JA全中協賛「アグコン2020」優勝はあの2大学

14大学がプレゼン「日本農業と食」を救う一手

農業や食の分野に興味を持つ大学生が日本中から集い、学生ならではの目線で行った調査・研究の成果を発表し競い合うアグリカルチャーコンペティション(以下、アグコン)。JA全中の協賛の下、2020年11月29日に第4回大会を開催した。毎年、東京・世田谷区の日本大学で行われてきたが、「どんな困難な時期でも明日を担う学生の学びの場を持ち続けるべき」という強い思いのもと、今回はオンラインでの開催に至った。課題解決を目指して歩みを続ける学生たちが繰り広げた、熱戦の模様をお伝えしよう。

Web上で14大学44チームの学生が集い競い合った

アグコンは2分野に分かれて行われる。仮説を立て、データなどを用いて検証・立証し、結論を導き出す「学術的分野」と、課題と解決策を設定し、実際に課題解決に取り組む「実践的分野」だ。審査員は、さまざまな研究の最前線に立つ大学教授と、JCA(※1)やJA全青協(※2)といった農業関係団体の理事・研究員などが務める。
※1 日本協同組合連携機構 ※2 全国農協青年組織協議会

今回はオンライン開催となったことで、とくに遠方からの参加が増えた。参加チームは、昨年より17チーム多い44チームで、エントリーしたのは学術的分野20チーム、実践的分野24チーム。予選の結果、各ブロック(全7ブロック)から1チームずつ、決勝に駒を進めた。

学術的分野決勝

学術的分野の決勝で最初に登場したのは、明治大学農学部中嶋ゼミ食ビジネス論研究室【食美人】。コロナ禍で思うようにフィールドワークができなかったことを逆手に取り、「Tweetから見る東伊豆町の可能性」をテーマに調査を実施。無作為に選んだ51日の間に、「東伊豆」の語を含むSNS投稿の内容を単語レベルで分析し、外から見た東伊豆地域の魅力を明らかにするとともに、新たな地元学の可能性を示した。

次はユニバーサルデザインフード(UDF)をテーマに据えた、関西大学経済学部佐々木ゼミAチーム【UDF】。大手メーカー3社の商品開発と4P分析を基に、UDFが食品業界の成長ドライブであることを立証した。

3番目は龍谷大学経営学部藤岡ゼミ【ぶどう山椒を、救い隊】。山椒の最高級品・ぶどう山椒の産地である和歌山県有田川町。この地域における交流人口創出事業を手がかりに「ぶどう山椒産地の構図と活性化戦略」を発表した。地域が抱える課題を、生産者要因、産地要因、組織要因の3つに基づき綿密に分析。山椒のニーズがヨーロッパを中心に拡大していることなど、事実関係に基づいた山椒の将来性も訴えた。最後には、関係人口(定住者や観光客とは違う、さまざまなやり方で継続的に地域と関わる人々)の増加による、産地の活性化戦略を導き出してみせた。

実践的分野決勝

実践的分野のトップバッターは日本大学経済学部フードシステム論【新海ゼミ2班】。取り組んだのは障害者が農業分野で活躍し生きがいをもって社会参画する「農福連携」だ。農業に取り組む特例子会社7社にヒアリングを実施し、農福連携を拡大するための企画提案書2通を企業に提出。店頭や直売所でシイタケを実演販売する取り組みと、その効果について発表した。

次は、関西大学経済学部佐々木ゼミ【GELATO-VEGE】。テーマは「なにわの伝統野菜×ジェラート」だ。伝統野菜は長い歴史と素材のよさ、個性を持つ一方、市場に出回りにくく後継者の確保に苦慮している。なにわの伝統野菜・勝間南瓜(こつまなんきん)の生産者と連携して、ジェラートを商品化。学んできたマーケティングの知識を生かして、SWOT分析や4P分析による販売戦略を策定し、見事に販路拡大を実現した。発表用資料には画像を多く用いて、審査員や見学者がイメージしやすいよう工夫。農家数が少なく認知度の低い伝統野菜という分野に秘められた将来性を見いだした。

3番目は日本大学生物資源科学部食品企業組織論研究室【茂木町和菓子プロジェクト・マネジメントA】。人口約1万人の栃木県茂木町に着目し、菓子による地方創生の実現を目指した。

4番目は、日本大学生物資源科学部食品企業組織論研究室【茂木町和菓子プロジェクト・マネジメントB】。前出と同じく栃木県茂木町を舞台にした取り組みで、タイヤをモチーフとした菓子を企画した。

時代を踏まえた課題設定が光った今回のアグコン

続いて、「明日の日本のために日本の農業を変える」と題した「共同宣言」が参加学生によって発表された。「農業のICT化を急速に普及させるべき」「農業の付加価値を創造するような、新しい食農教育が必要」など、学生ならではの提言を行った。

龍谷大学経営学部藤岡ゼミ
「ぶどう山椒を、救い隊」
明治大学農学部中嶋ゼミ食ビジネス論研究室
「食美人」

そしていよいよ迎えた表彰式・閉会式。学術的分野で「最優秀賞」を受賞したのは、龍谷大学経営学部藤岡ゼミ「ぶどう山椒を、救い隊」だ。リーダーの小野琢郎さんは「農業研究は難しいもので、たくさんの苦労と失敗を経てこの結果に至りました。本当に喜ばしいことです」と、感極まりながら受賞の喜びを語った。次点となる優秀賞には、明治大学農学部中嶋ゼミ食ビジネス論研究室「食美人」が選ばれた。

関西大学経済学部佐々木ゼミ
「GELATO-VEGE」
日本大学経済学部フードシステム論
「新海ゼミ2班」

実践的分野では、関西大学経済学部佐々木ゼミ「GELATO-VEGE」が「最優秀賞」を受賞した。リーダーの山村亮さんは「大変うれしく思います。協力していただいた先生、日高製菓様、西野農園様に感謝申し上げます。ゼミのみんなもありがとう」と感謝の言葉を述べた。実践的分野の優秀賞には日本大学経済学部フードシステム論「新海ゼミ2班」が選出された。

こうして幕を閉じた今回のアグコン。審査員長を務めたJCA専務理事の比嘉政浩氏は、次のように講評を述べた。

「審査員が口をそろえて言ったのが『どのチームも今の時代を踏まえた課題設定がすばらしかった』ということ。コロナ禍で例年どおりのアプローチが難しい中、努力されたことを高く評価しています。だからこそ、農業の現場が抱える問題にさらにもう一歩踏み込んで、いま現場で表出している課題がなぜ解決されていないかなどについても深く掘り下げて研究してほしいと期待します」

第1回大会から主催者として運営を担ってきた日本大学商学部教授・川野克典氏は「コロナ禍でも、学生たちの「学び」を止めるわけにはいきません。多くの制約があったにもかかわらず、今回のアグコンには、全国の大学から44チームが参加して、農、食、地域、JAなどに関する研究成果を競いました。アグコンに参加した学生たちが、将来の日本を支えてくれると信じています」と締めくくった。

日本の農業は、高齢化や後継者不足といった課題が話題になりがちだ。しかし、コロナ禍という未曾有の事態の中、日本農業の課題に真摯に向き合っている学生たちがいることも事実。彼らの熱意が、社会を変える第一歩となっていく。

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