中堅・中小が狙うべき「95点のセキュリティ」 デバイス選定も「まず廉価にやってみる」がカギ

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コロナ禍で、企業にはテレワークの推進などニューノーマルへの対応が求められている。しかし、多くの中堅・中小企業はリソースやノウハウに乏しく、大企業と同じ方法での対応には無理がある。結果、生産性が低下するケースも目立っている。そこで、未来調達研究所の坂口孝則氏と日本HPの大津山隆氏に、中堅・中小企業がまず取り組むべき内容と姿勢について聞いた。
コンテンツサマリー
 ー中堅・中小企業はDXを大げさに捉えすぎている

 ーリアルとオンラインの差を埋める“没入感”の作り方
 ー最小限の労力で「95点のセキュリティ」を

中堅・中小企業はDXを大げさに捉えすぎている

――コロナ禍で、中堅・中小企業のニューノーマル対応はどこまで進みましたか。

未来調達研究所
坂口 孝則

坂口 2020年は「ソーシャルディスタンス」や「3密回避」が話題になりましたが、一方で中堅・中小企業の“デジタルディスタンス”や“3密取引”もあらわになりました。“デジタルディスタンス”は、リモートワークを求められても紙や対面から離れられず、デジタルと距離を取ること。“3密取引”は、取引先や調達先を拡大せずに、密室・密談・密約で同じ相手とビジネスを続けることです。

コロナ禍を生き抜くには、分散を前提としたデジタル活用が必要です。しかし、ここに手をつけていない中堅・中小企業は依然として多い。今年は、“企業基礎疾患”とも呼ぶべき古い体質の改善に取り組む1年になるのではないでしょうか。

日本HP
大津山 隆氏

大津山 中堅・中小企業も徐々に変化しています。「仕事は対面でやるものだ」というカルチャーが根強いところもありますが、コロナ禍で大企業などの取引先から「訪問してくれるな」と言われる事もあり、リモートに対応せざるをえない状況も出てきました。

昨年11月、従業員300人以下の企業500社を対象に調査を行いました。在宅勤務に当たり導入したものとして、「軽量なモバイルPC」「画面が大きいノートPC」「ビデオ会議システムのライセンス」が上位に挙がりました。顧客とオンラインでコミュニケーションを取るために、大急ぎで取りあえず最低限の環境が整えられたことがうかがえます。

出典:「2020年の中堅・中小企業のPC調達・環境整備状況リサーチ」(11月中旬実施・対象500社、日本HP調べ)

一方、坂口さんが指摘されたように、いまだに古い体質を引きずっているところも多い。一歩踏み出した中堅・中小企業がある中で、なかなかデジタル化に舵を切れない理由は何なのでしょうか?

坂口 まず、高齢化した経営者がデジタルを拒絶しているという問題があります。しかし、こればかりは世代交代が進まないと難しい。厄介なのは、関心はあるが取り組まない企業です。そうした企業はおそらく、DX(デジタルトランスフォーメーション)を大げさに捉え、「大企業と同じことはできない」などと考えているのではないでしょうか。

大企業にはお金があって、社内にエンジニアも抱えているので、デジタルの仕組みを自社で作れます。しかし実際は、わざわざゼロから仕組みを作る必要などありません。廉価あるいは無料で提供されている既存のサービスを組み合わせれば、中堅・中小企業でも簡単にデジタル化ができますよ。

私が顧問を務める不動産会社は、コロナ禍でも飛び込み営業を続けようとして、訪問先から「配慮が足りない!」とお叱りをいただきました。そこでやむなくオーディエンス広告のサービスを導入したところ、何と飛び込み営業と変わらない成果が出ています。デジタルを「つくる」ではなく「使う」という発想になれば、最初の一歩を踏み出しやすいと思います。

大津山 最初から完璧を目指すべきではないですね。とにかくやってみれば、足りないところが見えてきます。私は昨年2月から在宅勤務を始めましたが、最初にやったのはネットワーク環境の見直しでした。近隣住民もことごとくリモートワークになったので、インターネット回線が一気に重くなったんです。やらないと気づかないことは多いですから、まずは動くことが大事です。

坂口 デジタル化といっても、確かに限界はあります。例えば、普通の商談ならリモートでも可能ですが、一度も会ったことのない人と10億円の案件を成約させる場合、さすがにリモートには抵抗があるでしょう。すべてをデジタルに置き換えるのはそもそも無理。やれそうなところまでできればいいという考えで、まずはスタートを切ることが大事です。

リアルとオンラインの差を埋める“没入感”のつくり方

――実際にリモート対応を始めた企業では、現在どのような課題が浮上していますか。

大津山 先ほどの中堅・中小企業の調査で、従業員が欲しているものと、会社が実際に導入したものとに最大のギャップがあったのは「画面が見やすいモニター」でした。緊急対応でモバイルPCを買ったものの、画面が小さくて生産性が落ちるため、オフィスと同じ大きなモニターを欲する人が少なくないようです。

坂口 ある評論家で、ホワイトカラーの仕事は「資料を作ること」と定義する方がいます。私の仕事も大半は資料作りですが、画面が大きいだけで効率がまったく違うんですよね。今はモニター2台をつないで使っていますが、生産性を考えると、もう1台には戻れないです。

大津山 「マイク」や「スピーカー」などリモート会議の音質に課題を感じる方も多いです。日本HPのPCはノートPCの多くに複数のマイクが付いているなど、もともとクリアなコミュニケーションのため音質にこだわって設計されています。1人のときは前のマイクの指向性を上げ、逆に複数人でPCを囲むときは背面のマイクもオンにして広く会話を拾います。ノイズキャンセリング機能も強化されていて、リモートでも“イマーシブ”(没入的)な体験ができます。

坂口 “没入感”は、これから重要なキーワードになるでしょうね。技術が発達して臨場感が増せば、10億円にはいかずとも5億円の商談なら契約できるかもしれません。リアルとオンラインの中間を担えるデジタルツールに、期待大です。

最小限の労力で「95点のセキュリティ」を

大津山 もう1つの課題がセキュリティです。今、セキュリティの甘い中堅・中小企業を入り口に大企業に侵入する「サプライチェーン攻撃」が流行しています。2020年12月に経産省が発表した注意喚起※でも、中堅・中小企業のリスクを明言していました。とはいえ、セキュリティを突き詰めれば、「PCやネットは危なくて使えない」と、本末転倒になりかねない。大切なのは、セキュリティと、効率性や使用感との適切なバランスを見つけること。日本HPのPCは、最低限の設定だけで、電源を入れた瞬間から立ち上がるセキュリティ機能があります。ハードウェアの選択時は、こうした機能があるかどうかも1つの判断基準になるでしょう。
※出典:経済産業省「最近のサイバー攻撃の状況を踏まえ、経営者の皆様へサイバーセキュリティの取組の強化に関する注意喚起を行います」(2020年12月)

高度なセキュリティ機能を標準搭載、HPのセキュアPC。詳細はこちら>
※製品・仕様に応じて、搭載される機能は異なります。

坂口 実は大企業も、すべての業務を自前で行うわけではありません。例えば自動車会社では、中堅・中小企業からゲストエンジニアを呼び、一緒に設計や開発をしています。中堅・中小企業にもいや応なしに大企業の情報が共有されているので、セキュリティは無視できません。一方、セキュリティにばかりコストや労力をかけられないことも、十分に理解できます。最小限の労力で、95点のセキュリティを目指すのが現実的でしょう。

――最後に、DXを検討している中堅・中小企業経営者にメッセージをお願いします。

坂口 「DX」なんて難しいことを考えず、まず経営者自らがデジタルに触ってみることが重要です。日本の中堅・中小企業は、実際に現場で手を動かせる点に強みがあったはず。デジタルも同じで、頭で考えるだけではなく、まず既存のツールを触ってみれば、「こんなものか」と意外とすぐ使いこなせるのではないかと思います。

大津山 おっしゃるとおりです。中堅・中小企業の皆さんにまず手に取っていただけるように、私たちも積極的な情報発信を続けていきたいと思います。

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