会社でも個人でも「動画人材」が重宝される理由 ファイナンスや語学に次ぐ、必須のスキル

「動画人材」が今、求められる理由
「動画広告などが隆盛となる今、動画制作スキルを持つ『動画人材』へのニーズが高まっている」と語るのは、仕事のオンラインマッチングサービスを展開するランサーズのチーフエバンジェリスト・根岸泰之氏。
映像クリエイティブ制作を行う「動画人材」は、ランサーズに登録するランサー(ワーカー)のうち、2019年と20年の4月単月だけを比べても499%の増加。すべての業種で1位の伸び率というから驚きだ。この背景には、動画市場の盛り上がりがあると根岸氏は言う。
「ここ数年のWebコンテンツの充実は、目覚ましいものがありました。ECサイトやマーケティングに力を入れる企業は業種を問わず、増加しています。文字情報だけではなく、写真やイラスト、動画を活用して読み応えのあるコンテンツを作成して情報発信するようになったんです。とくに動画は、レシピや親しみにくいサービスに有効で、プラットフォームも整備されてきましたからニーズは高まっています。コロナ禍でネット利用者が増加していることもあり、現在は動画市場がさらに勢いを増しています」(根岸氏、以下同)

根岸泰之氏
消費者人口の大半を占める働き世代のリモートワーク化によって、情報やエンターテインメントのオンライン化は進み、Webコンテンツのニーズも高まっている。まさに今、市場が旬な時期を迎えた「動画人材」は多くのチャンスに恵まれるだろう。こうした中では、とりわけフリーランスや副業として「映像クリエイティブ」に従事する人が増加している点に注目したい。
営業職は「スーパークリエイター」になれる
動画は「あくまでも見るもの」で、他人事に感じる人もいるかもしれない。しかし、現代ではスマホを使えば動画の撮影から加工までの編集ができ、若い世代に限れば、これらの作業がまったく想像つかないという人はむしろ少ない。実は、こうしたちょっとした経験が副業として「動画人材」になりうる可能性を秘めている。
「副業は場所や時間を選ばないことが重要なので、エンジニア、イラストレーター、ライター、Webデザイナー、レタッチャー(画像加工)、映像クリエイターなどがピッタリです。ただし、エンジニアはプログラミングに興味がない人にとってはハードルが高い。イラストレーターやライター、レタッチャーの人材はすでに豊富。さらに付加価値を高めようと、それぞれのスキルを掛け合わせて職域を広げるケースが増えています。その中で穴場なのが映像クリエイター、つまり動画人材です」
動画人材は、Webコンテンツのリッチ化が進んでいく潮流から考えて、今後も需要の増加が見込まれる。これからスキルを身に付けるにはうってつけだ。
「動画制作に関する案件は、テロップを付けるなど比較的ライトな案件から、動画素材を1つの制作物にまとめる本格的な案件まで幅広いです。

類似のカテゴリーにグラフィックデザインが挙げられますが、編集ソフトの扱い方やスキル、センスなどを総合して考えると、早く仕事をスタートできるのは動画だと思います」
現在ランサーズで活躍する動画人材の中には、年収1500万円を稼ぎ出す人も。とはいえ動画編集の経験がないと、ハードルが高いと感じてしまうかもしれない。だが根岸氏は、最も重要なのはクライアントの課題をつかむことで、クリエイティブのセンスは後からついてくると話す。
「動画制作のほとんどは広告案件です。もちろん案件の種類は多岐にわたりますが、共通しているのは『何らかの課題を持っていて、それを解決しようとしている』ということ。その点、営業やマーケティングなどのビジネス職でキャリアを積んだ方は、クライアントの本質的な課題をつかみ、課題解決方法を提案するスキルが身に付いています。例えば、売れっ子営業マンがクリエイティブのスキルを身に付けたら、絶対に“スーパークリエイター”になれます」
誰に何を届けたいのかを踏まえて、動画にアウトプットすることが重要ということだ。現在それができる動画人材の希少価値は高い。このスキルを持つ人が動画編集ソフトの使い方や表現方法を学んだら、そうとう強いだろう。
「見切り発車」が副業を成功させるカギ
動画制作に興味はあっても、何から始めたらいいかわからない人もいるだろう。根岸氏のおすすめは、インプット(スキルの習得)とアウトプット(制作)の回転速度を上げることだという。
「じっくり時間をかけてインプットして、自信をつけてから案件を見つけてアウトプットするのではなく、インプットとアウトプットを素早く回しながらステップアップしていく。私が知る範囲で、フリーランスや副業として成長していく人の多くは、『とりあえず作り始めちゃえ』と見切り発車している人です。制作を開始すると作り終えないといけませんから、必死に取り組みます。それを繰り返していると、おのずとスキルが身に付き、さらに仕事も受注できるようになります」
逆に言えばアウトプットしないと、どこがレベルアップして、何がまだ足りないのかに気づけない、と根岸氏。例えば、コンペ形式で案件を採用している、ランサーズのようなクラウドソーシングで腕試しするのも手だろう。

「動画制作に欠かせない『Adobe Premiere Pro』の機能は日々進化しており、飛躍的に使いやすくなっています。AIによるサポートも充実しているので、動画編集に細かい作業が必要だと二の足を踏んでいる人は、試しにソフトを動かしてみると目から鱗が落ちる。人間を細かい作業から解放し、人間にしかできない発想力や想像力を生かせるように機能のアップデートが進んでいます」
数分の動画制作から本格的な映画制作者まで、映像に関わる多くの人に選ばれている「Adobe Creative Cloud」のコンプリートプランなら、「Adobe Premiere Pro」も定額サブスクリプションで利用できるので、初期投資を抑えたい初心者も安心だ。

「動画制作はクリエイティブな行為ですから、ワクワクしながら楽しめるのが魅力。また、アウトプットした動画の再生回数が多かったり反響が寄せられたりすると、素直にうれしいものです。誰かに喜んでもらえることで、自分の存在価値や仕事のやりがいを感じられるはずです」
「ハードルが高そうだ」と足踏みせず、まずはできる範囲からトライしてみることが大事だ。インプットとアウトプットを繰り返しながらスキルを磨き、その過程で自分らしいやり方をつかむことができれば、長期的なキャリアを描けるだろう。競争が激化する前に、頭一つ抜ける動画人材になるためにも、早めにスキルを磨いておきたいところだ。