地銀とグローバル企業でグローカルな価値創造

キャッシュレスの広がり「北陸から全国」へ

政府が2025年までにキャッシュレス決済比率を4割程度とする目標を掲げる中、北陸3県を地盤とする北國銀行が、地域のキャッシュレス化に注力している。Visaデビットカードとクラウドバンキングなどを組み合わせたサービス「HOKKOKU LIFE+(北國ライフタス)」を展開するとともに、加盟店に無料で決済端末を配布。キャッシュレス決済額は年間約1000億円に成長したという。この成果の基盤となったVisaとのパートナーシップについて、北國銀行 頭取の杖村修司氏とビザ・ワールドワイド・ジャパン 代表取締役社長のスティーブン・カーピン氏に話を聞いた。

——キャッシュレス化を推進する狙いは何ですか?

北國銀行 頭取
杖村 修司氏

杖村 日本のGDPに占める北陸3県の割合は3%程度にとどまります。この地域が繁栄していくためには、量ではなく質を追求し、魅力のある地域にしていかなければなりません。

追求すべき質の1つがキャッシュレス化です。消費者の利便性を高め、先進的で暮らしやすい地域にするとともに、加盟店にとってカードと自社のシステムが連動し、決済に関わるすべてをシームレスに処理できる生産性の高い世界をつくりたいと考えています。

また、日本はマネーロンダリング対策が遅れているといわれていますが、現金決済を少なくすることが最大のマネーロンダリング対策になるので、キャッシュレス化はクリーンな社会づくりにも貢献できます。

ビザ・ワールドワイド・ジャパン
代表取締役社長
スティーブン・カーピン氏

カーピン Visaのビジョンは、世界中どこでも、いつでも、誰からも選ばれ受け入れられる決済手段になることです。

人々、ビジネス、そして経済の成長を可能にする革新的でセキュリティーレベルの高い安心・安全な電子決済ネットワークにより、世界をつなぐことがミッションです。キャッシュレス化を推進する狙いは、このビジョンとミッションに尽きます。

まだまだ現金決済の多い日本ですが、Visaの決済サービスは急速に拡大していて、その中でもとくに急速な成長を見せているのがタッチ決済です。弊社とパートナー企業が投資を進めてきた結果、この1年でタッチ決済を使用できる加盟店の端末数は約2倍、取引件数は約5倍に成長しました。

Visaのタッチ決済は、クレジット・デビット・プリペイドカードで利用可能です。とくに日常生活でのキャッシュレスを進めるうえで強力なプロダクトであるデビットカードは、現金を口座から引き出すことなく、即時に引き落とされる支払い方法で、消費者は自分で上限金額を設定することもできます。加盟店にとっても、現金を授受する手間が省けますので、デビットカードは今後、決済手段として大きな役割を果たしていくと考えています。

能登半島の先「珠洲市」でキャッシュレスが広がる理由

――現在、および今後のキャッシュレス化のニーズをどのように見ていますか?

杖村 潜在的なニーズは高いものの、キャッシュレスがどれだけ便利でよいものかを伝えきれていない面があります。

例えば、能登半島の先に位置する、人口が1万3000人ほど、65歳以上の高齢者が人口の半分を占める珠洲市では、非常に多くの方にタッチ決済をご利用いただいています。なぜかというと、2017年に珠洲市で奥能登国際芸術祭が開催された際、市長を中心にキャッシュレス化を積極的に進めて認知度が向上した結果、皆さんに便利に使ってもらえる環境が整い、利用が拡大したからです。

キャッシュレスについて「高齢者は使わない」「地方では利用されない」とよくいわれますが、これらは誤った認識です。珠洲市が証明したとおり、使い方や利便性をきちんと理解してもらえれば普及します。この成功事例をほかの地域にもどんどん広げていきたいと考えています。

カーピン 世界各国に目を向けると、多くの国でタッチ決済の普及が進んでいて、例えばオーストラリアでは、Visaの対面決済に占めるタッチ決済の割合は、9割を超えています。ほかの国や市場でうまくいった取り組みは、日本でも普及を推進しています。

ATMに頼らなくても高セキュリティーで安全かつスピーディーに支払いができ、しかも世界中で使用できるタッチ決済を消費者や加盟店が体験すれば、世界における普及拡大と同様に、日本でも浸透するでしょう。そのために、われわれは、すべてのPOS(販売時点情報管理)でタッチ決済を使用できるよう取り組んでいます。また、コロナ禍によるオンラインショッピングの増加においても安心・安全に決済していただくために、高いセキュリティーと利便性を提供しています。

地域経済の活性化を目指してキャッシュレス先進地域に

――北國銀行とVisaのパートナーシップが始まったきっかけは何ですか?

杖村 8年ほど前、カード事業の見直しのために海外の状況を調べたところ、クレジットカードではなくデビットカードが中心でした。カスタマーオリエンテッドで考えると、デビットカードがよいとの論調で、おそらくこれからはデビットカードが主流になるだろうと。そこで、Visaさんに「デビットカードを中心に展開したい」「イシュイング(カードの発行)とアクワイアリング(加盟店の開拓や管理)の両方をやりたい」とご相談したところ、驚くほどスピーディーに承認していただきました。

もう1つこだわったのが、オープンプロトコル(仕様が公開されている通信規格)です。日本は国際基準でないものをやりたがる傾向がありますが、北陸は外国人観光客が多く、国際基準のオープンプロトコルでなければうまくいきません。このポリシーに関しても、Visaさんは同意してくださり、お力を借りながらキャッシュレス化を進めてきました。

カーピン 北國銀行さんには、16年からデビットカードを発行していただいています。北國銀行さんは、地域の活性化に貢献するという明確なビジョンを持った、北陸のリーディングカンパニーで、実際、ほかの地域と比べて北陸は、Visaのネットワーク上のキャッシュレスの割合が高く、われわれにとってインスピレーションを与えてくれる、価値あるパートナーだと認識しています。

今年7月には、これまでの協働の取り組みをさらに進化させ、北陸地域をキャッシュレス先進地域にして地域経済の活性化を目指す「Super Cashless Regionプロジェクト」をスタートさせました。このプロジェクトに引き続き投資し、日本全国にキャッシュレスを広げる火付け役になることを期待しています。

――今後、キャッシュレス化を推進するうえで、どのような役割を担っていくのでしょうか?

杖村 銀行といえば、預金や貸し出し、決済などが主な業務でしたが、銀行法の改正で持ち株会社をつくれば伝統的な機能に加えて、地域総合会社としてさまざまなことができるようになりました。「Super Cashless Regionプロジェクト」や、われわれのカード加盟店だけが出店できるECサイトの「COREZO」の運営など、地域でできることをきちんとデジタル化し、トータルでキャッシュレスの普及を進めていきます。

カーピン われわれの役割は、商取引における信頼されるインフラ基盤やソリューションを提供するとともに、日本政府の目指すデジタル社会に向けて、タッチ決済やVisaデビットの普及拡大と認知度を高める活動を行っていくことです。そうすることで、Visaがよりよい決済体験を提供する存在として認識され、日本中どこでも、いつでも、誰からも選ばれ、受け入れられる決済手段でありたいと考えています。

※個別にインタビューした内容を編集し、掲載しております
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