中小企業が「頼るべき」IT専門家の意外な特徴 ただコスト削減を狙う「外注」が失敗する理由

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コロナ禍で企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速している。デジタル化が求められるのは中小企業も例外ではないが、問題は社内に情報システムの専門知識やスキルを持った人材がいないこと。では、中小企業がプロの力を借りる選択をした場合、いったいどのようなITアドバイザーを選ぶべきか。慶應義塾大学総合政策学部の花田光世名誉教授に、中小企業によるアドバイザー活用術を聞いた。

大半の中小企業は、時代の節目で淘汰される

そもそも、中小企業がプロの力を頼るメリットはどのような点にあるのだろうか。花田氏は、中小企業の課題として、企業の生き残り戦略の不透明さを掲げる。

花田「過去を振り返っても、企業が生き残るには革新的な努力が必要です。時価総額のトップ100社はつねに入れ替わります。大企業でさえ、栄枯盛衰の激しい世界なのです。中小企業はなおさら、未来を見据えた高次元のビジョンを持つべきだといえます。

英オックスフォード大学の研究調査によれば、2030年頃までに、日本に今ある業務の49%が変わるとされています。既存の業務を代替するテクノロジーが発展する中で、新しい仕事がどんどん生まれているのです。

一般財団法人SFCフォーラム代表理事、慶應義塾大学名誉教授
花田 光世氏

ところが、中小企業の経営層に『10年後はどういう企業でありたいか』『将来のビジョンを実現可能にする人材を確保できているか』と尋ねても、なかなか明確な答えは返ってきません」

中小企業が目先の利益を考えざるをえないのは百も承知のうえで、やはりそれ相応の努力は必要なのでは、と花田氏は警鐘を鳴らす。

花田「実際、中小企業であればあるほど、優秀な人材を確保するのが厳しいのは事実です。まず、中小企業の給与水準では、例えばシステムが設計できるような専門的な人材の採用は難しい。ましてや、長期的な教育投資をする余裕はありません。人的資源の開発は困難といえるでしょう。そこで、社内に人材を抱えることにこだわらず、割り切って外部のITアドバイザーをパートナーにするというのは、中小企業にとって賢い選択だと思います。

よっぽど特殊な市場で世界規模のシェアがあるなら別ですが、そうした中小企業はわずか数パーセント。大半の中小企業は、時代の変化に対応できなければ、陳腐化して淘汰されるのは火を見るより明らかです。特別なユニークさを持たない一般的な中小企業であれば、戦略的なアドバイザーと長期的に連携する以外の道はないのではないでしょうか」

「外部のITアドバイザーを頼るのは、中小企業にとって賢い選択だと私は思います」

ほとんどの中小企業には、ITアドバイザーなど社外のプロを頼るメリットがありそうだが、ここで、忘れてはならない注意点があるという。

花田「単なるコストダウン目当てでアドバイザーを頼るのは危険です。中小企業がどうしたって明日の利益を考えてしまうのは仕方ありません。その代わり、これからの勝負は、自社の『立体的な成長』に貢献するパートナーをつかまえられるかどうかです。

その中小企業が、5年先、10年先も生き残るために何が必要か、従業員の教育的側面も含めアドバイザーから知恵を拝借できるかが肝となります」

そのパートナーは「立体的な成長」をもたらすか?

では、中小企業が10年先まで生きるための「立体的な成長」とは、いったいどのようなものか。これをひもとけば、中小企業が選ぶべきITパートナーの「特徴」が見えてきそうだ。

花田「わかりやすく言えば、自社の『新しい価値』を創造するということです。中小企業には、多様なサービスを組み込み、時代の大転換に対応できる努力を日常的に行うことが欠かせません。

ある特定の領域に特化した「点」のサービスは、時代とともに陳腐化し、市場のニーズが変化すれば不要になります。大規模な変化になれば、とある領域が丸ごと消えるリスクも十分あるでしょう。そう考えると、企業に必要なのは、クライアントに対して幅広い視点を持ち、従来の領域にとらわれない、まったく新しいサービスを提案してくれるパートナーです」

「中小企業には、時代の変化に対応するための日常的な努力が必要不可欠です」

さらに花田氏は、企業における2種類の「成長」を比較して説明を続ける。

花田「企業の『成長』は、連続的な成長と非連続的な成長とに分けられます。『超越』という言葉を考えてみてください。既存のサービスを成長させ、利益を100万円から200万円にするのは、連続的に『超える』成長です。一方で、まったく新しいサービスを生み出して10万円の利益を得るというのは、非連続的な『越える』成長に当たります。

金額だけ見れば前者のほうが大きい成長ですが、新たな領域を開拓し時代に適応する基礎を築いたと考えれば、後者のほうが、会社にとっては重要な成長です。時代の変化に対する感度を高め、目先ではなく5年先を見越した突出的な目標の設定を評価すべきです」

「メーカーのアフターサービス」が頼りにならない訳

10年先の企業の成長目標、と聞くとスケールが大きいと感じるかもしれないが、ITアドバイザーの提案には具体的にどのようなことが期待されるのか。「メーカーの単なるアフターサービス」を批判した花田氏の回答は、DXの本質を突いたものだった。

花田「そもそもDXでいちばん大事な論点は、テクノロジーの話ではありません。考えるべきは『生活の利便性』です。IT革命によって、どのように生活を豊かにできるか。便利な新しい生活のために、どうツールを活用するか。仕事の先にある、生き方やライフスタイルの視点も含め幅広く考えてほしいです。

今は、ネットを検索すれば多くの情報に触れることができます。アドバイザーには製品の使い方に限らず、『こうした活用方法があるよ』とか『御社がこのプロダクトを活用すれば、さらなる価値創出ができそうだ』などといった、個別最適な提案を求めるのがよいでしょう。

すでに、1つの企業が独占的にサービスを提供できる時代は終わりを迎えています。クラウドのように、どんどんいろいろなサービスを巻き込みながら新しい価値を創造するという、発想の転換が必要です。ITアドバイザーを活用する際も、単なるメーカーのアフターサービスとして見るのではなく、他企業の製品をも組み込んだ高度な提案を受けることで、さらなる付加価値を享受できるはずです。

例えば、5年先にはバーチャルリアリティーを組み込んだサービスが主流になるかもしれません。異なる領域のサービスを組み込んでこそ、新しい価値は創出できます。中小企業にとっては、こうした提案ができる感度の高いITアドバイザーこそが頼りになるでしょう」

今後IT分野を強化したい中小企業は、できるだけ初期に、頼れるアドバイザーに巡り会いたいことだろう。長期的に付き合えるパートナーを手軽に見極めるコツは果たしてあるのだろうか。

花田「実はパートナーの見極めは簡単で、営業担当者から、今後の新しい価値創造につながるようなサービスレベルでの提案をされるかどうかです。現場が満足できる一時的な支援だけでなく、社長までが満足できるような提案が望ましいですね。中小企業の今後を考えた、将来に向けての段階的なサポートがなされることが重要です。

ただしその際、中小企業側にも工夫が必要です。サービスの受け手が現場担当者だと、どうしても短期的な話に収束しがち。パートナーと長期的に組むには、業務の設計企画を担う司令塔自身がコミットしないとダメです。とはいっても、中小企業には戦略部隊がいないところがほとんどですから、ぜひ、経営者や役員自身が手を握るようにしてください」

中小企業がITアドバイザーを活用するときは、まず自分たちが、5年先を考える大切さを理解する必要がありそうだ。その上で、ITに関する専門的な相談はもちろん、自社の現状そして将来の話にまでじっくり耳を傾けてくれるアドバイザーを、慎重に見極めたい。

デル・テクノロジーズからのコメント
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