今年9月初開催「脱炭素経営EXPO」が注目の理由 コロナ禍で、あえて展示会商談を選ぶ利点とは?
日本最大級の展示会主催会社であるリード エグジビション ジャパン(以下、リードジャパン)では、毎年3月に再生可能エネルギー分野の展示会「スマートエネルギーWeek」を開催している。今でこそ日々、太陽光や水素エネルギーに関するニュースが取り上げられているが、同社がこの展示会をスタートさせたのは2005年と非常に早く、すでに今年で17年目を数える。太陽光や水素エネルギーほか、風力、バイオマスなど8分野の展示会を開催しており、その規模は世界最大級だ。21年3月に開催された「スマートエネルギーWeek」でも業界関係者約3万名が参加。今年は感染症対策のため行われなかったが、例年であれば開会式に国内外からエネルギー分野の各社トップが登壇することが恒例となっている。業界では世界的にも知名度のある展示会として認知されてきた。
ただその一方で、エネルギー業界はスピードの速い業界である。国の政策や方針によって、ビジネスの潮流も大きく変わる傾向にある。実際、昨年10月に政府が「2050年カーボンニュートラル宣言」をしてからは、脱炭素化の流れが一気に加速することになった。
こうした流れを受けて、今年3月の「スマートエネルギーWeek」に続き、同年9月に新たに開催されることになったのが「脱炭素経営EXPO」だ。これまでのパリ協定などではあくまで国ベースの考え方であったが、現在はESG投資やRE100を通して、企業にも脱炭素経営を個別に求める動きへと大きくシフトしている。つまり、これからはエネルギー業界だけでなく、すべての企業が脱炭素化に向けた取り組みを行う必要があるのだ。
リードジャパンでも出展会社から多くの要望を受け、3月に開催していた「スマートエネルギーWeek」の会期中に、9月に東京ビッグサイトで「脱炭素経営EXPO」を開催することを決定、告知するに至った。これは展示会自体にとっても、大きな転換点になるという。なぜなら、これからはエネルギー関係者だけでなく、すべての企業が来場ターゲットとなるからだ。しかも以前から参加していたエネルギー関係者にとっても、すべての企業がターゲットになるため、大きなビジネスチャンスになりうる。すでに多数の関連企業から問い合わせが殺到しているというが、ここまで注目される理由とは何なのだろうか。
依然として新型コロナウイルスの収束が見込めない中で、多くの企業では顧客開拓のための新たな接点=タッチポイントを見つけ出そうと模索を続けている。対面での商談が限られる今、その主流となりつつあるのはオンラインだ。しかし、オンラインなりのメリットはあるものの、どうしても抜け落ちてしまうものがあるのも否めない。そうした中、顧客とのタッチポイントの場として改めて注目されているのが展示会なのだ。リードジャパン執行役員であり脱炭素経営EXPO 事務局長の前薗雄飛氏が次のように語る。
「オンラインでの商談が増える一方で、実際の受注や取引となると、どうしてもリアルな接点を持つことが必要になってきます。しかもオンラインですと実際の受注につながるまでのリードが長くなる傾向にあります。コロナ禍でも、お客様とリアルに会い、自社の製品を見て、触れてもらうために、展示会という存在が欠かせなくなっているのです」
実際、リードジャパンでは開催する展示会の本数も増加傾向にある。ある中小企業ではコロナ禍で営業活動が制限され経営不振が続く中、展示会で顧客をつかむことで突破口を見つけることができた。そんなエピソードも少なくないという。またコロナ禍によって来場者の質も高まっているという。物見遊山ではなく、本当に購買意欲のある来場者が増え、展示会での出展者の満足度も高くなっているというのだ。
「展示会には業界の主要プレーヤーをはじめ、多くの関係者が集まるというメリットがあります。集まれば人脈が生まれ、情報交換もできるようになります。展示会の来場者も確かな課題や目的意識を持って来られる方が多く、成約率も高くなる傾向にあるのです」
実際に出展した企業はどのようなメリットを感じているのだろうか。まずは今年3月の「スマートエネルギーWeek」で大きな成果を得て、「脱炭素経営EXPO」への出展も決めたスタートアップ企業、A.L.I.Technologies 執行役員 Energy Solutions本部長の渡慶次道隆氏が語る。
「私たちは、エネルギーソリューション事業を行う会社で、CO2排出量を算出し可視化するクラウドサービス『zeroboard(ゼロボード)』を軸に、多くの企業に脱炭素経営に向けた支援を行うスタートアップ企業です。多くの企業でサステイナビリティーやカーボンニュートラルという名の付いた部署が続々と立ち上がっている中で、脱炭素経営の潮流を捉えた9月の展示会は大きなビジネスチャンスの場になると考えています。実際、3月の展示会では大手企業に交じって出展することで、新たな人脈構築や確かなニーズを持った来場者の方々と細かい情報交換ができたことは非常によかったと考えています」
同社はIT関連企業でもあり、むしろオンラインに親和性が高いと思われるが、リアルな商談の場についてどのように捉えているのだろうか。
「対面ですと、確かなフィードバックを得られることが挙げられます。また、書店でたまたまよい本を見つけるように、偶然の出会いで私たちの会社を見つけてくれる来場者の方がいたこともよかったと考えていますね。また、スタートアップゆえ準備に関わる人数が制限される中、出展パッケージを用意していただくなどリードジャパン社さんからきめ細かいサポートをしていただいたことも大きかったです。展示会自体も分野によって細分化されており、見込み客をより多く獲得することができるため、9月の出展も決めました。脱炭素経営に取り組みたいが、どうしたらいいかわからないという企業の方は、一度相談していただけたら、と思います」
では大企業の場合はどうか。日本を代表するエンジニアリング企業の日揮ホールディングスも3月に出展した成果を受け、今回「脱炭素経営EXPO」への出展も決めた。日揮ホールディングス 理事 サステナビリティ協創部長代行の谷川圭史氏はこう語る。
「3月の『風力発電展』に出展し、成果を得たことが今回出展する後押しになりました。とくに今回は脱炭素経営という“経営”にフォーカスしている展示会名が出展への大きなポイントになりました。私たちは石油精製・石油化学・LNGなどのプラント建設では知名度がある一方、各種再エネ関連事業での実績・経験を生かした、国内製造業様の脱炭素化に貢献する取り組みに関する認知度を上げたいという思いがあります。これから企業が脱炭素経営に舵を切っていこうとする中で、リアルな場でその熱意を伝えたいという強い意向もありますし、製造業様の脱炭素化に貢献できることはないか、積極的にお話ししたいと考えております。その点、とくに今までお付き合いが限定的だった分野の製造業様の経営に近い皆様とお知り合いになるのに、やはりオンラインでは最初の接点を持ちづらい。その意味で展示会を活用する意義は非常に大きいと考えています」
コロナ禍にあり従来の営業手法が限られる中で、展示会のメリットをどう考えるのか。
「やはり出展成果が大きいことが挙げられます。集客やきめ細かい情報収集のほか、これまで私たちと接点が少なかったような分野の方との出会いなど大きなメリットがあると考えています。コロナ対策についても徹底されており、コロナ禍にもかかわらず多数の来場者があるということも安心して出展できる部分だと思います」
どれだけオンラインが普及しても、人と人がリアルに接点を持つことは欠かせない。リードジャパンの前薗氏もこう言う。
「例えば、エネルギー業界では扱うプロジェクト自体が数千万~数億円という世界なので、オンラインだけで決めることがなかなかできません。どんな人が売っていて、実際の物はどうなのか。リアルな接点を持たなければ判断できない。その意味では、これからも展示会の存在価値は揺るがないと考えています」
前薗氏はその意気込みを次のように語る。
「昨年の10月と今とでは企業を取り巻く環境が大きく変化しています。しかし、経営者や幹部、CSRのご担当者の中には脱炭素経営の必要性を感じながらも、何から始めたらよいのかわからないという方も多くいらっしゃると思います。その一方で、この脱炭素の潮流をうまくビジネスに生かしたい経営者の方も多くいらっしゃるでしょう。本展はまさにそのような方々にご出展いただく展示会です。弊社は脱炭素経営を目指す企業と、脱炭素ソリューションを提案する企業をビジネスマッチングすることで、日本企業のサステイナブル経営とビジネス拡大に貢献したいと本気で思っています。まだわずかですが出展スペースにも空きがあります。ぜひ、出展をお待ちしています」