者

経営層は完全オフィス勤務に戻したがっているが、それに同意する従業員の割合は経営層の約3分の1でしかない――。未来の働き方を考えるコンソーシアム「Future Forum」の調査で、ポストコロナ時代の働き方をめぐり、経営層と従業員の意識に大きなギャップがあることがわかった。

「Future Forum」はSlackの主導で設立されたコンソーシアムだ。四半期ごとに働き方に関する意識調査「Future Forum Pulse」を実施しており、最新版の調査は、日本ではコロナ第5波の真っただ中だった2021年7月28日~8月10日に行われた。調査地域は欧米日豪の6カ国。対象は、フルタイム雇用のナレッジワーカー約1万人だった。

注目は、今後の働き方についての意向が、経営者層と従業員で乖離したことだ。現在リモートワークを実施している経営者のうち、完全オフィス勤務を望むと回答した経営者は44%いた。それに対して、完全オフィス勤務を望んだ従業員は17%にとどまった。経営層ほどオフィス回帰の意向が強く、逆に従業員はリモート中心の働き方を継続したがっていることがわかる。

どうしてこのようなギャップが生じているのか。セールスフォース・ドットコム Slack アライアンス本部 シニアディレクターの水嶋ディノ氏は、「意識のズレが生じた背景には3つの要因がある」と指摘する。

「まず、経営者層の仕事への満足度そのものが、従業員と比べて高いことが挙げられます。(「満足」の回答は62%)。経営層は自分の働き方を自分で決められることが多く、オフィス勤務でも伸び伸び仕事ができるのでしょう。また、自身はオフィス勤務で成功体験を積み上げていまのポジションを手に入れた。経営者は管理される従業員側と比べて、オフィス勤務への抵抗感がもともと小さいんです」

セールスフォース・ドットコム Slack
アライアンス本部  シニアディレクター
水嶋 ディノ

さらに「偏った意思決定プロセス」や「透明性の欠如」も問題だという。

「コロナ後の働き方を決定するプロセスについて質問したところ、66%が『意思決定プロセスに関わったのは経営層のみ』と回答しました。また、コロナ後のリモートワーク方針について『透明性が高い』と回答した割合は、経営層が66%だったのに対して従業員は42%にとどまりました。つまり、今後の働き方についての意思決定に従業員の声は反映されず、決まった方針の社内向けコミュニケーションについても従業員は不信感を抱いているということ。経営層と従業員で意識のズレが生じるのも納得です」

働く「場所」よりも「時間」の柔軟性が求められている

問題は、このズレを放置することのリスクだ。今回の調査で、「1年以内に新しい仕事を探す可能性がある」と回答した従業員の割合は57%に達した。従業員の意向を無視して経営層の都合で決めた働き方を推進すると、離職が相次ぐおそれがある。人手不足が顕著な日本において、人材の獲得・維持でつまずくことは致命傷になりうる。

では、どうすれば従業員の満足度を高めることができるのか。水嶋氏がキーワードとして挙げるのが、「柔軟性」「インクルージョン」「透明性」だ。

「従業員の仕事に対する満足度を決める要素として最も大きいのは報酬です。実はその次に大きい要素が柔軟性。具体的には、従業員のうち、働く『場所』の柔軟性が欲しいと回答した人は76%、働く『時間』の柔軟性が欲しいと回答した人は実に93%に達しています」

「リモートワーク中の女性従業員のうち、85%はより柔軟でハイブリッドな働き方を希望しています。とくに子育て中の女性は、リモートにおける仕事の満足度が平均より高く、『ワークライフバランス』のスコアは平均の1.6倍、『生産性』は1.5倍でした」

「自社の方針に対して『非常に透明性が高い』と回答した従業員は、そうでない従業員に比べて、『会社の将来に期待している』と回答した人の割合が2倍でした。逆に『非常に透明性が高い』と考えていない従業員は、仕事の満足度が26.7%低く、定着率も17.3%低かったです」

非同期型ツールの活用で、時間の柔軟性を高める

人材の維持・獲得で失敗しないために、企業は「柔軟性」「インクルージョン」「透明性」の3つのテーマに取り組む必要がある。いずれも重要だが、とくに注意が必要なのは柔軟性だろう。リモートワークの普及後は、仕事の柔軟性といえば「場所」が真っ先に思い浮かぶようになった。しかし、実際は前述のように、場所以上に時間の柔軟性を求める従業員が多い。

興味深いデータがある。「自分の働く場所は柔軟」と答えた人は、そうでない人と比べて、「ワークライフバランスがよい」と回答した人のスコアが2.0倍、「仕事のストレスにうまく対応できている」と回答した人の割合が2.4倍だった。同様の質問を時間についても行ったところ、「ワークライフバランスがいい」と回答した人の割合は3.2倍、「仕事のストレスにうまく対応できている」と回答した人の割合は、なんと6.6倍になった。従業員を引き留めたければ、場所だけでなく時間の柔軟性を高めることが大事なのだ。

「場所であれば、リモート環境を整えるための補助や手当、シェアオフィスの活用、時間であれば、コアタイムとフレックスタイムの分離、評価を時間単位から成果重視にシフトするといった仕組みで柔軟性を高めていくことができます」

気軽に、音声コミュニケーションを始められる「Slackハドルミーティング」機能

場所と時間の柔軟性を高めるには、ツールの活用も欠かせない。場所を問わずに同期的にコミュニケーションができるツールはもちろんのこと、時間の柔軟性が求められていることを考えると、それぞれが好きな時間に情報を共有できる非同期型ツールも必要だ。コミュニケーションツールの Slack は、柔軟性のある働き方を実現するための新機能を続々とリリース。同期型機能としては、カジュアルなグループでの雑談や通話を行える音声ファーストの『Slack ハドルミーティング』、非同期型機能としては、音声や短い動画をチャンネル内で手軽に作成して共有できる『クリップ』が実装されている。

自分の話している様子を録画・録音したり、資料を投影しながら画面を録画したりすることができるので、情報共有の方法の新しい選択肢が増える。このような機能と従来の Slack のメッセージ機能を組み合わせれば、会議時間の短縮や、チームの意識合わせをより効率的に行うことが可能である。

もちろん、制度やツールを導入しさえすればいいという話ではない。柔軟性の高い職場をつくるためには、大胆な発想の転換が必要だ。水嶋氏は、最後に経営層に向けてこうメッセージを送ってくれた。

「まずは管理職が、自身を『監視者』としてではなく、社員の自主性を尊重して成果を引き出すコーチ、アドバイザーとして位置づけることが必要です。また、オフィスかリモートかという両極端な考え方にとどまらないことも重要です。チームビルディングなど、リアルな空間でやったほうが効果的なものもあれば、定期の申請や報告業務など Slack 上で非同期に行ったほうが効率的な業務もあります」

デジタルとリアルをうまく組み合わせて、ハイブリッドな働き方を選択できる柔軟性のある職場をつくる。そのためのデジタルツールに投資し、具体策を推進していくことこそ、いま現場の社員が経営者に求めていることだ。

>Slackの調査で、オフィス勤務に対する意識のズレが明らかに!

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