夏目漱石も唱えていた「自粛する日本人」への異論 今の政治と照らし合わせて考えたい言葉たち

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1000円札にも刻まれ、日本人なら誰でも知っている夏目漱石が問題提起したこととは?(写真:masamasa2/PIXTA)
天皇、皇族から政治家、作家、歌手、運転手や無名の庶民にいたるまで。1月1日から12月31日まで、1日1つの政治にまつわる文章から、この国のいまについて考える原武史氏の著書『一日一考 日本の政治』
SNSを通じて様々な人の様々な政治に関する発言に簡単にアクセスできる現代。一度歴史を遡って、今日の日本の政治のあり方を考えると面白い発見が得られるかもしれない。
「7月1~7日、歴史に埋もれた政治めぐる『名言7選』」(7月1日配信)、「奈良時代の日本『政治的責任』の概念があった証拠」(7月8日配信)に続いて、本日7月15日から21日までの1週間にちなむ、歴史上に残された政治にまつわる言葉をお届けする。

総動員体制と婦人問題

7月15日
坂口弘(さかぐち・ひろし/1946‐ /連合赤軍中央委員会書記長、「あさま山荘事件」の中心メンバー)

私の念頭にあったのは、第二次大戦時のフランス・レジスタンス、マキの経験である。以前ある本で、ドイツ軍の占領に対し、仏共産党指導下の抵抗組織マキが、山岳に立て籠もってパルチザン戦争を行った記録を読んだことがあった。私はこれを想い出して、山岳が使えるのではないかと思ったのである。<『あさま山荘1972』上(彩流社、1993年)>

新左翼のセクトの一つである「京浜安保共闘」(日本共産党(革命左派)神奈川県委員会)に属していた坂口弘は、71年2月に栃木県真岡市の銃砲店を襲撃して永田洋子らとともに指名手配された。捜査網が敷かれた東京にいるのは危ないと判断した坂口は、第二次世界大戦中にフランスで組織された「マキ」を念頭に、山岳地帯にベースを設けることを提案した。京浜安保共闘は奥多摩や山梨に山岳ベースを築き、共産主義者同盟赤軍派と合流して同年7月15日に統一赤軍(後の連合赤軍)となった。

7月16日
山高しげり(やまたか・しげり/1899‐1977/婦人運動家、参議院議員)

…私は、むしろ国家が労働力の不足を女子に於て代替したいとお望みになりますならば、さうして決戦段階に於て所要の員数だけを女子に於て得たいとお考へになりますならば、躊躇なさるところなく未婚女子の徴用を御断行願ひたい。女子々々と申しましても、未婚と既婚では非常にその立場も違ひますので、私が女子徴用を活用せよといふのは未婚女子でございます。<「第四回中央協力会議会議録」(鈴木裕子『フェミニズムと戦争』、マルジュ社、1986年所収)原文では「躊躇なさる〜御断行願ひたい」まで傍点。」>

1943(昭和18)年7月14日から16日まで、大政翼賛会第4回中央協力会議が開かれた。この席上、大日本婦人会の理事だった山高しげりは、当局側に未婚女子の徴用の断行を迫った。時の首相、東條英機は、女子の徴用は日本の家族制度を破壊するという理由から行わないと言明していたが、山高は未婚女子を徴用するとともに、国家が工場や事業所に母性保護のための福利施設を設けるよう求めた。山高の目には、総動員体制が従来の婦人問題を一挙に解決させる好機と映ったのだ。

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