脱ハンコ・ペーパーレスは、もはや国力の問題だ コンカーとクラウドサインが抱く強い危機感
※1 ITR「ITR Market View:予算・経費・就業管理市場」経費精算市場:ベンダー別売上金額シェア 2014~2019年度予測。
紙とハンコは生産性を低下させ、
無駄なリードタイムを生む
――日本は海外主要国と比べてペーパーレス化が後れていると言われ、ハンコ文化も根強いものがあります。これらは日本の企業、そして日本経済にどのようなデメリットをもたらしているでしょうか。
三村 ずばり、生産性を低下させると考えています。紙を社内外に回覧し、押印や確認をするというだけでかなり生産性が落ちますよね。
最近はリモートワークが普及しつつありますが、紙やハンコのような物理的なアクションのためだけに会社へ出社しなければならない企業が多数存在します。請求書業務に焦点を当てた当社の調査によれば、75%の企業がそのためだけに出社したことがあると回答しました(下図)。
橘 まったく同感ですが、私はさらに日本全体の企業競争力が損なわれているとすら感じています。
例えばNDA(秘密保持契約書)を2社間で締結する際、紙とハンコだとだいたい2~3週間かかります。ただ事業提携の話をしたいだけなのに、NDAが締結されていないから1カ月待たなくてはならない。その間、ビジネスは全く進まないわけです。1カ月というリードタイムはイノベーションを競うスタートアップにとっても、資金調達を急ぐ企業にとっても致命的です。
私が弁護士として企業再生案件を担当していたとき、契約内容には関係者全員が合意しているのに、ハンコリレーのためだけに東京・広島・香港を契約書が乗った飛行機が何度も行き来し、手続き完了までに1カ月以上かかったことがありました。1秒でも早く対応しないと不渡りになるおそれがある状態にもかかわらず、です。
三村 直接的な価値を生み出さない業務にそれだけの時間が浪費されることには危機感を覚えますね。
だからこそコンカーは、間接業務にかける時間をなくすためのクラウドサービスを提供しているのですが、当社調査によればビジネスパーソンは毎月平均48分間も経費精算に時間をかけていることがわかっています。
経費を報告して立て替え金額を戻してもらうためだけの業務なのに、紙とハンコを使っているためにわざわざ外回りの営業職が週末に出社することもあります。まさに橘さんのご指摘どおり、競争力がおのずと削がれる環境だと思いますね。
橘 営業パーソンといえば、売り上げをなんとか立てるため、月末になると新たな商談をストップさせて申込書を回収するためだけに日本中を飛び回る姿が見られます。
まったくの無駄ですし、10年後から見たら笑い話になるようなことをまじめにやっていることに危機意識を持たなくてはなりません。
DXにはシステム導入だけではなく
意識改革が不可欠
――紙とハンコが生産性を低下させるばかりか、日本全体の国力すら奪っているというわけですね。しかし、そのことに気づいていない企業も多そうです。実際、コロナ禍で政府が「脱ハンコ・デジタル化」を強く打ち出している中でも“対応しようとしない”残念な企業が一定数存在しますが、なぜかたくなに変わろうとしないのでしょうか。
三村 トップと現場の足並みがそろわないと、どうしても対応が滞ります。トップが強い意志を持つのはもちろん大切なことですが、実は現場がついてこないケースも意外と多いのです。
その理由として多いのが「仕事がなくなる」ことへの抵抗です。生産性が向上すると業務の総量が減るので、紙ベースだからこそ存在していた仕事がなくなるのは事実です。
ただ、コロナ禍で忘れられがちですが生産年齢人口は確実に減少していきますので、システムで自動処理できる仕事から、新たな付加価値を生む仕事へとシフトしないと業務全体が回らなくなります。トップがそういった視点まで含めた新たな業務フローを示す必要があります。
橘 しっかりと実績を積み上げてきた企業であればあるほど、業務フローの改革は難しいということを実感しています。数万人が数十年、100年とそれぞれのガバナンスの中で作り上げたものを変えようとするのは、全社を挙げての大プロジェクトになりますから。
むしろ、変革の仕組みを提供する私たちのようなベンダー側の意識が非常に重要だと考えています。どのような意識を持って、どのようなところから取り組めばいいのか。
コンカーさんもそうだと思いますが、私たちクラウドサインも、多数の導入実績で築いたノウハウを生かし、お客様企業に寄り添ったサービスの提供を心がけています。
三村 ただ、「脱ハンコ」もそうですが、国を挙げてDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推し進めてきたことで、重い腰をあげて改革に臨む企業が増えていることは確かです。
DXはテクノロジーの話と位置づけられがちですが、実際は現場で働く人たちのマインドに左右されます。システムだけを導入しても「仏作って魂入れず」の状態に陥りますので、身近でわかりやすい経費精算業務を「DXの先頭バッター」と位置づけて当社のクラウドサービスを導入する企業が最近急増しています。
2020年10月に電子帳簿保存法が改正され、適用要件を満たす企業は領収書や請求書はすべてデジタル保管できるようになったことも大きいですね。ちなみに、当社のお客様企業の中ではファーストリテイリングや味の素、三井不動産、塩野義製薬など全体のおよそ3分の1にあたる420社が電子帳簿保存法に対応しており、3年以内に9割の企業が対応すると見ています。
橘 法律の改正や新たな解釈は、変革の大チャンスですね。2020年6月に内閣府と法務省、経済産業省の連名で「押印しなくても契約の効力に影響は生じない」と明記した文書が出されて以降、クラウドサインの導入社数は急増しました。
2020年の1年間だけでも、各業界のトップ企業をはじめとする大手上場企業に導入いただいたほか、2020年12月からの3カ月で2万社が導入しています(下図)。
とりわけ大手企業は、コロナ禍だからこそ社員や取引先の安全を保護したいとの思いを強く持っているのが特徴的で、ビジネス界全体の意識が大きく変わりつつあると受け止めています。
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時代の転換点で
改革に踏み出すかどうかが問われる
――政府の方針や法律の側面からも、改革を後押しする風向きになっている状況であることがよくわかりました。そこで、両社のサービスを導入し改革の波に乗ると企業にとってどのようなメリットがあるのか、改めて教えてください。
三村 コンカーの場合は、まず経費精算の業務時間が削減できます。横浜ゴムは年間で75%の削減を実現しました。
また、法人カードや交通系ICカードのようなキャッシュレス決済にシフトすることで、領収書を台紙にのり付けしたり、表計算ソフトや経費精算システムに入力したりする必要もなくなります。決済した瞬間に、コンカーへデータが飛んできますから。会計ソフトともデータ連携すれば、経理業務にかかっていた時間は圧倒的に少なくなります。
さらに、いつ誰がどういった経費を使ったかという情報もデジタル化されるため、管理職にとって面倒だったチェックが不要となるほか、違反や不正もなくなります。電子帳簿保存法に対応すれば、紙の原本を残す必要もありませんし、いつでもどこからでもオンラインで検索できるようになります。また、デジタル化することで経費利用データが可視化され、削減すべきポイントが明確になるのも大きなメリットだと思います。
橘 クラウドサインのわかりやすい事例としては、ある人材サービス大手企業が年間2300万円の導入効果があると試算しています。従来は、企業が求人を依頼してから開始まで数週間かかっていたのが、契約手続きと申し込みのリードタイムを大幅に短縮できるようになり、ビジネスの付加価値と顧客体験を向上する効果があると考えていると聞いています。
契約締結の冗長なリードタイムが自社の競争力を損ねていると捉え、業務フローの大変革が経営の最重要項目だとコミットメントすることが、日本経済を成長させるうえでも非常に重要だと思っています。
三村 私は、何のバリューも生み出さない経費精算業務を世の中からなくすのがコンカーの使命だと考えているのです。様式が異なる領収書や請求書を正確に読み取れるAI-OCRのように、成熟しつつあるデジタル技術をフルに活用して経費精算業務を消滅させ、ハンコと紙がこんなに生産性を低下させていたのだと早くビジネスパーソン全員に感じていただきたいですね。
当社の経費精算クラウドもそうですが、クラウドサインの電子契約はファーストコンタクトから契約締結まですべてリモートで完了するので、一刻も早く導入することが社会の改革につながると確信しています。
橘 ありがとうございます。コンカーさんは「働きがいのある会社ランキング」(※)で1位を受賞されていますし、サービスの展開を通じて貫く改革への姿勢にずっと感銘を受けてきました。(※GPTWジャパン「働きがいのある会社ランキング」2021年版中規模部門)
私たちの取り組みは取引インフラの根本的な見直しであり、ペーパーレスはSDGsの文脈でも非常に重要です。ぜひご一緒に社会を変え、持続可能な世界を作り上げていきましょう!
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