「インドでも大成功」ダイキンの勝因がこれだ

「競合と価格で勝負するつもりはない」の真意

世界中に100以上の生産拠点を持ち、150を超える国と地域で事業を展開しているダイキン。大きな特徴は、日本、欧州、北米、中国、アジアでバランスよく収益を上げていることだ。中でもアジア最大の市場であるインドでは、急速な成長を遂げている。ダイキンがインドに進出し、事業を大幅拡大したのはここ10年だ。海外の競合もひしめく中、ダイキンがインドの地で躍進した理由はどこにあったのだろうか。その勝因をひもといた。

「競合企業と、価格で勝負するつもりはない」

世界7位の広大な面積の国土に、約13億5000万人と中国に次ぐ人口を有するインド。ここで空調事業トップクラスの座を獲得しているのが、ダイキンだ。ダイキンがインドに進出したのは2000年、大きな事業拡大を図ったのが2010年から。わずか10年間で、一気に躍進したというわけだ。ダイキングループのインド法人・ダイキンエアコンディショニングインド社(以下、ダイキンインド)で取締役社長 兼 CEOを務めるカンワル・ジート・ジャワ氏は、その勝因についてこう語る。

ダイキンエアコンディショニングインド社 取締役社長 兼 CEO
カンワル・ジート・ジャワ

「大きな転機は、2009年にインド北部のニムラナに工場を設立したことです。インド国内でエアコンを生産できるようになったことで、従来よりも安い価格帯の製品を供給することが可能になりました。それまで、インド市場に投入する製品はタイの工場で生産し輸入していましたが、中国や韓国の競合企業に比べると、かなり割高になっていたんです」

ジャワ氏がダイキンインドの社長に就任したのは2010年のこと。複数の空調メーカーのインド法人で要職を務め、40年以上空調業界に携わってきた経験を買われた。「国土の広いインドでは、地域により気候も空調ニーズも大きく異なりますので、それに対応できる幅広い製品をラインナップすることが非常に重要。競合企業と、価格で勝負するつもりはありません」とジャワ氏は断言する。

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インドには高温多湿というイメージがあるが、冬場には0℃近くまで気温が下がる地域もある。「当社には、気温が54℃でも運転できる製品がある一方、冬場に寒くなる地域では、暖房機能が付いた製品を販売しています。地域ごとにどんなエアコンが必要とされているか、見極めて戦略を立てています」。

インドはインフラ整備も発展途上だ。日本と比べれば電力事情がよくなく電圧が不安定で、過電圧により電装品が破損することも珍しくない。「そこで電圧の安定化装置を備えた、壊れにくいエアコンを開発しました。また都市部ではダイキン独自の空気清浄技術ストリーマを搭載した大気汚染に強い製品、海風にさらされる沿岸部では腐食に強い製品を開発するなど、地域ごとの事情に合わせたエアコンを供給しています」。

さらに、悪路を搬送中にエアコンが破損してしまうことも多々ある。ダイキンは、フレームとボディーが一体となった「モノコック構造」でエアコンの強度を高めているほか、梱包などもインド用に改良している。

インド国内を「5つに分割」してマーケティング

このようにダイキンが地域のニーズを徹底的にくみ取り、それに対応した製品を投入する背景には、「市場最寄化(もよりか)」という考え方がある。現地に自前の販売会社や開発・生産拠点をつくり、それぞれの国や地域に合った製品をできるだけ短いリードタイムで供給しようとするものだ。投資も積極的に行っており、例えばインドでは2016年にR&D(研究開発)センターを設立した。既存の工場についても、生産能力の拡充を進めている。

ダイキンインドのR&Dセンター

「もともと当社は性能が高いエアコンを作っていましたが、インドではそのこと自体あまり知られていませんでした。その状態を打破すべく、研究開発と並んでマーケティングにも力を入れるようにしたんです。ユーザーのニーズを熟知するためにまず行ったのは、インド全土を5地域に分けたきめ細かなマーケティング戦略。認知度アップはもちろんのこと、ダイキンというブランド=信頼できるエアコン、というイメージにつながるよう、広告戦略も積極的に行っています」

そのマーケティング活動を支えるのが、インド現地に根を張るダイキンの販路だ。2009年に300店弱だった同社のルームエアコン取扱販売店は、2020年には1万店を超えるまでになった。デリーやムンバイなどの大都市だけでなく、人口50万人程度の地方都市にも拡大している。

わずか12年ほどで、インド国内における空調事業トップクラスの売り上げを誇るまでに成長したダイキン。ジャワ氏はさらにどのような成長戦略を描いているのか。

「順調に伸びているものの、インドにおけるルームエアコンの普及率はまだ6%程度にすぎません。もちろんその分、成長の余地は非常に大きい。インドでは中間所得層が増えており、これまでエアコンを使っていなかった人たちも購入ターゲットになってきています。そのニーズにしっかり応えていきます。150カ国に広がるダイキングループのフィロソフィーとして『つねに他社の一歩先を行く』ということがある。これに沿いながら、持続的な成長を図っていきます」

ダイキン流「現地に根付く人材育成」

世界150カ国に展開するグローバル企業・ダイキン。その強みは何といっても、拠点各地の「現地に根付く」人材育成にある。実際にインドの工場に隣接する研修所では年間延べ2万5000人に、営業からエアコンの据え付け、アフターサービスまでさまざまな研修を行っている。近年はさらに、大学や職業訓練校との連携によるトレーニングセンターをインド国内20カ所で展開。技術者の育成にも努めている。

「さらなる技術力向上を狙い、人材育成に注力しています。ダイキンにはもともとグローバルに経験を積みたいというモチベーションの高い人材がそろっていますが、技術やマーケティングにならび『人材』についても投資することで、さらに組織として強くなると考えています。

社として、直近の目標を3つ立てています。1つ目は、グローバルでの拡大を目指す低温事業を育てたい。すでに、伊・ザノッティやオーストリア・AHT、英・J & E Hallといった冷凍・冷蔵事業に強い企業を複数M&Aして、その基盤をつくってきました。

2つ目は、インドで築いてきた業界トップレベルの立ち位置をより強固なものにしていきたいです。数値としては、インドにおけるエアコンの普及率を15%ほどに高めたいと考えています。

そして3つ目は、アフリカ市場を拡大することです。すでにアフリカ進出は済ませていますが、伸びしろの大きい非常に有望なマーケットだと見ています」とジャワ氏は将来を見据える。

アフリカのほか、インドに近い東アジアでも、ダイキンインドの経験を踏まえて水平展開していく考えだ。150カ国で展開するダイキンが狙うグローバル戦略のうえで、インドにおける成功体験は非常に重要な意味を持っている。

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