Twitter販促で「PC売上伸び率38%増」の舞台裏 テレワーク需要期、顧客の心にどう寄り添った?

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Twitter上で、日本マイクロソフトとビックカメラがコラボする販促キャンペーンが成果を上げている。テレワークに合わせて需要が伸びたノートパソコンだが、両社はこの動きに合わせてMicrosoft Surface(以下、Surface)の販促をビックカメラのTwitter公式アカウントから行った。その結果、ビックカメラでのSurfaceの売り上げ伸び率(店頭・EC合わせて)は、キャンペーンを行っていないほかの販売チャネルと比べて、38%上回った。顧客の心をつかんだ要因は何だったのだろうか。

「生活の場」「口コミの場」としてのTwitter

「Surfaceは在宅勤務やテレワークにぴったりな使い勝手のいいデバイスです。それを訴求するために適したチャネルをビックカメラ様と両社で検討したところ、Twitter上でのキャンペーンを行うことが決まりました」

そう話すのは、日本マイクロソフトの三輪 宗(みわ そう)氏。なぜ、Twitterを選んだのか。

三輪 宗
日本マイクロソフト コンシューマー事業部 マーケティング統括部 シニアマ-ケティングスペシャリスト

「Twitterは『生活の場』『口コミの場』だと考えました。お客様がパソコンを買おうとする際、多くの方はCPUやメモリーなどのスペックで具体的に比較検討されているわけではありません。漠然と『どれが便利でよさそうか』と考えることから始まります。その段階のお客様は、売場やECサイトまでは来られません。そういった方に向けて、どういったアプローチを行えばよいかを考えたところ、Twitterが適しているのではと考えました。

Twitterは、知り合いの近況を知ったり、何となく流れてきたツイートを読んだり、口コミが広がったりする『売場の一歩手前、生活の場』。そこで購入意向がまだ高くないお客様に向けても、自然な形でTwitterから認知をしてもらうことを期待しました」(三輪氏)

ECサイトや店頭を訪問する顧客は、すでに興味が高まっているケースが多いが、Twitterならその前段階の顧客にリーチし、ブランドについて知ってもらうことができる。今回の施策の特徴として挙げられるのは、日本マイクロソフトやSurfaceのアカウントではなく、家電量販店であるビックカメラとの共同施策として実施したことだ。その狙いはどこにあったのか。

※こちらのキャンペーンは2021年4月27日現在終了しています

「ビックカメラ様とはこれまでもさまざまな施策でタイアップやコラボレーションを行っています。ビックカメラ様との協業では、商品・EC・広告宣伝・営業といった各部門一丸となってサポートいただけるため、お客様が認知から購入に至るまでの導線を売り場・EC問わず、しっかりと作り込むことができます。

また、お客様目線で考えると、当社自身が自社製品であるSurfaceが優れている、と訴求するよりも、パソコンのプロである家電量販店の視点から製品の価値を語っていただけたほうが、お客様にご納得いただけます。そして、Surfaceの機能の訴求ではなく、テレワーク環境でのライフスタイル提案を一緒にやっていきたいと考えました」(三輪氏)

ライフスタイル提案で心を動かす

生活者の視点で訴求をするために、クリエイティブにもこだわっている。動画コンテンツをツイートしてリーチを図る動画広告配信機能を活用したのもその1つだ。

「『急にテレワークに切り替わった、どうしよう』と悩みを抱えていらっしゃるお客様に向けて『Surfaceをテレワークで使ったらどんな感じ?』とイメージを想起させ、『魅力的なデバイスが日々の中でどう役立つか』を具体的に感じていただけるような動画にしました」

動画制作に関してはノウハウを持たない企業も多いが、両社はTwitterの「Amplify スポンサーシップ」プランを活用した。同プランはクライアントのニーズに対応し、Twitterと提携するさまざまなコンテンツパートナー企業がそれぞれの強みを生かして広告キャンペーンを支援してくれるもの。今回のSurfaceの動画制作に当たっては、CMや映画、ドラマなどの制作で国内トップクラスのプロダクションが協力した。

今回制作した動画の中の1シーン。テレワークでSurfaceを使うイメージを具体的に想起させるクリエイティブとなっている

「動画の企画だけでなく、ツイートの文言一つひとつについても、ビックカメラ・Twitter両社と『こちらの表現のほうが心に刺さるのでは』と意見やアイデアを交わしていきました。ビックカメラ様が普段のSNS運用を通じて貯められているノウハウをそのままお借りできたのが大きかったです」(三輪氏)

Surfaceのキャンペーンは2020年9月、12月にそれぞれ2週間ずつ行ったが、「短い期間でも、投稿を何個かに分け、リアルな反応を見てPDCAを回しながら投稿の表現やクリエイティブをブラッシュアップできるのもTwitterの強みだと感じました。キャンペーンの後半には施策に対する手応えがありました」と三輪氏が語るように、短いスパンであっても改善が可能なためその分、納得のいく結果を得られやすいだろう。

実際に、キャンペーンによりSurfaceの売り上げに大きな変化が見られた。

「『#Surfaceならビックカメラ』といったタグを付けた動画のツイートと店頭でのお買い得価格キャンペーンなどを併せることで、キャンペーン期間中のビックカメラ様でのSurfaceの売り上げは、同時期のほかの販売チャネルと比べ、伸び率が+38%でした。しかも、これはEC・実店舗両方です。

想像以上の伸びで、Twitterは売り上げに貢献できるチャネルだと実感しました。ビックカメラ様の店頭に立っている販売員の方からは『Twitterを見て購入されたお客様が相次いだ』との情報共有もありましたね」(三輪氏)

同時に行ったブランドの認知度調査でも、キャンペーン前後で比較すると大きくポイントを伸ばしたという。3社のコラボレーションが功を奏した形だ。

大学生向けの新たなキャンペーンもスタート

TwitterをはじめとするSNSを活用したマーケティングが注目されるが、大手企業であっても、この分野に精通した人材を擁する企業は多くないだろう。その点、Twitterは頼もしいパートナーとなってくれるという。

「Twitter側からは、両社にとってどのような活用方法が効果的か、など数多くの実績に基づいて提案してくれました。クリエイティブ制作から運用のところまでバックアップしてくれ、動画会社に制作イメージを伝える際にも、Twitterの担当者の方が同席してくれました。出稿側として施策の方向性や目的がブレてはいけませんが、そうではないところで迷ったり悩んだりする際はすぐに相談できるのがよかったですね」(三輪氏) 

日本マイクロソフトとビックカメラは、新たな広告キャンペーンもTwitter上で展開。2021年2月19日〜4月13日には、新大学生に向けて「型にハマるな。沼にハマれ。」と背中を押す「DIVE to 沼!!」キャンペーンを実施。Surface公式Twitter、ビックカメラ公式Twitter、電車広告、店頭など、さまざまな媒体に同時に露出させることで大学生からの認知を獲得した。

※こちらのキャンペーンは2021年4月27日現在終了しています

ハッシュタグ #DIVEto沼を見てみると、多くの大学生の「沼」が並んでいるのが見て取れる。「いいね」や「保存」ができるだけではなく、リツイートにより、身近な情報が口コミのように広がっていくのはTwitterの強みの1つだ。

「Twitterの本格的な活用という点ではわれわれはまだ緒に就いたばかり。Twitter社のアドバイスなどももらいながら、今後さらにメーカーと家電量販店両社による協業マーケティングの力を鍛えていきたい」と三輪氏は語る。Twitterが両社の製品の売り上げ拡大に「直結する」重要なプラットフォームになっていることは間違いない。

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