調査で見えた「本当に幸せな働き方」3つのカギ リモートで職場の一体感がなくなる…は誤解だ

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コロナ禍が世界中に広まってから1年以上が経過した。いち早くリモートワークに移行した海外の企業では、試行錯誤の時期を経て、生産性だけでなく、社員の満足度を向上させる「新しい働き方」が確立されつつある。一方、DXに出遅れがちな日本企業は、今改めて働き方を見直すフェーズにいる。検討にあたり、世界の最新動向は大いに参考になるはずだ。Slackが実施したグローバル調査から、そのヒントを探っていこう。

リモートワークでも、帰属意識は高まりつつある

リモートワークは、ナレッジワーカーの意識をどのように変えたのか。世界でビジネス用のメッセージプラットフォームを提供するSlackが先導するシンクタンク「Future Forum」は、日本を含む5カ国のナレッジワーカー約9000人を対象にした調査を、20年7月と12月に実施。「生産性」「ワークライフバランス」「帰属意識」「仕事のストレスや不安への対処」「勤務体制への満足度」という5つの観点から、オフィス勤務時とリモートワーク実施時を比較してスコアを測ったものである。

オフィス勤務を「0」としたときの、リモートワーカーのスコア。2020年7月から12月にかけて、増えたスコアも減ったスコアもある。とくに「帰属意識」の伸びが顕著だ

まず注目したいのは、生産性だ。第1回の調査でも「+10.7」と、オフィス勤務時より高いスコアだったが、第2回の調査で「+11.5」となり、さらなる向上が見られた。リモートワークの生産性の高さが、コロナ禍を経て強固なものになった形だ。

一方で「ワークライフバランス」「仕事のストレスや不安への対処」「勤務体制への満足度」は、2回を通じてプラス評価だったものの、2回目の調査ではややスコアが下がった。Future Forumのブライアン・エリオット氏は、原因をこう分析する。

Future Forum バイスプレジデント
ブライアン・エリオット

「2回目の調査は、一時少し落ち着いたように見えたコロナ禍が、世界で再び拡大した時期のもの。しかし結果的には、パンデミックが収束するどころかさらに継続してしまっている。そのストレスから、スコアが下がったと考えられます」

メンタル面の不安が広がる中、逆に大きく改善したものもある。「帰属意識」だ。1回目の調査で、帰属意識のスコアは「-5.0」と5要素の中で唯一マイナスだった。しかし、2回目の調査では「+1.1」とプラス評価に転じたのだ。なぜ、たった半年でスコアが改善したのか。エリオット氏は「帰属意識の改善には、3つの側面がある」と分析する。

「まず『コミュニケーション』です。リモート移行による帰属意識の低下を受け、多くの企業が社交性の改善に向けた取り組みを行いました。例えばビデオ会議で雑談タイムを設けたり、当社も社員の自宅にアイスクリームを送って一緒に楽しんだりしました。こうした工夫で、人と人が心理的につながれる環境がリモートワーク下でもできあがり、スコア改善につながりました」

2つ目は、組織の透明性が確保できたこと。Slackをはじめリモートに適したITツールが活用されるようになり、情報共有がスムーズになった。

「『自社で今、何が起きているのか』が社員にわかりやすく見えるようになったのは大きな成果です。例えば経営者が、日々の情報をオープンにした状態で在宅勤務をしていると、現場の社員が『経営層も、自分たちと同じように苦労している』と知ることができ、帰属意識が高まります」

そして3つ目は、新しいITツールへの投資だ。

「企業を、ITツールへの関心度が強い順に4つに分類して社員の帰属意識の差異を調べたところ、ツールへの投資が積極的な企業ほどメンバーの帰属意識が強いことがわかりました。ITツールによってコミュニケーションがスムーズになるのはもちろん、社員が『会社が自分たちに投資してくれている』という実感を持てるのだと思います」

考えるべきなのは「働く場所」だけじゃない

帰属意識がプラスに転じたことで、5つの要素すべてでリモートワークがオフィス勤務を上回るようになった。では、さらに未来を見据え、本当に幸せな働き方を実現するには何が必要なのか。エリオット氏は、「柔軟性」「多様性」「つながり」という3つのキーワードを挙げる。

まず欠かせないのが柔軟性だ。第2回の調査で、「オフィスに完全に戻りたい」と回答した日本の回答者は22%にすぎなかった。つまり78%は、フルリモートあるいはオフィスとリモートのハイブリッドな環境で働きたいと考えている。

「考えるべきは、働く場所だけではありません。育児や介護などの事情で、自分に合った時間帯で働きたい人は多い。働く時間という観点でも、柔軟性の高い環境を整えることが大切です」

「働き方改革」というと、「働く場所」の変更ばかりがクローズアップされがちだ。しかし「働く時間」も、同じくらい重要な要素だ

多様性も重要だ。対象は何も、人種やジェンダーだけではない。これまで物理的なオフィス空間では活躍しづらかったタイプの人も、リモートによって力を発揮しやすくなる。

「オフィスでは、対人コミュニケーション能力が高い人が積極的に発言し、会議を支配することがよくありました。しかし、内向的な人も、本当はいいアイデアを持っているかもしれません。フレキシブルな働き方によって、内向的な人も自分のやり方、タイミングで発言したり議論に参加したりできるようになり、組織により貢献してくれるでしょう」

リモートワーカーは「2軍」ではない

もちろん、単にリモート環境を整えれば済む話ではない。オフィスとリモートのハイブリッド環境においては、依然としてオフィス側が仕事のイニシアチブを握り、リモートワーカーは“2軍扱い”される傾向がある。

「Slackでは、物理的なオフィスではなく、デジタル上の環境こそ本社だと捉えています。こうした時代に重要になるのが、3つ目のポイントである『つながり』。全員がいつでもどこからでも本社のような存在であるデジタルプラットフォームにアクセスでき、ノウハウや知識を共有できる。そうした環境を整えることで、柔軟性や多様性も実現されます」

問題は、それを実現する手段だろう。帰属意識の改善でも言及したITツールへの投資はその有効な一手だ。

「幸せな労働環境はすべて、Slackで具現化できます。Slackは同期、非同期の両方の側面からアクセスできるので、自分の都合がいいタイミングで情報を取りにいけます。メンバー全員が使えば、各種ドキュメントをSlack上に一元化して連携させることで、スムーズに情報共有をすることも可能です」

「Slack コネクト」の画面。社外とのコミュニケーションもスムーズになる

Slackがつなげるのは、チームや組織の内部だけではない。外部組織ともチャンネル上でつながれる「Slack コネクト」機能を活用すれば、社外のメンバーとも安全な環境で手軽にコミュニケーションできる。すでに、東映アニメーションや、KADOKAWA ConnectedがIT導入をサポートしているKADOKAWAグループなどが、グループ会社や取引先とのコミュニケーションに日々活用している。日本でも先進的な導入事例が増えているのは心強い。

最後にエリオット氏は、日本のビジネスパーソンに心強いメッセージを寄せた。

「実は第1回の調査で、リモートにおける生産性がマイナス評価になった唯一の国が、日本でした。この原因は何より、DXの遅れです。実際、日本は海外に比べて調査対象者におけるSlackのユーザー数が少なかった。しかし、昨年は世界のSlackユーザー数が42%増だったのに対し、日本は79%増と急拡大。2回目の調査では、欧米と同じように生産性や帰属意識がプラスに転じています。ツールの導入が進めば、世界とのギャップは埋まるはずです」

幸せな労働環境をつくる第一歩は、SlackのようなITツールの導入から始まる。それをコストと捉えず、前向きに取り組んでいきたい。

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