「1週間で30社への営業」を可能にするカラクリ

コロナ禍で営業の“個人商店”時代は終わった

コロナ禍によって対面の営業活動が激減するなど、ほとんどの企業は営業戦略の見直しを迫られている。コロナ後に生き残り、成長するためには何が必要か。中尾マネジメント研究所代表の中尾隆一郎氏は、営業、マーケティング活動における「KPIマネジメント」を使って「ITで勝つ」ことが重要だという。その理由と実践方法とは。

対面営業の消滅は「チャンス」と捉えるべき

今、企業の営業やマーケティングの現場では大きな変化が起きています。それはもちろん、「対面営業ができない」ということです。

ご存じのように、コロナ以前から営業のデジタル化は進められてきました。その一方で、昔ながらの足で稼ぎ、汗をかいて取ってくるスタイルの営業も残っていたんです。大手企業では、科学(デジタルの部分)と人力が混在していた環境だったと思います。

ところがコロナによって、対面営業が激減し、このやり方が通用しなくなりました。結果がすべてで、やり方は問わないという状況が一変し、いや応なしに非対面で営業しなければいけなくなったんです。営業しようにもコロナでマーケットが一時的になくなった業界もあり、それは本当に苦しい。しかし、多くの業界では、市場自体は変わらず残っていて、対面の営業活動だけができない状態です。これが世界全体で起きているというのが、今の状況だと思います。

中尾マネジメント研究所(NMI)代表取締役社長
中尾 隆一郎
1989年~2018年までリクルートにて住宅、テクノロジー、人材、ダイバーシティ、研究領域に従事し、リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートホールディングスHR研究機構企画統括室長、リクルートワークス研究所副所長などを歴任。スーモカウンター推進室室長時代に6年間で売り上げを30倍、店舗数12倍、従業員数を5倍にする実績を持つ

ただ、これを私はチャンスだと思っています。今年だけで、私が経営している会社でも、10社以上の上場企業と新規の取引を始めていて、一度も直接会わずに、最初から非対面で商談を進めることができました。わが社だけでなく、業界の構造が変わる好機だと捉える企業は、営業スタイルの変更やそれに伴うデジタルツールの導入を進めているんです。

コロナ前であれば、設立3年の会社が大手企業に営業するには、何度も直接会うのが常識でした。コロナがその常識を壊したことで、普通に非対面で商談することができるようになった。これをチャンスと言わずに、何と言うのでしょうか。ピンチだと捉えるのか、それとも、チャンスと見るのかによって、大きな差が生まれることの象徴でしょう。

環境変化が大きすぎて、対応できないと思われる企業もあると思います。しかし、悲観することはありません。実はこれまでも、営業活動は進化を続けてきました。例えば、大昔は営業先を決める際に、電話帳を使っていました。それが、法人企業データベースに変わり、最近では、Webサイトなどからの資料請求者や、セミナー参加者、紹介などの見込み客リストを使うようになっていますよね。

何か新しい手法を始めるときは、いつでも「ありえない」と言われるものです。最初は、資料請求者に直接営業するなんて、失礼に決まっていると考えられていました。新規開拓だけでなく、そのほかの営業のプロセスも同様に、徐々に進化してきました。営業の非対面化、デジタル化は、この2年で一気にシフトしていますが、以前からこうした進化の流れがあったことは間違いないんです。

そして、この変化は急に訪れたため、各社横一線です。デジタル化が遅れていた業界・企業でも、一気に追いつくチャンスだと思います。

営業の歩留まりを上げるKPIの実践

営業活動は確率論だというのが、私の持論です。営業先のリストアップから始まり、ターゲティング、アプローチ、ヒアリング、プレゼン(商談)の各ステップの歩留まりをどう上げていくか、その結果が営業成績となり、企業の業績になります。

各ステップの成約率を上げるためには、個人はどう動くべきか。組織的にやるとしたら、マーケティングオートメーション(以下、MA)、AIなどのテクノロジーをどう使うのか。それを考えなければいけません。

営業の確度を高めるためには、上流のリストアップやターゲティング、見込み顧客情報の管理にテクノロジーを使うほうがいい。それは、処理能力の面ではっきりしています。絞り込み、確度が上がった下流の最後の部分を、人がやればいいんじゃないでしょうか。

営業の歩留まりを上げることと同時に、売り上げを伸ばすには、営業の量を増やすことが必要です。今でも、対面営業の価値が高いことは間違いありませんが、限られた人員で対面営業の量を増やしていくことは不可能です。

例えば1週間に営業すべき企業が30社だとして、そのすべてと直接話すことは、オンラインだとしても難しいと思います。けれども、デジタルの情報を基にメールやWeb、SNSなどのチャネルを駆使して、定期的な情報の案内をするなど、テクノロジーに任せられるところは任せて、本当に自分が会う必要がある企業に絞ることで、営業先全体に対する歩留まりを上げることができるはずです。

経験と勘で営業先を決めるスタイルも、ごく一部の優秀な営業部員には有効ですが全体の歩留まりを上げることはできません。

私の会社が企業に提案するKPIマネジメントは、この改善を組織単位で行って、全体の歩留まりを上げるためのものです。ここでテクノロジーの力が非常に助けになります。豊富な母数から科学的なアプローチでリストアップ、ターゲティングしていくことが重要なんです。

デジタルを活用することでできた、いいリストを使い、情報分析によって顧客企業の課題を理解しながら、いいタイミングで提案することができます。営業個人のセンスに頼ることなく、組織全体の効率が上がります。また、顧客の満足度も上がるため、カスタマーサクセス部門の業務も、クレーム処理ではなく攻めの提案へと変わります。これらはすべて、利益率の向上につながるでしょう。

リクルート時代から実践した、営業の成功率を高める秘策

さて、優秀な営業(ハイパフォーマー)は何をしているかご存じでしょうか。実は、彼らはつねにゴールを意識して動いているんです。具体的には、時間をかけて準備し、次回の再現性を高めるための振り返りが充実しています。私はこれを成功確率を高める「G-POP(ジーポップ)」(Goal〈ゴール、目的〉、Pre〈事前準備〉、On〈実行・修正〉、Post〈振り返り〉)のサイクルと呼んでいます。

「G-POPマネジメント」の導入によってメンバー自身の「仕事の進め方のスキルアップ」やナレッジマネジメント、「現場の見える化」などが実現できる

テクノロジーはこのうち、事前準備と振り返りの部分で威力を発揮します。例えば、MAによって案件の芽を育て、事前に売るべき顧客を選ぶ。そしてタイミングを図って営業に集中する。その後、仮に失敗しても集めたデータを分析することで、次の営業に生かすことができます。

コロナ禍で、顧客の行動も、それに対する営業も、ほぼすべてデジタル情報として残っています。これらの情報をツールに取り込むことで、顧客の真のニーズを予測できるはずです。営業にとっては宝の山。使わない手はありません。

私は2010年以前のリクルート時代から、顧客の行動を知るためにデータを集める取り組みをしていました。講演に参加した見込み客に紙の製品資料を送る際も、すべてバーコードで管理して講演に用意した資料のダウンロード件数と成約率を管理していたんです。

当時は、このような仕組みを導入するには非常にコストがかかりましたし、結局は自前で開発しなければ、満足のいくものはできませんでした。しかし今は、アドビの「Adobe Marketo Engage」などのSaaSのツールを組み合わせることで、高度なデータ分析とアクションの自動化が可能で、営業活動を組織的に進化させることができます。

例えば、メールやWebサイトの情報、オンラインの広告などに顧客がどう反応しているかの情報を集め、関心事や課題を知ることができる。そこから売るべき人、タイミングを決めていけばよいでしょう。

「Adobe Marketo Engage」では社内アラートによるホットなタイミングでの通知、エンゲージメント履歴の共有により、価値ある顧客のフォローを実現できる

また、営業結果の分析から企業としての収益プロセスを可視化する機能もあります。高業績者とそうでない人の差は非常に細かい部分で、漫然と見ていてもわからないものですが、こうしたシステムを利用することで理解できるでしょう。

営業は個人の努力で突破するという考えから、まだ離れられない企業も少なくないと思います。1つ2つの案件を見れば、それでもいいかもしれません。しかし、数百件、数年の単位で見れば、組織的な情報の活用がもたらす成果は、個人の力を圧倒的に上回るでしょう。

営業の歩留まりを高める活動のために、適切なツールを導入し、情報を収集して組織で活用することで、成功の再現性を高める。このサイクルを高速で回すことで、営業の仕事は創造的になり、進化します。この観点で、自社の営業の仕組みを見直してはいかがでしょうか。

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※ KPI:Key Performance Indicatorの略。重要業績評価指標と訳される。設定された目標に達成するまでのギャップを表す、具体的な指標のこと

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