日本アイ・ビー・エム

企業でDXが進まない「構造的な理由」とは何か

ポイントはノウハウ、サポート力と「経費精算」

ビジネスの一大トレンドとなっているDX(デジタル・トランスフォーメーション)。もはやまったく意識していない経営者やビジネスパーソンはいないだろう。一方で、さまざまな施策を打ちながらうまく推進できていない企業も多い。その原因は何なのだろうか。そして、いかに解決すればいいのか。多くの大手企業でDX推進を成功させてきた日本アイ・ビー・エムの松本直也氏に話を聞いた。

「変わりたくても変われない」企業のジレンマ

今や、企業経営に不可欠となっているDX。しかし、組織変革やテクノロジーの活用において、障壁にぶつかるケースもあると指摘されている。喫緊の課題として取り組んでいるはずなのに、進まない――このジレンマの背景には何があるのだろうか。大手企業のDXサポートに実績豊富な日本アイ・ビー・エムの松本直也氏は、「テクノロジーの進化によって、ビジネス環境がより複雑に、より早く変化するようになり、従来の企業運営の能力を超えている」と指摘する。

日本アイ・ビー・エム株式会社
グローバル・ビジネス・サービス事業本部 ビジネス・トランスフォーメーション・サービス パートナー SAP会計担当
松本直也

「現在、かつてない不確実な時代を迎えています。それをもたらしたのはテクノロジーですが、進化そのものよりも、浸透したことが大きいでしょう。誰もがモバイルデバイスを持ち、SNS経由で情報が瞬時に飛び交う世界となったことが、複雑かつ変化の速さの要因となっているのです。コロナ禍でこの構図はより明確になりました」

確かに、スマートフォンやAIスピーカー、IoT家電などがある風景は日常のものとなった。生活様式は最先端テクノロジーをベースとしたものへシフトしたのである。当然、企業も同様に変化していかなくてはならないが、うまく対応できていないケースがある。そのギャップが、DXの遅れという形で顕在化しているのだ。

では、なぜ企業は変化に十分に対応できないのか。1つは、旧来の手法が確立されていたということがあろう。長年取り組んできたマネジメント層は、その手法のスペシャリストであり、急激にシフトチェンジをするのは難しい場合がある。

「どうしても新たなテクノロジーに沿った考え方が深めきれませんし、そうした知見を持つ人材の育成も追いついていません。その状態で、今まで活用したことのないテクノロジーを用いたビジョンを描いたり、具体的な施策を打ったりするのは難しいでしょう」

変化に対応するには、ビジネスモデルの抜本的な改革に加え、業務フローや組織文化、働き方、それらを支える社内インフラや各種システムまで変えていかなくてはならない。

しかも、それを検討している間にも世界はどんどん変わっていく。知恵を絞り戦略を練っても、いざ実行しようとしたら通用しないということもある。“変わりたくても、そのために努力を重ねても、変われない”、そんな悩み深き状態に陥っている企業が少なくないのだ。

全従業員が絡むから「DXの原点」にできる

こうした閉塞状態を打破し、DXを軌道に乗せるにはどうすればいいのか。松本氏は「まず経費精算の領域から取り組むべき」と提言する。

「経費精算からDXを進めるべき理由は2つあります。1つは、従業員全員が関わる領域だからです。1人も取り残すことなく、社内の誰もが成果を実感できますので、『DXの推進で得られるメリット』を一気に伝えることができます。しかも、変革に欠かせない『勘所』と『ノウハウ』を全社一斉に習得できるのです」

どのような改革でも、まず第一歩として意図や狙いを組織内に浸透させなくてはならない。通常は非常に手間のかかるプロセスだが、経費精算ならば誰もが“自分事”として取り組むため、浸透のスピードが早い。「次も同じようにやればいい」「経費精算ではうまくいったのになぜこの領域ではうまくいかないのか」といった具合に、他領域で広げていく場合も「DXの原点」とすることができる。つまり、スモールスタートながらDXのノウハウを着実につかむことができるというわけだ。

「もう1つの理由は、リスクが低いことです。ビジネスのコアな部分を変えようとすると失敗したときのリスクが高いですが、経費精算は失敗してもまだリスクは小さいです。加えて、利用者として営業部、バックオフィスとして経理部、人事部、総務部が関わるように組織横断的なプロセスが組み込まれていますし、システムインテグレーターや業務代行のアウトソーサーなどさまざまなステークホルダーも関わってきます。リスクが低いのに成果がクイックに得られる領域であると同時に、ある程度の複雑さがあり、最先端のテクノロジーを活用したソリューションもありますので、DXを推進しようとするときの『1番バッター』として最適なのです」

実際、松本氏はDXという言葉がまだなかった頃から経費精算領域からデジタル変革をスタートさせる意義に気づき、経費精算・経費管理クラウドシステムのコンカーと日本アイ・ビー・エムのコラボレーションを主導。2016年から導入サポートを展開している。その効果は大きい。

「紙や表計算ソフトで行っていた入力や伝票チェックといった作業がなくせますので、ほとんどのお客様は業務コストを3割から5割くらいは削減できています。導入完了の翌月に30%の工数削減を達成した事例もあります

統制ルールを設定できるため、経費の適正化を促す効果もある。出張コストは平均して2割程度の削減効果が出ているという。

「直接材は購買部がきっちり管理していても、間接費用は管理部門が決まっていないことがほとんどです。限度額や規定グレードを超えた航空券やホテルの利用ができないようにするなど、購買ポリシーを設定するだけでかなりのコスト削減につながります。また、コンカーに溜まったデータを活用して不正検知もできますので、コンプライアンスを高める効果も期待できます」

コンカーを導入していたことで、コロナ禍でも容易にリモートワークへ移行できた企業が多い事実も見逃せない。

「とくに最近、高評価をいただいているのが請求書モジュールです。請求書はさまざまな取引先から紙で届きますので、そのためだけに出社して入力しなければならないことも多かったのですが、高精度なAI OCRで読み取り自動処理できるソリューションとも連携することで、リモートワークでも請求書処理が効率的にできるようになっています」

DXで発生する労使交渉のノウハウまで提供

一方、コンカーがSaaS型ソリューションであることに不安を抱く人もいるだろう。松本氏も次のように話す。

「日本企業では、たとえパッケージのソフトであっても自社用にカスタマイズするのが一般的です。そうすることで、なかなか決着がつかない組織内の部門同士の話し合いに、システム仕様を合わせることで妥協してきた面もあります。しかしSaaSは、簡単に導入できて運用の負担は軽いのですが、独自の開発は基本的にできません。そのため、情報システム部門が関われる部分が少なく、結果的にSaaSの知見を持つ人材が不在ということも珍しくないのです」

そうした実情があるからこそ、日本アイ・ビー・エムのサポートは強みを発揮する。松本氏は、3つのポイントを挙げた。

1つは「プロジェクト管理」。顧客側でプロジェクトマネジャーを担当するのが情報システム部門ではなく、プロジェクト管理の経験が十分でない経理や人事部門であることも多いため、その右腕として実務面をサポートする。コンカーは3カ月から6カ月程度と短期間で導入可能だが、短期ゆえにさまざまなトラブルに対する軌道修正を、コンカー導入の経験と知見を生かして迅速に行わなくてはならないのだ。

もう1つは「サービスのインテグレーション」。変化が激しく、ニーズが複雑多様化してきた今、業務システムも「これ1つを入れれば大丈夫」という時代ではなくなった。コンカーや前述のAI OCRなど、さまざまな要素や技術を適切に組み合わせることが大切になってくる。そうなると、それぞれに精通している必要があるため、インテグレーションのノウハウが欠かせないのだ。まとめ役として顧客企業から受けている期待は非常に大きく、ベンダーとの間に立って「翻訳者」の役割を担ってほしいと依頼されることも多いという。

3つ目は「業務改革」。従来のように、企業が個々の業務内容に応じてシステムのカスタマイズをするのが現実的ではなくなった今、業務側を変えなくてはならない。そこで多数の大手企業をサポートすることで培われた日本アイ・ビー・エムのノウハウが生きてくるという。具体的にはどのようにアプローチをしているのだろうか。松本氏は次のように説明する。

「現在やっていることに言及するのではなく、『コンカーを活用すると業務スタイルはこう変わる』と説明します。難しいのは、実際に業務スタイルを変えていくプロセスです。例えば出張日当の支払いを変えるには、人事規定を変えなければならないので労使交渉が必要となります。交渉のロジックや他社の取り組み事例などのほか、数十社の人事規定を調査・分析した結果までノウハウを文書化していますので、それを提供することでお客様企業の変革を後押ししています。もちろん導入時だけでなく、稼働後もデータ活用法を含めた業務改善のサポートに力を入れています」

自動化を前提とした業務フローの確立へ

SaaSを含めたあらゆるソリューションを取りまとめて最適化し、導入から稼働後の運用まで一気通貫のサポートを実施する日本アイ・ビー・エム。現在、新たな業務システムのあり方として提唱しているのが「インテリジェント・ワークフロー」だ。

「従来の業務システムは個々の業務に対応する部門最適型でしたので、例外処理などは人の力が必要でした。しかしそれでは、スピーディーな対応は困難です。今後は、すべての業務を組織横断的につなぐ業務フローをシステム化することが求められます。もちろんそれを人の力だけで管理・運用することはできませんので、ルールやプロセスを自動化するとともに、社内外の大量なデータに基づき、例外処理もAIで自動判断させましょうというのが『インテリジェント・ワークフロー』の考え方です」

自動化できるものを自動化し、人が判断すべきものは最小限にすることで迅速かつ効率的な業務が可能になるというわけだ。まさにコンカー導入による経費精算自動化がもたらす効果を最大化したものといえよう。

「テクノロジーの進化が組織や人の能力の限界値を超えようとしている今、AIのサポートを受けながらスピードと効率を両立させた業務フローの構築は欠かせません。その入口として、DXの1番バッターに最適な経費精算の取り組みを生かすのがベストプラクティスだと確信しています

DX推進に最適な条件が整った経費精算からスモールスタートし、着実にノウハウを獲得しながら自前で進めることにこだわらず、日本アイ・ビー・エムのようなエキスパートのサポートを受けながら次世代の業務フローをつくりあげていく。これが、失敗も負担も少ない理想的なDXのフレームワークとして定着する日は近いのではないか。
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