強炭酸水「集中したいときに飲むべき」納得の理由 アサヒ飲料の実験で、意外な効果が明らかに

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猛暑に好まれ、ゴクゴク飲んでスカッと喉を潤すイメージがある強炭酸水。しかし、実際は秋~冬でもコンスタントに売れ続けているという。なぜ寒い季節にも高い人気を誇るのか。飲食市場に詳しい経済ジャーナリストの高井尚之氏に、強炭酸水が売れる理由を分析してもらった。

炭酸飲料の世帯当たりの年間購入額は、前年比約16%増

近年、一気に市民権を得た飲料といえば強炭酸水だろう。「家計調査(家計収支編)調査結果」(総務省)によると、2015年、炭酸飲料の1世帯当たりの年間購入額は4867円だった。それが20年には6649円にまで伸びている。とくにこの1年の急成長ぶりは目覚ましく、年間購入額は前年比で約16%増という勢いだ。

その牽引役となっているのが、強炭酸水だ。強炭酸水はもともと人気だったが、なぜ近年になって急加速したのか。背景にあるのは、やはりコロナ禍だ。経済ジャーナリストの高井尚之氏は、コロナ禍における飲食のトレンドを次のように解説する。

「一日中家にこもってリモートワークし、オフィスに出社しても外食せずに帰宅する生活は、どうしても単調になりがちです。のっぺりした生活にアクセントをつけるため、消費者はスイッチの切り替えにもなる食べ物や飲み物を求め始めました。ガツンとした爽快感がある強炭酸水は、そうしたニーズにぴったり合っているんです」

経済ジャーナリスト
高井 尚之

生活のアクセントになる飲食物の人気が高いといっても、大がかりなものはハードルが高い。トレンドは、「ちょいご褒美」「ちょい息抜き」といった「ちょい」需要だ。最近はいわゆる「自分へのご褒美」が小粒化・高頻度化していて、月に1回豪華なものを食べるより、「毎日ちょっと気持ちよくなりたい」「手の届く気分転換をしたい」というニーズが強くなっている。

「『手が届く』には、2つの意味があります。1つは、リーズナブルに手に入ること。もう1つは、半径50センチの範囲で楽しめること。食べ物でいえば、例えばチョコレートやグミなどのお菓子、アイスクリームなどがデスクワーク中の気分転換アイテムとして人気です。強炭酸水は、まさに日常的に『手が届く』飲料。飲み方も、仕事終わりに一気に飲んですっきりするだけでなく、手元に置いて小まめに飲むスタイルも多いのではないでしょうか」

高まる健康志向で、「無糖」が強力な追い風に

一言で気分転換と言っても、スイッチの切り替えには2種類ある。強炭酸水は刺激が強く、オフからオンに切り替えるときに向いている。一方、スイッチをオフにしてリラックスしたいときは、一般的にカフェラテやミルクティーなどのミルク系が好まれる。どちらも単調な生活に変化をつけたいときにぴったりだが、いま伸び盛りなのは強炭酸水のほうだ。この現象を読み解くキーワードが、「成分としての安心感」なのだと、高井氏はみる。

「強炭酸水は水と炭酸のみで、無糖。最近はフレーバーがついている商品もありますが、基本的に無糖です。近年は健康志向の高まりによって、糖分を避ける傾向がありますので、スイッチを切り替えたい場面でも無糖炭酸水がとくに好まれるんだと思います」

マーケティングの世界では一般に、商品には「機能的価値」と「情緒的価値」があるとされる。健康にいいのは機能的価値だが、高井氏は「強炭酸水は、情緒的な面でも選ばれているのでは」と指摘する。

「健康志向が高まっているといっても、一般人がストイックな生活をずっと続けるのは簡単ではありません。時には脂っこいものをおなかいっぱい食べたくなるのが人間。そうしたときに、いわば“罪滅ぼし”として無糖の強炭酸水を選ぶことが多いんだと考えます。この罪滅ぼしの感覚は、まさに情緒的価値といえます。

気の重い会議の前に気合を入れたい、休憩時間には軽く一息ついてリフレッシュしたいといったニーズは、季節や地域を問わず一年中存在します。強炭酸水の人気が冬にも落ちないのは、ビジネスパーソンを中心に、気分転換できるアイテムとして飲まれていることの証左でしょう」

「ガツンとした爽快感」「気軽に手の届く気分転換」「成分としての安心感」。これら3つの特長が、強炭酸水の人気を支えているようだ。

強炭酸水を飲むと、どのくらい気分転換できるのか?

強炭酸水を飲むことで気軽に気分転換できるということは、確かに肌感覚として理解できる。では、強炭酸水を飲むと、実際に気分はどのくらい変化するものなのか。それを数値化した実験がある。慶應義塾大学の満倉靖恵研究室とアサヒ飲料が、電通サイエンスジャムの協力を得て行った共同研究(2019年、52名を対象)だ。

この実験では、水と強炭酸水、弱炭酸水のそれぞれについて、飲む前後の脳波を測定していくつかの項目を比較した。その結果、強炭酸水を飲むと『集中度』や『覚醒度』(※1)がいずれも、水を飲んだときの数値を有意に上回った(※2)。上述の機能的価値と情緒的価値のうち、強炭酸水の機能的価値が数値で明らかになったわけだ。

出典:「脳波解析を用いた炭酸水飲用による感性変動の取得」(第76回日本栄養・食糧学会中部支部大会、2019年)
アサヒ飲料「炭酸水に新たな発見!強炭酸水の飲用で集中力が高まることを実証~慶應義塾大学とアサヒ飲料での共同研究~」。
『集中度』変化の飲料間比較:それぞれの飲料において、飲用前の『集中度』を1として飲用前と飲用後で比較した。『覚醒度』変化の飲料間比較:それぞれの飲料において、飲用前の『覚醒度』を1として飲用前と飲用中で比較した。

「『集中度』や『覚醒度』を高める効果が科学的に示されたのは興味深いですね。とくに覚醒効果が示されたことは、強炭酸水がスイッチをオンにするときに向いているという裏付けになっているのではないでしょうか。私はいつも、強炭酸水をかばんに入れて持ち歩いていますが、仕事を始める前や気合を入れたいときに一口飲みたくなるんです。これは、『覚醒度』を高めて集中したかったからなんだと、自分で納得がいきました」

『集中度』や『覚醒度』を高めるという機能的価値は、オールシーズン変わらずに求められている。強炭酸水が夏だけでなく秋冬にもよく売れる理由はまさにここにあるが、高井氏は「強炭酸水市場はまだ伸びる余地がある」と読んでいる。

「家やオフィスのデスク回りに置いて、飲みたいときにすぐ飲めるのも強炭酸水のメリット。強炭酸水を飲むことで『集中度』・『覚醒度』を高めるという事実も踏まえ、今後の市場に引き続き注目していきます」

>アサヒ炭酸ラボ「強炭酸水で集中力を向上」

※1 「覚醒度」は、数値が高いほど眠気を感じにくい状態

※2 出典:「脳波解析を用いた炭酸水飲用による感性変動の取得」(第76回日本栄養・食糧学会中部支部大会、2019年)
アサヒ飲料「炭酸水に新たな発見!強炭酸水の飲用で集中力が高まることを実証~慶應義塾大学とアサヒ飲料での共同研究~」

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