豊かな教育・研究環境が拓く日大理工の新世紀 伝統の実学と学系を越えた学びが未来を創る
日本大学理工学部長 青木 義男 Yoshio AOKI
1980年日本大学理工学部機械工学科卒業。1985年日本大学大学院生産工学研究科博士後期課程機械工学専攻修了。米コロラド大学工学部航空宇宙工学科客員研究員を経て2005年より日本大学理工学部教授。2020年10月に学部長に就任。
コロナ禍での創設100周年。理工が実現した授業体制
──100周年を迎えた昨年、「コロナ禍でも決して教育の質を落とさない」という強い意志のもとでスムーズなオンライン移行を実現したそうですね。
青木 理工学部でいえば、実は3月上旬にはオンライン授業の体制づくりに着手していました。しかしながら、われわれは大学院と併設の短期大学部含めて約1万人の学生がいます。学生の中には、ネット環境が整っていない人や、PCはもとよりスマホすら持っていない人もいました。
そこで、あらかじめ学修管理システム(LMS)を導入していた学科の知見を活用し、支援組織を立ち上げました。本学部の全14学科が連携し、教職員で綿密に情報共有を行い、履修登録や新入生向けのガイダンス動画を用意して4月20日には無事授業を開始できました。GW明けに初めてオンライン授業を開始していた大学も多かったようですが、本学部ではGWをそれまでの課題やトラブル解決の期間に充て、対面授業と同じ全15週分の授業をオンラインで行いました。
──理工学部には実験が欠かせませんが、オンラインではどう実施したのですか?
青木 教員が撮影した実験動画を配信しました。実験は結果を覚えるだけでは本当の学びになりません。そこで、臨場感にこだわり、手順、プロセス、そして結果までを丁寧に撮影しました。例えば、従前、金属加工の授業は実際に作業着を着てもらい切削加工を体験する安全教育を必ず行っていましたが、それも動画を授業で流しました。
機械にかなり接近し、加工の仕方で表面の粗さが大きく異なることなどをリアルに感じてもらえるように工夫しました。
高度な研究施設を学生に還元
──貴学は豊富な研究施設や機器を保有していますが、それらは教育にどう活用されているのでしょうか。
青木 創設100年の歴史の中で国内随一の高度な研究施設・実験機器を整備しており、外部機関からの貸し出し依頼も多くいただいています。それは、本学が「実践教育」を大切にしているからです。今の時代、ネットからあらゆる知識が手に入るため、教育は知識を与えるものではなく、知識を活用し創造できるようにする「自主創造型パーソン」を育てるべきだと考えています。そのためには、これらの教育・研究施設を使い、成功と失敗を自ら体験し、自分の言葉で説明できるようになることが重要です。
日本大学理工学部には、未来社会を担う「つくりびと」を育成する環境がすでに備わっているといっても過言ではありません。Society 5.0で求められる概念実証―実現性、効果とコスト、具体性の検討―やオープンイノベーションに相応しい教育・研究環境であると自負しています。