光、風、香り、パナソニックの最新オフィスの凄さ

コロナ後は「オフィス」で企業の強さが変わる

外に開かれたミーティングスペース。上部の梁(はり)のような薄い板上の機器から下方に向けて風が出ており、心地いい香りを出すだけでなく、ダウンフロー気流を生み出し感染対策にも一役買う
「コロナ後」を見据えて、オフィスのあり方を見直す企業が増えてきている。感染対策も気にしたいが、そもそも人間が過ごしやすいオフィスとはどのような空間なのか。近年、各国で導入が進み、注目度が高まっているのが米国発の「WELL認証」と呼ばれる評価システムだ。パナソニックも取り入れているという、「人間の心と身体の健康」の視点を取り入れたオフィスとは――。

「人の健康」を考えたオフィス

「WELL認証に関心があり、当社のworXlab(ワークスラボ)を見学したいというお問い合わせを多数いただいています。12月のオープンからほぼ毎日予約が埋まっています」

パナソニック ライフソリューションズ社(以下、パナソニック)の村上昌史氏はそう話す。WELL(ウェル)認証とは、米国のDelos(デロス)社が開発した認証制度だ。特長は、空間のデザイン・構築・運用という従来の考え方に「人間の健康」という視点を加え、よりよい住環境の創造を目指したオフィス空間の評価システムであることだ。

これまでも働き方改革の推進に伴い、オフィスという空間づくりへの意識は高まっていた。「ただし、その多くは、人の活動するスペース、動線などにとどまっていました。コロナ禍により、利用者の健康を視野に入れた安心して利用できる建物であることが求められるようになってきています」(村上氏)。

パナソニックライフソリューションズ社
空間ソリューション事業推進部
主幹
WELL AP
村上 昌史

WELL認証は2014年に始まり、20年には評価項目や基準が見直されたバージョン2(WELL v2)がリリースされた。WELL v2は「空気」「水」「食物」「光」「運動」「温熱環境」「音」「材料」「こころ」「コミュニティー」という10個のコンセプトで評価される。それらの評価を基に総合得点によってランク付けされ、プラチナ、ゴールド、シルバーの3種類に分かれる。それとは別に、新型コロナウイルスに機動的に対応できるようにした「WELL Health-Safety Rating」認証も設けられている。これは感染症や災害などの緊急事態対策に特化したものだ。

「認証を受けるためには、必須項目や加点項目を満たす必要があります。WELL認証取得を目指す過程を通じて、企業が自社の社員の健康のためにふさわしいオフィスとはどのようなものかを考え直すきっかけになるのではないでしょうか」(村上氏)

21年4月時点でのプロジェクト登録数は、WELL v1とv2で9547件、WELL Health-Safety Ratingが1万2164件に達している。日本でもこの数字は年々伸びており、コロナ後に従業員が安心して働けるオフィスという観点で考えると、さらに注目度は高まりそうだ。長い目で見ても、SDGsやESGの観点でも評価されるようになるだろう。

光、風、香りで集中力を刺激

実際にWELL認証を受けた建物にはどのような特色があるのか。パナソニックは2021年に自社オフィスである「システムソリューション開発センター」(大阪・門真市)と、同社が共同出資するコワーキングスペース「point 0 marunouchi」(東京・千代田区)において、WELL v2 pilotのゴールド認証を取得している。

さらに、21年3月には、パナソニック東京汐留ビル(東京・港区)内のライブオフィスworXlabでは、WELL Health-Safety Ratingを取得した。

WELL Health-Safety Ratingの認証マーク。これがこれからの安心の証しになりそうだ

worXlabはその名のとおり、「『働く』を実験する」をテーマにした施設だが、単なるショールームにとどまらず、実際に同社の社員が働いている「ライブオフィス」。安心・安全なオフィスであることはもちろんのこと、サテライトオフィスや在宅ワークとの連携を含め、多様化するワークスタイルに対応している。ポイントは、建物起点ではなく人起点ということ。ワークプレイス空間の価値を最大化し、働きやすさや居心地のよさを追求し、その結果、生産性を向上させることまでを目指している。

実際に訪問してみると、エントランスからそのコンセプトが表現されていることがわかる。ドアのすぐ横にはフロア内の人の密度や空気の質を可視化したディスプレーがあり、オフィス内の状態が一目で把握できるのだ。入ってすぐのサイネージにもエリアごとの人数が表示されていて、密を避けて好みの席を選ぶことができる。

エントランスにあるディスプレー。入る前にオフィスの状態を確認できる。体温が規定値内で、マスクを着用していればオフィスに入れる(写真左下)が、マスクをしていないとドアは開かない(写真右下)。また同時にマスクをしたまま顔認証もしており、登録していない人物を入れないようにすることもできる

注目すべきは随所で導入されている、「光」「空気」「音」「香り」「映像」などの演出だ。リラックスできる休憩スペースでは、指向性スピーカーを用いて、ピンポイントで鳥のさえずりや川の音が聞こえる。指向性なので、集中的に作業したい人の邪魔をすることはない。人工的に木漏れ日まで表現されており、視覚的にもリフレッシュを助けてくれる。

一方、パーソナルスペースで演出されているのは「風」や「香り」。と聞くと、疑問を持つ人もいるかもしれない。むしろ、気が散らないのか、と。だが、実際に体験してみると、やわらかな気流が心地よく、ミントや柑橘系のアロマによる香りで、気分も爽快になる。「光や風、香りなどを用いることで人間の集中力を刺激するというエビデンスもあります」(村上氏)という言葉は納得だ。

モニターとカメラを設置した会議室。光、空気、音、香り、映像を駆使し、没入感のある空間をつくり出す

新しい働き方を念頭に置いていることもあり、worXlabのほとんどのゾーンがフリーアドレスのオープンスペースになっている。ただ、それもどうぞお好きな席に、というわけではない。

空間の目的ごとに照明の色やBGMを変えて集中ゾーンやカフェゾーンに分けたり、外からミーティングゾーンのディスプレー映像を見えなくする偏光フィルムを採用したパーティションを設置したりと、最新技術を随所に取り入れて工夫をしている。その日の気分と業務内容に合わせて席を決めれば、モチベーションも維持できそうだ。

光の色を変えることで、例えば同じ空間でも電球色はミーティングゾーン、昼白色は作業ゾーンという使い分けも(写真上)、日によってはすべての空間を同じ色にもできる(写真中)。一方で、集中ゾーンとしたい場合にはスポットライトにすることも可能(写真下)。写真では暗く見えるが、個人の手元は作業に支障のない光量が確保されている

コロナ対策を意識した空気環境にもしっかりと気を配っている。

「館内では、天井のルーバーからのダウンフロー気流によりエアロゾル対流を抑制するエアリーソリューションを導入しています。さらに人の増減に応じて、タイムリーにフロア全体の換気量を制御していますし、会議室では会議終了後、自動的に次亜塩素酸による除菌も行われます」(村上氏)

安心感を与えてくれる機能だが、過剰に実施されることはない。パナソニックというメーカーらしく、センサーでリアルタイムにデータを収集し活用しているからだ。

「フロア内には200個以上のセンサーデバイスを実装し、CO2濃度、気温・湿度、機器やスペースの稼働データなどを常時取得しています。さらに社員や来訪者などすべての方に位置情報や脈拍などを測定できるデバイスを装着してもらっています。将来的には会話の量などから、コミュニケーションの活性度合いや質などを解析したいと考えています」(村上氏)

データを収集していれば、オフィスの新しい使い方を思いついたときにも、有効なエビデンスとなりうる。

さまざまなセンサーをオフィスに実装し、オフィスに入る人はビーコンを持つことになる。これらによって多くのデータを収集し、活用している

オフィスを企業の「強み」に

パナソニックといえば誰もが知るメーカーだが、WELL認証に関してはコンサルティングサービスも手がけている。「当社の知見を生かし、お客様のWELL認証取得を支援しています」(村上氏)。

前述のとおり、同社自身が複数の施設でWELL認証を受けているが、実はデロス社が運営する空間健康分野のリサーチセンター「Well Living Lab」の創設メンバーとして、コロナ禍以前の2017年から活動している。また、村上氏をはじめ、また、複数の社員が、WELLプロジェクトの認証取得支援を行う人向けの専門資格であるWELL AP(WELL Accredited Professional/認定プロフェッショナル)を取得している。

WELL認証の注目度が高まるにつれ、国内でも認証取得を支援するコンサルティング会社がいくつか誕生しているが、パナソニックの強みは設備メーカーとして知見・ノウハウを生かした診断・アドバイスができることだ。適切な空間改善も含めて、調査から提案、認証取得、さらにはメンテナンスまで、トータルサポートが可能となっている。

コロナによって多くのビジネスパーソンがオンラインの手軽さを実感する一方で、対面の重要性を再認識している。よりよいオフィス環境を実現することで、生産性の維持・向上とともに、社員や利用者の健康を向上させたいと考えるのは理にかなっているだろう。それは、企業の強みの1つになるからだ。

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