いま私たちが直面する「働き方パラドックス」とは 「ハイブリッドワーク」実現のための必須条件

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コロナ後の働き方として「ハイブリッドワーク」が注目されている。これはオフィス勤務とリモートワークを併用することを指すが、柔軟な就業規則を用意すれば終わりというものではない。ポイントは、オフィスに出社している人と、在宅を含めリモートワークを行っている人とのコラボレーションを最適化して、従業員一人ひとりが満足に業務を行える環境を提供することで、組織全体の生産性を向上させることにある。ワクチン接種が進み、オフィス回帰が始まっている米国では、この課題に取り組み始めている。

欧米企業の70%がハイブリッドワーク導入へ

米CDC(疫病対策予防センター)は、5月にワクチン接種完了者のマスク着用義務を解除した。“脱ステイホーム”が加速しており、オフィス勤務を復活させている企業も多い。

しかし、完全にコロナ前の状態に戻ることはない。ジェトロ(日本貿易振興機構)が2021年3月に全米の日系企業703社を対象に実施した調査では、新型コロナウイルス終息後、オフィスとリモートワークを併用したハイブリッド型の勤務体制を検討している企業が47.1%と半数近くに上った。別の調査会社は、同5月に発表したレポートで、欧米企業の70%がハイブリッドワークを導入すると予測している。

実際に、多くの企業がコロナ後もハイブリッドワークを維持することを宣言している。例えば、フォードモーターは21年3月に世界中の3万人の従業員に、永久的にオフィスワークとリモートワーク両方を自由に選択できるようにした、と発表した。

このようにハイブリッドワークへの期待が高まっている理由は、コロナ禍によってリモートワークの生産性の高さが証明されたからだろう。場所を選ばず働けることから、従業員のワーク・ライフ・バランスは改善され、オフィススペースの削減など固定費の最適化を図ることも可能となった。そして、デジタルをベースにした仕事の進め方が基本となることで、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速に貢献しているのも大きい。

ただ見落とせないのは、ハイブリッドワークがはたして実現できるのか、経営層はおろか、現場レベルでも疑問を持つ人が多いことだ。米マイクロソフトが21年1月に31カ国約3万人を対象に実施した調査では、「リモートワークを活用した柔軟な働き方を希望」する従業員が73%に達した一方で、67%が「コロナ後は、より多くの対面でのコラボレーションを望んでいる」と回答している。

この結果は、ビジネスパーソンの多くが、現状のリモートワークとオフィスワークに利点と限界を同時に感じている表れともいえる。「リモートワークは確かに便利だが、対面だからこそ進められる仕事もある」、そう感じているビジネスパーソンもいるということだ。ハイブリッドワークが働き方の新潮流となっていることは理解しながら、現場ではいま一つ腹落ちできていない、いわば働き方のパラドックスが起きているのが現状だろう。

※ジェトロ「新型コロナウイルス感染症のワクチン接種などに関するアンケート調査結果」

カギを握るのは「真のコラボレーション」

このパラドックスを解消するには、当然のことながらハイブリッドワークの具体的かつ効果的な運用方法を見極める必要がある。いち早くその方向性を示したのが、米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOだ。21年5月に「The hybrid work paradox」と題した投稿を行うとともに、「ハイブリッドワーク:ビジネスリーダーのためのガイド」と題したホワイトペーパーを無料公開した。日本マイクロソフトの河野万邦氏は、同CEOの動きについて、次のように解説する。

「ナデラは、ハイブリッドワークが次の大きなディスラプションになると位置づけ、実現のカギを握るのはコラボレーションだとしています。このコラボレーションは単なる共同作業ではありません。アイデアを有機的に共有し熟成させて、新たな価値へと昇華させる取り組みを意味しています」

そのためには、「人」「空間」「プロセス」の3つをケアすることが欠かせない。つまり、リーダーや組織のあり方から議論の進め方、それらを踏まえた具体的なワークフローの構築まで見直す必要があるということだ。

見直すというとネガティブなイメージもつきまとうが、この場合はマイナスをプラスに変えるのとは少し異なる。むしろ、今までになかったまったく新しい働き方にアジャストするため、時代の動きを見据え、組織としての質をアップデートしていくプロジェクトと捉えるべきだろう。併せて営業体制やサプライチェーン、財務まで含めた事業プロセス全体をデジタルワークフローへ移行すれば、DX推進の一手としても効果的だ。

チーム力を根底から変えるTeamsの進化

そうした新たな働き方のデザインを、テクノロジーの面から総合的に後押ししているのがマイクロソフトだ。とりわけMicrosoft Teams (以下、Teams) は、コラボレーションプラットフォームとして飛躍的な進化を遂げてきており、今後も目が離せない。注目は、デジタルの世界だけで効率化を目指しているのではなく、リアルの世界とのシームレスなつながりにより、場所や時間を問わず誰もが働きやすい環境の構築ができるということだ。

今の時代、私たちの生活に AI は欠かせないものとなりつつあるが、TeamsもAIを有効に取り入れている。例えば、画面のUI。リモートの会議参加者があえて横に並ぶようにし、インテリジェントカメラの配置も工夫することで、フェース・トゥ・フェースのリモート会議を実現。誰もが気になっていた“目線が微妙に合わない問題”をクリアし、対面と遜色のない、むしろ対面以上にコミュニケーションしやすい空間を生み出している。

さらに特筆したいのは、インテリジェントスピーカー。誰が話しているかを自動認識し、音声をテキストに変換して画面にアップできるようになっている。つまり、会議での重要なキーワードを自動的に集約し、誰が発言したかまですぐに可視化できるようになるということだ。アイデアがより早く熟成され、新たな価値創出に役立つのは間違いなく、まさに次世代のコラボレーションだといえる。

つまり、マイクロソフトの提示するハイブリッドワークは、在宅かオフィスかという「働く場所」の選択を自由にするだけでなく、その企業が本来持つビジネスのパワーと質をスピーディーに引き出すというわけだ。

河野氏は経営者の決断は大事としながらも、従業員の目線が不可欠と語る。

「ビジネスの効率と生産性を追求することだけがハイブリッドワークの目的ではありません。一人ひとりの働き手が成長でき、心身ともに豊かな状態を保てるウェルビーイングに配慮した環境を整えることが重要だと思います」

マイクロソフトはその点にも配慮し、21年2月に従業員エクスペリエンスプラットフォームであるMicrosoft Vivaをリリース。従業員エクスペリエンスとは、従業員が組織に所属することで得られる体験のことで、これが悪いと従業員の満足度も低下し、生産性も上がらず、結果的にビジネスの成果も期待できないことになる。Microsoft Vivaは、この点に着目し、社内情報共有や学習の促進、組織全体の働き方の可視化など従業員一人ひとりが最大限の能力を発揮できるよう支援する。

ただ、Microsoft Teamsにしても、このMicrosoft Vivaにしても、いいサービスだからとただ導入するだけでは大した効果は期待できない。なぜならば、業種や部門によって、最適な事業プロセスや働き方は当然異なるからだ。新たなツールの導入ありきで考えるのではなく、自社・自部門にはどんな事業プロセスおよび働き方が最適なのかを見つけることが重要だろう。

そこでぜひ試してほしいのが、前述の「ハイブリッドワーク:ビジネスリーダーのためのガイド」にリンクされている無料のチェックリストだ。「人事」「情報技術とセキュリティ」「マーケティングと営業」「不動産」と業種別にハイブリッドワークへ移行するうえで必要なアクションを細かく確認できる。根本的な競争力の強化を目指し、予想外の変化を受容するレジリエントな組織づくりに取り組むならば、参考にして損はないのではないか。

>>>「ハイブリッドワーク実行ガイド」はこちら

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