金融界の黒船「IFA」が日本を席巻する 変革期を迎える証券ビジネス最前線

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IFA人口が年々増えている。日本証券業協会の調査によると、制度が始まった2004年6月にわずか30人だったIFAは、その3年後には2000人台にまで急増。そこからしばらく3000人台前半まで緩やかに増えてきたのが、18年あたりから増加ペースが速まり、20年12月、4264人にまで上った。金融業界における新しい働き方としてIFAに注目が集まっていることの証左だろう。IFA経由の個人向け投資商品の販売実績は、英国では80%、米国では60%と、投資先進国での認知度も高い。IFAの台頭は、かつての黒船来航のように、金融業界に大きな変化をもたらす可能性がある。日本でも大手証券、大手プライベートバンクからIFAに転じるケースが急増しており、この流れはますます加速すると考えられる。

顧客に寄り添う金融アドバイザーを目指して

IFA(金融商品仲介業者)とは、特定の証券会社に所属せず、独立の立場・中立した思考で投資信託、株式、債券などの各種金融商品を用いて提案を行う、資産運用・管理のプロフェッショナルだ。「独立系ファイナンシャルアドバイザー」と呼ばれる。

特定の証券会社に所属しておらず、金融機関の指揮命令下にないため、販売目標などもなく、顧客のニーズを最優先して提案できるのが魅力だ。自分の知識と人脈を活用して、幅広い金融商品を取り扱った、コンサルティングビジネスを展開することもできる。

白井 翔馬
大手証券会社出身
ASSETBANK東京本店所属

大手証券会社出身で現在、ASSETBANKに所属する白井翔馬氏は、IFAになった理由として「事業承継など資産運用以外のサービスも長期の時間軸で提供できること」を挙げた。

大石 純平
大手証券系プライベートバンク出身
ひびきフィナンシャルアドバイザー所属

また大手証券会社からプライベートバンクを経てひびきフィナンシャルアドバイザーに所属する大石純平氏は、IFAとして資産運用サービスを提供しながら、外部の専門家と連携してM&Aや事業承継、相続、財産保全、法律、税金など、富裕層が必要とするソリューションを提供している。
 

銀行、証券会社、保険会社など金融機関にはさまざまな業態があるものの、金融機関に雇用され、金融機関の指揮命令下で100%顧客の側に立って提案するのは難しい。だが、IFAならつねに顧客のニーズに寄り添った提案ができる。また自分の判断で外部の優秀な専門家との連携によって、新しい資産運用・管理サービスを実現できる可能性もある。こうした事情もあり、顧客志向で力のあるアドバイザーは続々とIFAに転身している。


篠地 里百合
YSKライフコンサルタンツ
自由が丘支店所属

YSKライフコンサルタンツに所属しているIFA、篠地里百合氏は、「金融商品だけでなく、保険や不動産、あるいは相続なども含めてワンストップでサービスできるIFAを目指しています」と言う。


廣瀬 二郎
スイス系プライベートバンク出身
ひびきフィナンシャルアドバイザー所属

また、大手生命保険会社で国内、米国と機関投資家として活躍し、外資系プライベートバンクを経て、IFAに転じたひびきフィナンシャルアドバイザー所属の廣瀬二郎氏は、「お客様に提供したい金融サービスを自分でデザインできる人は、IFAもいい選択肢になる」と語る。IFAは所属する組織のブランド力よりも、個々人の実力が問われる。厳しい反面、それが仕事のやりがいにもつながっている。

自由な働き方が魅力

では、そもそもなぜIFAになろうと思ったのか。

この問いかけに対する答えは、全員がほぼ一致している。「お客様と長期的な関係を築けること」だ。

一般的に大半の金融機関は、3年おきに転勤・異動が繰り返される。3年ごとに担当が代わるので、顧客との間に信頼関係を築くのが難しくなる。誰にとってもお金は、大事なもの。その運用や管理を任せるためには、信頼関係が何よりも重要だ。ほかにも問題がある。白井氏はかつて自分が大手証券会社の営業だった時代を振り返ってこう言う。

「前任者と私とで資産運用に対するスタンスが異なると、引き継いだお客様を困惑させてしまうケースがありました。資産運用や資産承継はお客様とコンサルタントで長期的に考えていくものなので、お客様と長くお付き合いさせてもらうことが重要だと認識しています」

廣瀬氏も、「自分が生涯を通じてサポートしたい方々とお付き合いを続けられる」ことが、IFAを目指した理由の1つだと言う。また、会社に束縛されない自由な働き方ができるのも、IFAの魅力の1つだ。出社時間や勤務時間の規定がなく、自由裁量で働けるIFA法人が多いため、直行・直帰は普通のこと。さらに、主語はすべてお客様に向いているため、法令やコンプライアンスをしっかりと順守しながら独自性・創造性を発揮することも可能だ。

「司法書士やベンチャー起業家、ベンチャー支援会社の人たちと会合の場を持ち、経営者に同席していただいて起業家へ資本政策のお手伝いをさせていただいたこともあります。直接、金融商品の取引につながるわけではありませんが、多方面に関わりを持つことで、ビジネスが開けることもあります」(大石氏)

IFA転職者の約半分は大手証券出身者

IFA回答者の現在の主たる担当顧客層は、全体の56%が未上場企業オーナー等の富裕層、39%がマス層だった。超富裕層は5%だった。日本の純金融資産保有に占める各階層の比率と本調査の結果はおおむね平仄(ひょうそく)が合う。一般的にIFAはそれぞれの得意分野があり、それに応じた階層を主な顧客としている。それぞれのIFAが有する専門性を発揮することで、高度で深度のある提案が可能となり、顧客満足度にもつながると考えられる
IFA回答者のメインビジネスは、全体の80%がブローカレッジだった。この80%のうち、29%が債券、29%が株式、20%が公募・私募ファンドだった。一方、残高連動フィーをメインビジネスとする回答者は、全体の2%だった。IFAが受け取る運用アドバイス手数料については、主にブローカレッジ取引に伴って顧客が支払う手数料の一部を受領するパターンと顧客の預り資産に一定割合を乗じた金額を手数料として受領するパターンがある。欧米のIFA(RIA)は、残高連動フィーをメインビジネスとしている者が多いこともあり、今後日本でも当該ビジネスが大きな割合を占める可能性があると考えられる

掲載したグラフは、IFAの総合コンサルティング業務を行うアドバイザーナビが2021年1月に行ったWebアンケートを基に作成したものだ。アドバイザーナビは、金融機関勤務者のIFAへの転職支援や、IFAを活用して資産運用・管理を行いたいと思っている富裕層とIFAのマッチングサービスを展開している会社である。白井氏や大石氏など、大手証券出身者やプライベートバンク出身者が同社を通じ続々とIFAに転職をしている。同社代表取締役の平行秀氏は野村證券出身で、IFAの経験もあり、IFA業界への知見が高い。また、同社は多くの非公開求人や、独占求人を持っていることも強みとしている。

金融機関退職後に起業し、事業の経営者を経てIFAを選択した篠地氏も、アドバイザーナビの転職支援を活用して、IFA法人のYSKライフコンサルタンツに入社した。

「複数のIFA法人とコンタクトを取り、1社に絞りかけていたとき、アドバイザーナビの存在を知りました。日本全国のIFA法人をリサーチしており、かつこちらの要望をしっかり聞いたうえでYSKライフコンサルタンツを紹介してもらいました」

IFA回答者の前職は、証券系が68%、銀行系が7%、保険系が15%で、金融系で90%を占める結果となった。IFAのビジネスは多様であるものの、その中心は金融資産の運用アドバイスであるため、知識や経験が豊富な金融機関出身者に優位性があるものと考えられる。一般企業出身者は全体の6%、不動産業出身者は2%、税理士は2%と少数だった
IFAになったことについて非常に満足しているが約50%、満足しているが約40%と全体の9割近くがIFAになったことに満足している結果となった。また、後悔している、非常に後悔していると回答したIFAが1人もいないことは注目に値する

では、IFAとして活躍している人たちのイメージをデータから読み取ってみよう。

前職は約半数が大手証券会社であり、その他も含めると約7割が証券会社出身者で占められている。また、IFAとして転職をした方の満足度調査をしてみると、87%の方が転職に満足をしており、「後悔している」という回答はゼロであった。

「IFAになって良かったこと」の設問に関しては、「顧客のための提案ができる」という回答が94%、「顧客関係が深まった」という回答が89%であった。加えて、「商品ラインナップ」にメリットを感じている人は過半数の60%だ。さらに、一般的にはネガティブに捉えられがちな「大手看板がない」リスクも、「自分のブランド」へシフトできるメリットとして考える人が61%に上り、意外な結果となった。アンケート調査結果と、自分が今、持っているスキルを勘案したうえで、次世代金融サービスの新しい形としてのIFAの選択肢も出てくるのではないだろうか。

データ出所:アドバイザーナビによるWEBアンケート結果から(2020年12月11日~2021年1月11日実施、総回答数137)

独立したからこそできることがたくさんある

平 行秀
アドバイザーナビ株式会社代表取締役
IFAは専門性の高いスキルを持ったスペシャリストであり、中には数十億円もの資産の運用・管理を担っている人もいます。

ただ、問題は高い専門スキルを持っているIFAと、お客様のニーズを合致させるすべがないことでした。そこでアドバイザーナビは、資産運用のニーズを持った個人とIFAをつなぐと同時に、IFAを輩出するためのプラットフォームとして立ち上がりました。

IFAとして独立することを検討する際、金融機関の看板が外れることを不安に感じる人がいるかもしれません。しかし、IFA法人が扱える商品は大きく増えており、コストは徐々に下がっています。「独立」して不便になることは、ほとんどありません。

お客様のことを第一に考えて行動できる人にとってIFAは、理想的な働き方になるはずです。

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