インフラ、ビジネスの脱炭素化をトータル支援 戦略立案から事業化までをサポート

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建設コンサルタントのパシフィックコンサルタンツは2021年6月7日、同社グループの脱炭素経営への姿勢を示す「Pacific Net Zero」を宣言した。企業のカーボンニュートラルを支援する「カーボンニュートラル推進支援サービス」の提供も始まっている。そこにはどのような狙いがあるのか。

脱炭素化の要請が高まる中、グループの姿勢を示す

パシフィックコンサルタンツが宣言した、脱炭素経営 「Pacific Net Zero」は、大きく2つの柱で構成されている。1つは、「2030年までに同社グループの温室効果ガス排出量の実質ゼロを実現する」こと、そしてもう1つは「2050年までに日本の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることに貢献する」ことだ。

代表取締役の重永智之氏は、宣言の狙いを次のように語る。

代表取締役
社長執行役員
重永 智之

「当社は1980年代から業界でもいち早く気候変動対策のコンサルティングを始め、脱炭素化に関連する事業領域を拡大してきた。脱炭素化の世界的な潮流を踏まえ、改めて当社グループの姿勢を発信するとともに、本業を通じた社会インフラや顧客ビジネスの脱炭素化、そしてその先の『サスティナブルな社会』の実現を加速するという強い意志を込めて、今回の宣言を発表した」

まさに満を持してといったところだが、同社独自の強みは何なのか。

「当社では、あらゆるインフラについて、国の政策に精通しつつ、実際の事業の計画から設計・施工・維持管理までの現場実装をワンストップで支援できる」(重永氏)

道路・鉄道・空港・ゴミ処理施設などの脱炭素化はもちろん、モビリティ変革と脱炭素化との同時解決や、DXも絡めたスマートシティ形成なども視野に入れる。再エネ主力電源化の切り札である洋上風力発電では、NEDO※1が公募した「洋上風力発電の地域一体的開発に向けた調査研究事業」で同社グループの提案が採択された。

※1 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
 

同社グループ内には、自治体新電力を手がけるパシフィックパワーや、民間企業のTCFD※2対応を支援するグリーン・パシフィックなどの関係会社もそろっている。

※2 金融安定理事会が設立した気候関連財務情報開示タスクフォース
 

「炭素排出型のインフラにロックインされないよう、都市や地域のあり方を長期的な目線でトータルデザインする総合力が問われている。まさに、長年インフラを相手にしてきた当社グループが力を発揮できるテーマだ」と重永氏は自信を見せる。

企業の「カーボンニュートラル推進支援サービス」も開始

宣言に先立ち、21年3月には、企業をターゲットとする「カーボンニュートラル推進支援サービス」を開始した。

同サービス室長の井上裕之氏は次のように語る。

社会イノベーション事業本部
環境・エネルギー部
カーボンニュートラル推進室
室長
井上 裕之

「再エネ調達に企業の関心が高まる中、電力システム改革は過渡期を迎えている。当サービスでは、PPA(電力購入契約)のスキームなども含め、その時勢に応じてお客様ごとに適切な方法を判断し提案していく」

先行するEU諸国の動きから、今後、単に手頃な太陽光発電を導入するだけなどの安易な対応では、投資家をはじめ人々の理解が得にくくなると予想される。そこで同社では、環境分野の技術力や自治体とのコネクションを生かすことで、CO2削減効果や採算性に加え、自然環境や安全面にも十分配慮し、地域と共生できる質の高い再エネの導入を支援するという。

「企業のネットゼロ※3実現には、再エネ導入だけでなく、省エネを含むエネルギーマネジメントも欠かせない。当社の強みであるマイクログリッド構築や、子会社パシフィックパワーとの連携による電力ネットワークサービスの展開も提案・支援していく」(井上氏)

※3 温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いて実質ゼロを達成すること
 

同社理事で、環境分野に長く携わってきた梶井公美子氏はこう語る。

理事
社会イノベーション事業本部
副本部長
梶井 公美子

「当社は、環境省をはじめ国の政策立案支援にも携わってきた。その調査分析力を生かし、SDGsやESGに関する国内外の最新動向をつねにキャッチアップしている」

このため、企業のカーボンニュートラルを戦略立案から現場実装まで一気通貫で支援できるほか、金融や保険などの他業界とも積極的に協業し、全方位から脱炭素化をサポートしていくという。

「個々の再エネプロジェクトなどにおける単発的なエンジニアリング支援に限らず、会社全体の脱炭素化戦略について、『どのようなロードマップを描けばよいか』『どこから手をつけたらよいか』という段階からご相談いただければ、当社のサービスのうまみを存分に感じてもらえるのではないか」(梶井氏)

急務の脱炭素化こそ、1からプロと組むメリットがありそうだ。