現代社会が獣医師を求める、もう1つの理由

人獣共通の感染症対策など幅広い領域で貢献

全国に医学部を置く大学数が80校を超える一方、獣医学部は17校にすぎない。定員数を見ても9000名程度で推移している医学部に対して、獣医学部は1100名程度の水準だ。獣医師というと、動物病院の医師をイメージする人が多いだろう。だが実際には、獣医師が活躍する分野は、人獣共通感染症対策や検疫・防疫、食品衛生検査など幅広い。こうした、さまざまな領域で活躍する獣医師を毎年120名前後も輩出する日本大学の教員に話を聞いた。

獣医師が活躍する分野がさらに広がる

「確かに、本学の卒業生のうち、6割近くの学生は、犬や猫など、いわゆる小動物の診療を行う動物病院に勤務します。また、畜産や酪農など大動物の診療に携わっている卒業生もいます」と説明するのは、生物資源科学部 獣医学科の壁谷英則教授。「一方で、行政でも獣医師のニーズは依然として高いことも事実です。例えば、食肉衛生や食中毒予防に関わる食品衛生、あるいは鳥インフルエンザや豚熱などの重要な感染症の防疫を担うのは獣医師です。農林水産省や厚生労働省などの国家公務員、地方自治体の公務員として多くの卒業生が活躍しています」と続ける。

生物資源科学部
獣医学科 教授
壁谷 英則

行政の現場でも獣医師の有資格者でなければできない業務が法律で定められている。「そういう点では、獣医師は昔から社会に貢献し、地域に貢献してきたわけです」(壁谷教授)。

最近になって獣医師の仕事に注目が集まり、マスコミなどで取り上げられる機会も増えているが、壁谷教授は、「鳥インフルエンザなどの感染症が社会的に大きな影響を与えるようになっている中で、これらの課題解決に取り組む獣医師の存在感が増しているのではないでしょうか」と話す。今後も、人類が想定してこなかったような新たな感染症が発生するリスクも懸念される。さまざまな感染症の防疫を通じて社会に貢献するという点でも獣医師が果たすべき役割は少なくない。

「最近では、『One Health(ワンヘルス)』というコンセプトが世界的に広がっています。人の健康を保つためには、人だけではなく、動物の健康、さらには環境の健康を分野や国を超えて保つことが大切であるという考え方です。これからは獣医師のバックグラウンドを持った人材が、行政機関、民間企業でも貢献する機会が増えると認識しています」と壁谷教授は期待を込める。

社会環境がますます多様化し、複雑化する中で、獣医師にとってもやりがいのある仕事がまだまだ多く残っている。

犬や猫の再生医療に取り組む

日本大学獣医学科では先端獣医療でも挑戦を続けている。湘南キャンパス内に設置されている日本大学動物病院は、MRIやCTなどの高度な機器がそろい、より専門的な検査や診断、高度な治療が必要な動物を受け入れている。がんの放射線治療など、先端獣医療にも取り組んでおり、臨床獣医師の養成機関として恵まれた環境といえる。

さらに、「犬や猫の再生医療に関する研究も行っています」と話すのは、獣医学科で消化器疾患などを専門にする坂井学教授だ。

坂井教授によれば、犬や猫の病気の中でも、肝硬変などの肝臓病は進行しないと症状が認められないため、診断が遅れ、十分な治療が受けられないことが多いという。

生物資源科学部
獣医学科 教授
坂井 学

「肝硬変の治療には限界があり、新規治療の開発が必要とされていました。そこで、私たちが着目したのが再生医療。具体的には、犬や猫の脂肪由来の間葉系幹細胞などを体外で培養し、体内に戻す細胞療法で、炎症や線維化を抑える効果が期待できます」(坂井教授)

再生医療の研究は、日本大学ならではの特色を反映したものといえるだろう。坂井教授は「応用生物科学科の加野浩一郎教授が取り組む脱分化脂肪細胞(DFAT)は新規の再生医療用ドナー細胞として有望であり、肝硬変など難治性疾患の臨床応用に向け研究を進めています」と解説。総合大学としての日本大学のネットワークが活用されたわけだ。犬や猫などペット自身はもとより、家族のQOL(生活の質)向上という観点でも新たな治療技術の今後に期待がかかる。

獣医師国家試験で高い合格率を生み出すプログラムとは

社会の要請に応える獣医師の輩出において、日本大学獣医学科は大いに貢献している。獣医師国家試験での高い合格率も特徴だ。

獣医学科の松本淳教授は「決して本学だけが突出しているわけではありませんが、付け焼き刃で対策をしても合格できるわけではないことは確かです」と話す。

高い合格率を維持できているのにはどのような理由があるのか。

生物資源科学部
獣医学科 教授
松本 淳

「1つの要因として、カリキュラムの見直しがあります。2014年度にカリキュラムを組み直し、併せて進級条件も変更しました。例えば、『獣医解剖学』で動物の体の構造についてしっかり学んでいなければ、後の学年で受講する『獣医外科学』も深く理解することはできません。このように、各学年で学ぶ科目は、進級後に学ぶ科目の基礎となります。それぞれの科目を適切に配置し、進級条件を厳しく見直したことにより、1年1年、実力を身に付けながら進級する積み上げ教育が実現しました。最終的に獣医師国家試験を受験するわけですが、その合格率は6年間学習した結果の1つにすぎません」。基礎から積み上げてしっかりと学ぶことができる環境が合格率の高さにつながっているわけだ。

松本教授はさらに「湘南キャンパスには、獣医学科を含む生物資源科学部の12の学科が集まっています。ほかの学科の学生と交流したり、共同で研究したりする機会もあり、学びの幅を広げられるでしょう」と話す。キャンパス内には前述した日本大学動物病院や、最新の研究・分析機器を備えた動物医科学研究センター・総合研究所も併設している。

獣医業界に数多くの日本大学の卒業生がいるのも頼もしいところだ。「行政・研究機関、動物病院、民間企業のさまざまな職場で私ども獣医学科の卒業生が活躍しています。お互いに日大のブランドを守りながら協力して活動をしています」と松本教授は語る。日本大学獣医学科で学ぶ6年間、さらに卒業後に得られる人的ネットワークも大きな財産になるに違いない。

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