「脱炭素」時代、太陽光発電を選ぶべき理由 再生可能エネルギー活用でどう未来が変わるか

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政府は昨年10月、成長戦略の一環として「経済と環境の好循環」を掲げ、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「2050 年カーボンニュートラル」を宣言した。欧米ではすでに脱炭素経済への移行が進行する中、日本も本格的に気候変動対策への強化へ舵を切った格好だ。こうした中、企業はどのように対応すべきなのか。再生可能エネルギーを取り入れるにはどんな選択肢があるのか。中国に拠点を置く太陽光パネルメーカーの日本法人であるインリー・グリーンエナジージャパン代表の山本譲司氏とソフィアバンク代表の藤沢久美氏が語り合った。

「集約型電力」から「分散型電力」へ

山本 中国の太陽光パネルメーカーとして、日本には再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)がスタートした2012年に進出しましたが、それ以降、最近ではSDGsやESG、RE100といった国際的な枠組みの高まりの中で、「脱炭素」が大きく注目されています。欧米と比べ、日本の対応は大きく遅れてはいないものの、実際の普及が本格化するのは、まさにこれからという状況にあります。電力の再生可能エネルギー100%を目指す指標「RE100」を基準に算出すると、日本はまだ「RE18」のレベル。今も80%以上の電力を火力発電などに、しかもその燃料をほぼすべて外国からの輸入に依存しているのです。脱炭素化を進めるためには再生可能エネルギーによる分散型電源の普及と、それを支える新たなエコシステム、新たな産業構造を迅速に構築していく必要があると考えています。

インリー・グリーンエナジージャパン代表
山本譲司

藤沢 温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を政府が宣言して以降、多くの企業では今、その対応に追われている状況です。これまで企業は2050年時点でCO2排出を3割減にする方向で動いてきましたが、新たな戦略を練り直す必要に迫られているのです。また、今年ダボス会議で発表された2021年版「グローバルリスク報告書」でも、その上位リスクのほとんどが環境リスクに関する警告でした。これは欧米が本気でルールセットして「グリーンシフト」しようとする証左でもあります。国際企業では国内企業以上に脱炭素への問題意識を高めているという状況となっています。

ソフィアバンク代表
藤沢久美

山本 日本では昨年末から1カ月以上、電力需給の逼迫が顕在化した状況が続きました。需給逼迫の主な要因には、寒波による冷え込みで電力需要が増加したことに対して、火力発電燃料のLNG(液化天然ガス)の調達不足があると言われています。電力は需要と供給を絶えず一致させ、バランスを保たなければならず、そのバランスが崩れると電力が不安定になったり、最悪の場合、停電したりしてしまいます。したがって需要予測を立てたうえで、その瞬間ごとに全く同じ量の供給を準備する必要があるのですが、そもそも私たち需要側は供給側の都合を一切考えずに電気を使っています。

火力発電を中心とした集約型電源システムを採る日本は、莫大なコストをかけてその電力オペレーションシステムを維持してきました。しかし、それも見直すタイミングに来ているのではないでしょうか。経済活動のための電力とライフラインのための電力がこの同じ集約型の電力システムに依存していることは非常に危険なことなのです。

しかし、例えば、戸建ての住宅の屋根に太陽光発電システムを設置し、電気を使うところで発電することができれば、火力発電による大きな需給バランスのシステムへの依存度を減らせるでしょう。その意味で、まずはライフラインに関わる電力を集約型から分散型にシフトすべきだと考えています。それがなかなか進まないのは、トップダウン方式で対応しようとするからです。そもそも地理的に分散している電力需要に対して、これから本格的に分散型電源としての再生可能エネルギーを普及させていくには、ボトムアップ方式を主軸に考えていくべきです。

再生可能エネルギーの中で、太陽光発電を選ぶ理由

藤沢 私も、山梨県にあるオール電化の自宅で、極寒の中、停電を経験したことがあります。そのとき、電力を自給自足できるようにしなければ、今後災害が起こったときにどうなるかわからないことを実感しました。今後は自宅に太陽光パネルを設置するなど脱炭素化についても個人単位で行動変容していくしかない。しかし、そう思ったときにサポートしてくれる設計や施工などのプロフェッショナルが少ないことも、あわせて実感しました。そのことも再生可能エネルギーが定着していかない問題の1つかもしれません。電力を分散型にするために、国が個人を直接サポートするのもいいですが、同時に太陽光のプロフェッショナルなどを増やして体制を整えていくことも大事だと思います。

山本 まさにご指摘の通りです。2012年にFITがスタートして以降、この9年間で電力需要家が太陽光発電を導入するコストは劇的に減少しました。また、太陽光パネルは30年以上の稼動も可能で非常に耐久性も高く、太陽光発電は再生可能エネルギーの中でも、圧倒的に長期的なコストパフォーマンスに優れており、経済合理性が高いと言えるのです。しかし、FITの経済メリット先行で進んできた産業ということもあり、太陽光発電のもたらす本質的な価値を本来のエンドユーザーである需要家に対して十分に示すことができていないことは事実であり、その供給体制を整えることが普及を後押しすると考えています。

藤沢 自宅や工場の屋根などに設置できる太陽光発電は、企業や個人で自己完結することができるというメリットがあります。地方自治体でも独自に発電事業会社をつくろうとする動きもあります。とくに太陽光パネルを設置するための土地がたくさんある地方は導入面で有利でしょう。地方に多くの工場を持つ企業も、独自に太陽光発電を進めるという選択肢があります。

山本 日本で今後太陽光発電のポテンシャルがあるのは屋根、平坦な土地、駐車場の3つのみです。電力需要の小さい地方のほうが再生可能エネルギーに恵まれているためエネルギー自給的には有利です。企業についてはマネジメントの観点からも、まず3つのポテンシャルが生かせるのであれば、太陽光による自家発電・自家消費をすることによって、まず電力の調達リスクをヘッジするとともに脱炭素化、同時に長期的な電力コストの削減、さらに蓄電池と組み合わせれば、災害時の緊急対応において、スマホ充電など地域住民のライフラインの支援拠点として活用することもできるでしょう。

SDGsとESG投資における太陽光発電の役割

藤沢 太陽光発電の導入はSDGsやESG投資が活発化する中で、企業に多くのメリットをもたらすでしょう。実際、アメリカの機関投資家の8割はESGを基準に投資先を選別しています。これからは脱炭素を実行しているかどうかで企業が投資家から選ばれる時代なのです。いかに事業で再生可能エネルギーを活用していくのか。早く着手すればするほどノウハウも蓄積されます。また、それが新たなビジネスに発展していくかもしれません。海外で実験をして、国内にノウハウを持ち込んでもいいのです。とくに先進的な大企業では「RE100」の実現に向けて強い問題意識を持っていると感じます。

山本 これから企業が太陽光発電を活用していくためには、分散型電源インフラ整備のためのエコシステムの構築が重要です。そのためにもパートナーとのアライアンスを強化していきたいと考えています。私たちは再生可能エネルギーを選択する各需要家に合わせて、コンサルティングからシステムインテグレート、資金調達、設計・施工・維持管理を含めてフルカスタマイズされた提案をすることができます。こうしたノウハウを広く共有することで、さらに多くのパートナーと共に「脱炭素化エコシステム」を構築していきたいと考えています。

藤沢 蓄電池の進化も欠かせないでしょう。これから高性能の蓄電池が生まれるかどうかで太陽光発電の広がりも変わっていくはずです。一方、日本では、自然災害が各地で頻発しており、災害に伴う停電の際、自分たちの身を自分たちで守るという観点からも、太陽光発電は有効な選択肢になっていくと思います。

山本 海外では今、蓄電池の低価格化が一気に進み、脱炭素の時代を実現するためにドラスティックにエネルギービジネスが変わろうとしています。その中で、私たちは蓄電池をうまく活用しつつ、究極的には住宅ではオフグリッドハウス(電力会社に頼らず、平時も災害時にも電力を自給自足できる家)、産業用では大型蓄電池によるRE100(災害時には地域の避難拠点となる)を目指す企業・自治体のプロデュースを手がけていきたい。そのためにもボトムアップ方式のもと、インフラ産業としての信頼を着実に築き上げながら、日本の脱炭素社会実現に向けてより多くの電力需要家のサポートさせていただきたいと思っています。

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