グローバルシステム構築に見る2大敗因

「手段先行アプローチ」と「緻密さ」の罠

近年、日本企業はグローバル展開の動きを加速させている。グローバルでのデータドリブン経営によるスピーディーな意思決定を実現するため、ERPの導入・刷新を検討する企業は多い。前回の記事広告では、既存の基幹システムの刷新について解説した。今回は、グローバルでのシステム構築に関する実情と、あるべきアプローチを探る。

手段の目的化とスピード不足が課題

グローバルでビジネスプラットフォームを構築するとき、SAPに代表されるERPで経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を一元管理し、業務プロセスの効率化・標準化、システムの標準化・統合をすることは、極めて合理的な選択だといえる。しかし、過去にERPの導入に難航したり、活用しきれなかったりといった苦い経験が足かせになって、もう一度踏み出すことに苦労している企業も多い。企業のグローバルシステム構築を成功に導いてきたPwCコンサルティングの岡田信行氏は、日本企業が抱える課題を次のように考察する。

PwCコンサルティング合同会社 パートナー
岡田 信行

「第1の課題は、手段が目的化してしまうことです。本来は企業の経営戦略や施策の確実な実行を支援するために必要な「手段」を考え、導入するべきですが、「手段」つまり業務プロセスやシステムの導入・刷新、それらの標準化が目的となりプロジェクトが進んでしまうことがあります。そうなると、プロジェクトで目指すべきことが曖昧になり、迷走してしまいます。

第2の課題は、スピードです。日本の企業のシステム導入・刷新プロジェクトの計画やアウトプットそのものは、海外の企業のものと比較しても緻密で質が高いと感じます。ただし、それらの検討や合意、判断に時間がかかり、プロジェクト全体のスピードが遅くなり長期化する傾向にあるので、一度に過剰な質を追求せず、スピードを意識することは重要だと考えます」

では、グローバルにおけるシステム構築を成功させるには、何がポイントになるのか。

「グローバル全体で業務プロセスやシステムの標準化と統合を進めるには、その構築と維持(運用・保守)に相当な投資と時間が必要とされ負荷となります。それゆえ、経営戦略や施策に沿った意味のある取り組みでなければなりません。例えば、業務やシステムの集約(シェアードサービス)をリージョンごとに行うという施策であれば、そのリージョン内で業務プロセスやシステムの標準化や集約・統合を進めればいいでしょう。構築や維持に膨大な投資と時間、負荷のかかるグローバル全体での標準化、統合が最適とはいえません。

ただし、グローバルでのデータドリブン経営を目指すに当たっては、コードやデータ定義、管理指標(KPI)と、それに関わるルールはグローバルで標準化し、横串でデータ分析ができるプラットフォームを構築すべきと考えます」

さらに岡田氏は、先読みしたアクションで環境変化を乗り切る「予測型経営」や「スピード経営」が求められる時代についてこう語る。

「財務諸表などの過去のデータを分析し、それに基づくアクションをする『反省型経営』をしていては、変化に取り残されてしまいます。正確な予測データの分析に基づいたアクションをスピーディーに行う、これがデータドリブン経営の根幹と考えます」

また、グローバルでのシステム構築を効率よく進めるために、必ずしも日本の本社が一から考える必要はなく、海外やM&Aで取得した関連会社にいいものがあれば、それを活用するというアプローチもあるという。

「以前は自社の海外関連会社の業務やシステムの状況をよく把握できていない企業が多かったのですが、近年はそれが改善されてきており、日本の本社よりも海外のほうが先行していたり、いいプラクティスがあったりすることも珍しくありません。その場合、現地のシステムを活用するのも有効です」

End to Endの支援

グローバルでの業務プロセスやシステムの導入・刷新プロジェクトの現場では、実務的な課題もあるようだ。

「ERPなどパッケージシステムを活用して取り組む企業が多い中、うまく進まないプロジェクトも少なくありません。その理由はさまざまですが、よくある例として、本来考慮されるべき業務のパターンが考慮されておらず手戻りの発生や、多くの人が関わるプロジェクトの運営がうまくいかずにスケジュールが遅延し、それに伴い予算超過に陥るなどがあります。とくに海外関連会社を巻き込んだグローバルプロジェクトにおいては、日本の本社と海外拠点との意思疎通(コミュニケーション)が重要になってきます。しかし、言語の壁や日本側のリーダーシップの欠如などが起因して、うまくいかないことも珍しくなく、この点もプロジェクトが難航する大きな要因になっています」

こうしたことからPwCコンサルティングでは、新規のプロジェクトのみならず、難航しているプロジェクトの評価とそれに基づくリプランの支援も行っている。

「システムの機能や技術面の知識だけでは、クライアントを十分に支援できません。業界、業務、IT/デジタル、プロジェクト管理といった網羅的な知識とケイパビリティを併せ持って、企業の戦略から実行までをグローバルなスコープで一貫して支援できるのが私たちの強みです。プロジェクト評価の結果、目的が不明確なら、まずそこをクリアにするところから支援しますし、プロジェクト運営の改善、業界特性や業務パターンを考慮した業務プロセスやシステムの再設計・構築とその維持(運用・保守)といった実行レベルの支援も行います」

そう岡田氏が語るとおり、PwCコンサルティングが得意とするのは、「戦略から実行」「グローバル」といったEnd to Endの支援だ。

「私たちは、経営戦略や中長期計画、施策の定義から、それらを実現するための業務ルール・プロセス、システムの改革や各種方針策定、設計・構築、維持まで、ワンストップで支援ができます。また、アシュアランスや税務などの専門家との連携によってリスク&ガバナンス、法定要件対応といった領域まで手がけられることから、クライアントと信頼関係を築きながら、包括的な課題解決に貢献できていると考えています」

世界155カ国で事業を展開し、28万人以上のメンバーが所属するPwC。そのメンバーファームであるPwCコンサルティングは、単にスケールメリットを誇るだけではなく、グローバルネットワークの根幹を支える、国をまたいだ積極的なコラボレーションでも優位性を発揮している。

「グローバルプロジェクトでは、海外拠点とのコミュニケーションの質が肝になります。私たちは独立したメンバーファーム間のコラボレーション型支援体制を基本にした質の高いグローバルネットワークを十分に活かして、幅広くクライアントの支援ができるのです」

メンバーファーム間で知見を共有し合いながら、グローバル企業も強力にバックアップできるところがPwCの強み。グローバル展開を狙い、業務プロセスやシステム導入・刷新に取りかかるなら、PwCコンサルティングのようなプロの伴走を得ることで課題解決に近づけるだろう。

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