経理DX実現を阻む「企業間決済」はどう変わるか ガバナンスを担保するため必要な機能とは

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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、一気に普及したリモートワーク。しかし、経理部門をはじめとするバックオフィスでは、「紙とハンコ」問題によってやむなく出社するケースも多かった。コロナ禍の2年目も半分以上が過ぎた今、バックオフィスの状況はどう変化しているのだろうか。そして、バックオフィスのリモート化・ペーパーレス化を実現するには何が必要なのだろうか。多くの企業の現場に接しているカード会社3社と国際ペイメントネットワークの法人担当(三菱UFJニコスの石垣充隆氏、クレディセゾンの横山真一氏、UCカードの大阿久学氏、Mastercardのスタニスラフ・ドマシェビッチ[以下、スラバ]氏)が語り合った。

変わる経理業務。DXの肝は「企業間決済」

UCカード 営業第三部長
大阿久 学

――コロナ禍が長期化する中で、企業の経理部門を取り巻く環境や抱えている課題はどのように変わってきているでしょうか。

大阿久(UCカード) 経理部門の完全ペーパーレス化は現状難しいというのが実感です。

リモートワークがかなり進んでいる企業でも、経理部門は出社率が高く、かつ月末月初は必ず出社といった話を聞きます。「紙とハンコ」だけの問題ではない印象で、とくに大手企業の場合は、長年築き上げた緻密なフローがあるので、変わるのは簡単ではありません。

クレディセゾン ビジネスソリューション部 部長
横山真一

横山(クレディセゾン) コロナ禍1年目の昨年は、テレワーク環境を準備するために、PCの調達やシステムの整備などにどの企業も力を注ぎ、SAP Concurなどの経費精算システムとともに法人カードを導入し、効率化と経費マネジメント強化を進めていました。しかし今年に入ってからは、業務プロセスを含めて改革しないとDXは進展しないとの課題に気づき、改善ニーズが非常に高まっています。

石垣(三菱UFJニコス) 国を挙げてのDX推進やデジタル庁の創設(2021年9月予定)などを受けて、どの企業も「この流れについていかなければ」と考えているようですが、うまくいかないところが少なくないようです。

とりわけ壁となっているのが企業間取引の決済・請求業務です。ウェブ広告や通信費など一定の費目でキャッシュレス化が進んでいるものの、受発注や請求書のやり取りが電話やFAX・郵便などの紙ベースで動く従来型の取引はなかなか変わりません。

多彩な決済を一元管理する考え方

――コンシューマーレベルではキャッシュレス決済が進んでいますが、なぜ企業間決済では難しいのでしょうか。

スラバ(Mastercard) グローバルから見ても、企業間決済は古い慣行のまま停滞しています。アメリカでは非効率な紙の小切手の比率がいまだに高く、いかになくすかが課題となっています。日本においては、購買項目によってカード決済や自動振替、銀行振込などさまざまな方法があります。

三菱UFJニコス 営業第2本部 法人事業企画第2部長
石垣充隆

ここで重要なのは、必ずしもカード決済がすべての購買にマッチした方法ではないということです。仕入れる素材や機材の内容によっては、銀行振込のほうが適している場合もあるかもしれません。いちばん効率的な決済方法を各企業にて検討のうえ、適した決済を利用する必要があります。

石垣 企業にとって、決済は手段の1つです。カード決済ありきではなく、請求業務や経費精算業務そのものをデジタル化していく中で、業務プロセスをいかに改善していくかという観点が大事でしょう。

大阿久 とくに日本ではその見方が有効だと思っています。手形や1次卸・2次卸といった特殊な仕組みは長年かけて定着してきています。当然よいところもたくさんあるはずなので、そこを生かせる方法を考えていきたいです。

Mastercard日本地区 副社長 法人決済ソリューション統括責任者
スタニスラフ・ドマシェビッチ

スラバ 日本での展開はこれからですが、Mastercardではそうした考え方を基に構築した「Mastercard Track™ビジネス決済サービス」という企業間決済ソリューションを2019年から海外で展開しています。

端的に説明すると、カード決済のみならず複数の決済方法に優れたデータ管理機能と高度なデータ交換の仕組みによって対応し、サプライヤーとバイヤー間のB2B取引を最適化する単一のプラットフォームです。銀行振込や手形決済が含まれていても最新のPCIおよびISO規格に準拠した単一のプラットフォームで取引データを一元管理でき、今後さらに進むビジネスキャッシュレスにおいてもシームレスに対応できます。

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Mastercard Track™の概念図

横山 非常に面白いですね。サプライヤー側の観点でいえば、決済手段をすべてカード決済に切り替えると取引先全社の与信が可能なのかという問題が出てきます。現実的には、決済系統を複数持つことになるでしょうが、そうしたときにも対応できそうです。

パーチェシングカードには制御機能が不可欠

――Mastercard Track™のようなプラットフォームも魅力的ですが、購買決済においては複数サプライヤーへの支払業務を集約・管理できるパーチェシングカードもあります。

石垣 パーチェシングカードのメリットは、SAP Concurなど経費精算システムと連携しての業務効率化、経費明細の見える化によるガバナンス強化などがあります。ただ、サプライヤー側は導入メリットを感じにくいかもしれません。

大阿久 海外のグローバルサプライヤーの中には、取引先にカード決済を要求するケースが出てきました。バイヤー側の日本企業には、月間1億円以上のカード決済をしているところもあります。サプライヤーにしてみれば、資金回収リスク軽減や債権回収サイクル短縮、請求書発行業務が不要になるなどいろいろなメリットがあるわけです。さらに今後、Mastercard Track™のようなプラットフォームでデータを一元管理できれば、より戦略的な経理業務が期待できそうです。

横山 コロナ禍で伸びているのは、海外クラウドサービスの利用です。また、支払繰延機能を活用してキャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善につなげている企業も増えており、カード会社には決済以外の利用用途を踏まえた商品やサービスの提供と適正な与信管理が求められるようになると感じています。

スラバ B2B決済は高額な取引がありがちなので、不正利用防止対策という非常に重要な課題があります。与信枠が非常に大きいため、不正利用が起こると莫大な損失が発生します。そのため、取引ごとに社員の利用金額や回数をコントロールする制御機能を付与することが、パーチェシングカードの提供には必要です。

Mastercard Track™のようなデータの一元管理が可能なプラットフォームの提供もそうですが、カード決済の導入を促すだけでなく、適切かつ高付加価値な購買体験の提供をサポートすることが、私たち国際ペイメントネットワークやカード発行会社に求められるようになってきたと感じています。
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【Column】三菱UFJニコス単独インタビュー

――法人カードの概要と利用メリットについてお聞かせください。

法人カードは、大企業向けの「コーポレートカード」、中小企業向けの「ビジネスカード」、さらに近年ニーズが高まっているオンライン決済専用でカード非発行型の「パーチェシングカード」などがあります。法人カードを導入することで、各種支払業務や社員の立替・精算業務などの経費管理の効率化、経費の見える化によるガバナンス強化などが期待できます。

近年、ウェブ広告や通信費等の支払いにおいて、パーチェシングカードのニーズが増えていますが、導入にあたりセキュリティがネックとなるケースが多くありました。こうしたご要望に対応すべく、今年4月にパーチェシングカードの子カードとして「三菱UFJカード バーチャル」をリリースしました。「三菱UFJカード バーチャル」は、カード番号ごとに利用回数や金額、期間等の条件を設定できるので、安全でより高度な経費コントロールを実現します。

法人カードと経費精算システム「SAP Concur」を連携させるメリットは?

「三菱UFJカード バーチャル」は、利用日・利用先・金額といった従来のカードの利用明細データに加え、請求書番号や社員番号、プロジェクト名称等を自由に設定し、SAP Concurに連携可能です。あらかじめ経費処理に必要な情報を設定しておくことで、請求内容の特定や仕訳業務の効率化が可能となります。

―貴社の今後のビジョンを教えてください。

ニューノーマルの浸透やDX、ペーパレス等、企業を取り巻く環境変化への対応や業務プロセスの改善といった多様化する諸課題に対し、決済ソリューションの提供を通じて課題解決を実現し、企業の成長をサポートできるよう取り組んでまいります。

「SAP Concur Fusion Exchange 2021」に向けての意気込みをお聞かせください。

オフィシャルスポンサーとして4年連続で参加させていただきます。これまで数々の企業様のサポートを通じて得た知見や、さまざまな企業のニーズにお応えして業務改善をサポートした事例をご紹介しますので、ぜひご参加ください。
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間接費領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)で変わる企業戦略や革新的なワークスタイルについて、基調講演や事例セッションを通じ、ご参加の皆様と共に考えます。

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