アドビが「コンサルに注力」するこれだけの理由 「成果が出る組織」に導く、アドビの経験がカギ

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企業にとって、今必須とされるのがマーケティングのデジタル対応だ。しかし、単に最新ツールを導入すればいいというものではない。戦略立案からシステム構築、コンテンツ管理まで、取り組むべき施策は多々ある。それらを支援するコンサルティングサービスを展開しているのが、アドビだ。アドビと聞くと、「Illustrator」や「Photoshop」といったクリエイティブ関連のソフトウェアを思い浮かべる人が多いだろう。そのアドビが、なぜコンサルティングを強化しているのか。

自社が追求する「顧客体験」を明らかにすべき

企業が勝ち残るために、自社のマーケティング活動をデジタルに対応させることが欠かせない時代になった。とくにコロナ禍で顧客と対面での接点を持つことが難しくなった昨今、企業のマーケティングにおいては、「顧客体験の向上」がさらに重要となっている。

とはいえ、知見を持たないまま一足飛びにデジタルへの対応を行うのは危険だ。最新のソリューションを導入しても、それが自社のビジネスに合っていなければ、かえって顧客体験を損なうおそれもある。アドビ カスタマーソリューションズ統括本部 プロフェッショナルサービスセールス本部 本部長の田口恭平氏は、マーケティングのデジタル対応における必須の視点についてこう説明する。

アドビ カスタマーソリューションズ統括本部 プロフェッショナルサービスセールス本部 本部長
田口 恭平

「デジタルの普及により、企業がさまざまなタッチポイントで顧客とコミュニケーションを取れるようになりました。その結果、ビジネスにおいて『顧客体験をどう向上させるか』がとても重要な要素になってきました。けれども、大事なのは顧客体験を一時的に向上させることではありません。顧客体験を継続的に高める『顧客体験管理(Customer Experience Management:以下、CXM)』の発想が求められます」

では、企業はそのために何を考えるべきなのか。田口氏の考えはこうだ。

「まずは、自社が追求すべき『顧客体験』について定義する必要があります。例えば、ニッチな製造業なら、既存サービスをオンライン化するだけで顧客体験が向上するかもしれません。一方IT系企業なら、オンラインですべて完結するのは当たり前。スピード向上などの付加価値が必要です。企業によって顧客体験の基準値は異なるはずで、その根本から考えていかないと、CXMは実を結びません」

デジタル活用を顧客体験の向上につなげるには、戦略策定やそのためのシステムの設計、システムを運用する組織づくり、リリース後の効果測定や改善など、施策全体を踏まえたデザインが欠かせない。この一連の流れをワンストップで支援しているのが、アドビのコンサルティングサービスというわけだ。

「すべての人に『つくる力』を」というキャッチコピーのもとに作られている、「Creative Cloud」。いつでもどこからでも、アイデアを形にすることができる

あまり知られていないが、アドビのこのコンサルティングサービスには長い歴史がある。同社がWeb解析ツールを持つ米・Omnitureを約18億ドルで買収したのは2009年のことだった。Omnitureは1996年の創業時からWeb最適化のコンサルティングサービスを提供しており、アドビによる買収後はそれをさらに強化。コンサルティングサービスの経験は、20年以上に及ぶ。

もちろん、単に歴史があるだけではない。時代の経過とともに、顧客層も厚くなってきた。「例えば15年前、デジタルマーケティングに取り組んでいる業界は限定的で、IT企業が中心でした。しかし5年ほど前から、ITを使ってユーザーと積極的にコミュニケーションを取ろうという潮流が、さまざまな業種で生まれています。当社のコンサルティングサービスの顧客も、大企業を中心に年々拡大しており、現在年間プロジェクト件数は300件を超えています」(田口氏)

顧客体験向上のカギは「データとクリエイティブ」

では、アドビのコンサルティングサービスはなぜこれほど多くの企業に支持されるのか。田口氏は、「データとクリエイティブ、両方に強みを持つことが大きい」と分析する。

「『顧客体験』を因数分解すると、『ユーザーが何に興味を持ち、いつどこで何を買ったか』といったデータで導かれる要素と、『ユーザーの心は、どのようなデザインによって動いたのか』という、クリエイティブが支える要素に分けられます。どちらが欠けても顧客体験の向上は難しい。当社はその両方について、豊富なノウハウを持っています」

アドビがクリエイティブのエキスパートであることは、Illustratorや Photoshopといった製品を擁していることから関連性をイメージしやすい。実際アドビ社内にはデザインの専門組織があり、制作会社が担うようなクリエイティブの機能、デザイン制作やUI/UXに関わるサービスも有している。

Creative Cloudは、あらゆるデバイスから共同作業できる点も便利。業務効率性をぐっと向上させる

もう一方は、「データ」に関するコンサルティングだ。企業を「データドリブン」に導くアドビのコンサルティング力は、どのようにして培われたのか。キーワードは「カスタマー・ゼロ」だ。

「カスタマー・ゼロは、『アドビ自身が自社のサービスの顧客である』という意味です。当社は、それまでパッケージ製品として販売していたIllustratorや Photoshopを、2012年にサブスク型の『Creative Cloud』転換しました。どのユーザーがいつどのアプリを立ち上げて、どのくらいの頻度でログインしているのかといったデータをリアルタイムで取れるようになったのです。そしてオペレーションモデル構築プロジェクトを立ち上げて、データドリブンな顧客体験の向上につなげました。その結果、14年は約17億ドルだったCreative Cloudの売り上げが、20年には77億ドル超まで伸びた。アドビ自身の成功体験を基に、ユーザーにもデータに基づいて顧客体験を向上させ、成果に結び付けるためのモデル構築に対してコンサルティングサービスを提供しています」

アドビは「テクノロジーの力を信じている会社」

コンサルティングサービスの強みはほかにもある。デジタルマーケティングの世界では、戦略部分はコンサルティング会社に、実装はSIerになど、パーツごとにアウトソーシングするケースが多い。しかしアドビは、これらすべてのプロセスを一気通貫で提供し、さらに効果を出して改善につなげるところまで数年単位で寄り添う。「どこから手をつけていいかわからない」「最後まで面倒を見てもらいたい」という企業には心強い存在だ。

作成した素材は、Creative Cloudライブラリに保存できる。デスクトップやモバイルから利用できるのはもちろん、ほかのメンバーと共同利用することも可能だ

導入支援にとどまらずフォローまで手がけるのは、「アドビはソフトウェアベンダー。成果が出る段階まで伴走して、ソフトウェアを使い続けていただきたい」(田口氏)という狙いがあるからだ。実際、コンサルティングサービスは利用継続率が高く、顧客からの信頼は厚い。

「アドビは、テクノロジーの力を信じている会社です。ただ、それを導入するだけでユーザーの希望をかなえられるかというと、必ずしもそうではありません。テクノロジーの効果を100%以上引き出すために、導入後の運用や組織づくり、構築をどうすればいいのか。それらを相談できるパートナーとして、ぜひ当社に頼っていただきたいです」と田口氏は胸を張る。

マーケティングのデジタル対応の重要性は重々わかるが、具体的に何をしたらいいのかわからない。そんな素朴な疑問を抱える企業を変えるカギは、意外にも「アドビ」にあるようだ。

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