成熟産業は「感情に関わるデータ」が不足している

「人を知る」技術でひらく、ヒト中心ビジネス

近年、オンラインの顧客接点は拡大の一途をたどっている。スマホ普及によるデジタルシフトに加え、コロナ禍でオンラインへのニーズが加速したことは間違いない。そうした流れを受けて、多くの企業がECサイトやオンラインのサービス展開へと舵を切っている。しかし、リアルな「顧客体験(CX)」と比較すると、オンラインのそれはどうしても価値が損なわれるなど、新たな課題も生じている。そもそもCXはどこから生まれるのか。そしてどのように価値創造していけばよいのか。

「個客の感情」を行動データからつかむ

「リアル店舗に訪れた際、フロアで右往左往していればスタッフが声をかけ、フォローしてくれます。しかしECなどでは同じ状況だったとしても、多くの場合は放置されてしまいます」

プレイド代表取締役CEO
倉橋 健太
2005年に同志社大学法学部卒業後、楽天に入社し、楽天市場のマーケティングなどに携わった。 2011年プレイドを設立し、代表取締役CEOに就任。 デジタルマーケティングSaaS事業を展開し、2020年には東京証券取引所マザーズに上場を果たした

そう話すのはCXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」を開発・運営するプレイドの代表取締役CEOを務める倉橋健太氏だ。

いまチャットボットを用いたWeb接客ツールなど、デジタル空間における企業と顧客のコミュニケーションをアシストするサービスが増加している。非対面・デジタル化が加速し、リアル店舗における“個客”とスタッフのコミュニケーションをオンライン上でも実現し、一人ひとりの生活者が満足できる体験を提供することこそが企業にとって競争の焦点となっているからだ。

「従来のWeb接客ツールは、サイト訪問者の閲覧履歴や購買履歴など過去のデータを基にアプローチしていました。例えば『過去にこの商品をよく閲覧しているから、類似商品のバナー広告を出そう』という手法です。しかしこれでは、“ちょうどその時サイトを訪問している目の前の一人”のニーズに応え、いま欲しがっている情報を提供することはできません。つまり個客にとって重要なのは“タイミング”なんです」(倉橋氏・以下同)

「顧客視点」が企業に根付くことが導入の理由

こうした思いで開発されたのが「KARTE」だ。ユーザー情報、アクセス情報、コンバージョン情報などサイト訪問者のあらゆるデータをリアルタイムで解析・可視化し、一人ひとりのニーズを的確に把握することで、“個客中心”のコミュニケーションを可能にする。

「KARTEはサイト訪問者の行動をすべてリアルタイムにダッシュボードで確認できるため、一人の“個客”に対する深い理解を得られます。データで蓄積されていくので、何が起きているかを把握したうえでより最適な提案が可能になるのです。リアル店舗でトップセールスとして活躍している人が実施した提案が、KARTEで可視化されたデータを基にパターン化できれば、その人が同じ時間内に一人に向けてしかできなかった接客を1000人に向けてできる可能性もあります」

俯瞰した視点で、見ることができるダッシュボード画面
ここからさらに個客の個別アクションをヒストリー形式で確認し、傾向や特徴的なユーザー像を知ることができる

一般的な解析ツールではサイト内でそれぞれ「どのページが見られているか」や、「どのバナーの反応がよい、悪い」などの数値が羅列される。しかしKARTEでは、ユーザーの感情理解につながる行動ヒストリーを高解像度で映し出すのが特徴的だ。あるアパレル企業はKARTEを導入して「社員がお客様のことを考える機会が得られた」という。

「メルマガでもクーポンでも何かしらの施策を実施すれば結果は出る。でもその前に大切なのは、お客様にどのような体験を届け、どうやって幸せにするかを考えることですよね。もともと買う人がどんな買い回りをしているか、わかりづらかったECやオンラインサービスでも、KARTEを使ってお客様が見えることでさらなる成長を遂げた企業があります」

「人の感情を示す」行動データが産業変革のカギに

「感情は行動に宿る」という考えのもと、KARTEを中心にデジタルにおける人の行動データをつかんできたプレイド。マーケティング領域にとどまらず、個客中心経営を実現させるためのデータ活用の推進に乗り出している。

「データを収集→分析→意思決定をする、というデータドリブンなビジネスに注目する会社は増えています。日本では多くの業界が成熟しているため、ここからさらにビジネスを成長させるためには、人の期待・欲求・不満といった“感情”をデータで理解することが重要です」

事業開発において、“人の感情”をデータ化する重要性に気づいていない企業も多い、と倉橋氏は指摘する。だが、テクノロジーによって「感情にひも付くデータ」が把握できるようになった。加えて、成熟市場における提供価値の飽和やグローバル競争の加速、働き手の獲得競争激化に伴う環境変化等によって、その必要性は高まりを見せつつあるという。

こうした背景を受けて、2021年7月に同社はデータであらゆる産業を振興するための事業開発組織「STUDIO ZERO」を創設。メンバーは大手企業やスタートアップで事業開発を手がけてきた精鋭ぞろい。KARTEで培った資産とノウハウを武器に、企業や行政、公的機関とのビジネスの共創アライアンスで新たな事業や価値の創出を目指す。

「ビジネス×デザイン×エンジニアリング」の3領域に特化するメンバーが「目的志向」「出して学ぶ」「学びの棄却」の3つの考え方を軸として、深層課題に向かって狂気的に前進する組織文化を目指している

「個客一人ひとりにフォーカスしたマーケティングだけでなく、経営や産業自体も“人の感情”に配慮した変革が必要です。それこそが企業の存在価値を生み出し、お客様に選ばれる事業へとつながるからです。今後、SaaSやクラウドが行き渡り、業務のDXが実現した先にある次世代の産業の当たり前をつくるフェーズに移行していきますが、その時必ず個客のデータやCX戦略が求められるはず。そこで、各産業の旗印になりうる企業事例を創出すべく、企業と産業の革新を共創するSTUDIO ZEROを始めることを決めました」

すでに多数の企業や行政から引き合いがあるが、まずは21年8月に社内組織である「STUDIO ZERO」を飛び出し、三井物産との共創を目的にした新会社「.me(ドットミー)」を設立。倉橋CEOは新会社について次のように説明する。

「.meでは、カスタマーデータを基にD2Cブランドを開発する取り組みを進めています。三井物産社の素材調達力、商品開発力、小売拡販力を最大限活用し、価値開発の段階から顧客データを介在させ、個客中心のモノづくりを目指します」

顧客接点を強化するデータを基に、需要の多様性に応じる気運は高まっている。一人ひとりの“個客”に照準を合わせたビジネスが、産業に新風を吹き込む日はそう遠くなさそうだ。

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プレイドは2018年にロゴを刷新した。深層課題を追求する氷山がモチーフとなっている。オフィス内でも大きく掲げられ、社内のメンバーが理念を意識できる環境が魅力的
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