医学部受験の準備はいつから始めるべきか 一般的な大学入試と異なる特別な事情とは

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大学入試センター試験に代わって、大学入学共通テストが初めて実施された。受験生はもちろん、その保護者も緊張と不安が高まっていることだろう。しかし、「入試直前・入試本番を迎えても、やるべきことは例年と同じ。特別、何かを大きく変える必要はありません」と話すのは、医系専門予備校メディカルラボで東京副統括校舎長を務める渡辺裕志氏だ。

確かに、本格的な受験シーズン前に準備を整えているのが、本来あるべき姿。あとは志望校の過去問対策をしつつ、試験に支障がないように体調をしっかり整えることが大事になる。とくに今年は健康管理の部分で気を使うことが少なくないだろう。しかも、医学部志望者は複数校を受験するケースが多く、1月後半から3月上旬にかけて長丁場の対応が必要になるケースも。ただし、子どもを心配して過干渉になるのは禁物だ。

渡辺裕志氏
メディカルラボ
東京副統括校舎長

「私がよく保護者の皆様にお伝えしているのは、お子さんの話を何も言わずに聞いてあげてください、ということです。お子さんがちょっと弱音を吐くと、叱咤激励したくなるかもしれませんが、その言葉をのみ込んで、共感を示すことが重要です。ナーバスになりやすい時期ですし、ちょっとした一言が反発を生むという親子関係の難しさもあります。何か伝えたいことがあるのなら、学校の先生や私たちのような予備校の担任など、第三者を通じて伝えると角が立たないと思います」

入試期間真っただ中にあっても、学習面でやるべきことはある。

「メディカルラボではつねに『振り返り』を大切にしています。この時期でもやることは一緒で、解けなかった問題を解けるようにするしかありません。例えば試験問題が10問あり、解けた問題が6問、解けなかった問題が4問だったとしても、生徒は8問くらい解けなかった気になって落ち込んでしまいます。そうなると、もう振り返りたくない、なかった過去にしたくなります。

そうではなくて、解けなかったのは時間配分を誤ったのか、問題文を読み間違えたのか、それとも計算ミスなどのケアレスミスなのか、原因をきちんと分析して解決することが必要です。そのために有効なのが、試験の科目と科目の間にある休み時間に、解けなかった問題をメモしておくことです。それを後から復習すれば、次の入試で似たような問題が出たときに対応できるはずです」

準備期間を逆算すると高1秋には医学部進学の決断を

そもそも、筆記試験は答えが決まっていて、「問題文に書かれているヒントを読み解ければ、答えへたどり着くまでの方針や解法の選択は必ず見つかる」と渡辺氏は説く。ただ、医学部入試対策が一般の大学入試よりも難しいといわれているのは、一筋縄ではいかない特別な理由があるからだ。

「一般の大学受験と大きく違う点は3つ。まず、医学部入試の偏差値帯が非常に高いことです。ボリュームゾーンは国公立や私立の医学部は、私大の難関校と同等レベルですから、そこまで学力を上げるのは容易ではありません。

2つ目は、受験のチャンスが限られていること。入学先を大学で選ぶのなら、文系でも文学部、経済学部、法学部など学部、あるいは学科ごとに入試を受けられる機会があります。しかし、医学部の場合、合格の可能性を高めるには複数校を受けるしか手立てはなく、大学で選ぶとなればチャンスはほぼ一度きりと肝に銘じなくてはなりません。

3つ目は、出題傾向といわれるものです。仮に、予備校などの模試で志望校合格の可能性がA判定との評価を受けても、医学部の場合だと安心することはできません。ときには、かなり厳しい結果になることもあるのです。なぜそのようなことが起こるのかというと、一般大学を想定して出題される模試と、大学医学部の出題とでは傾向が違うからです。医学部合格のためには、その大学に合わせた対策を講じることが重要なのです」

では、どのようにして医学部入試の難関に向かったらよいのだろうか。

「第一にやるべきことは、早く意思を固めることです」と渡辺氏は言う。医師国家試験を受験するためには、まず受験資格を取得しなければならず、その登竜門が大学医学部合格であることは言うまでもない。つまり、「大学入試は就職試験とほぼ同義。通常、一般学部の大学生が20歳を過ぎてから行う人生の決断を、何年も前倒しする必要があるのです」と渡辺氏は続ける。医師になると決心しても、そこから合格基準に達する程度にまで学力を上げ、大学に応じた出題傾向の対策を行わなければならない。そのための時間は、長ければ長いほど有利に働く。

「その生徒の学力次第ですが、準備期間を逆算すれば、決意するのは遅くても高校1年生の秋から高校2年生になるまで。現役で合格したいなら、さらに早いほうがよいと思います」

コンサルタントのように課題を解決に導く

本人の気持ちが固まったら、次にやることは学力特性の把握だ。

「私たち医系専門予備校の役割は、いうなればコンサルタントです。どこに弱点や課題があるかを抽出・分析して解決策を提案し、一緒にゴールを目指します。そのためにメディカルラボに入校する際には、スタートレベルチェックテスト(単元別学力診断テスト)、本人による『個人プロフィールリスト』(志望校や、得意不得意といった科目ごとの自己診断)の記入、面談を行ったうえで適切な個別カリキュラムを作成します」

生徒の学力に合わせ、個別カリキュラムを作成するのがメディカルラボの流儀だ

生徒一人ひとり抱えている課題が異なるため、メディカルラボの授業はすべて1対1。生徒1人に対して、科目別に最大7人のプロ講師と担任というチームできめ細かなサポートを行っていく。

「例えば入校時のテストで、得点は数学が高く、英語が低い生徒がいたとします。この場合、普通は数学が得意で、英語が苦手と考えがちですが、私たちは点の取り方を重視します。数学は得意と判断するのではなく、数I、数II、数A、数Bで得点が取れていても、数IIIで得点できていなければ、それはなぜかと考えます。数I・IIの単元の理解度が浅いからなのか、数III自体を理解できていないからなのか、その理由によって授業内容も変わってくるからです」

個人プロフィールリストや面談も、大きな意味を持つ。仮に英語の語彙の少ない生徒が、日々の学習でほとんど英単語帳を見る時間を取っていないとヒアリングでわかれば、そこは改善につなげられる。成績の伸び悩みは、使っている問題集のレベルが本人に合っていないせいだったというケースも多い。だからこそ、いつまでに何を終わらせるのか、教材は何を使うのかといった綿密なプランを組み立て、合格への道のりを並走してくれるプロの力が必要になるのだ。

全校舎に安定したカリキュラムを提供できる情報力

そのプロの力は情報収集の面でも大いに発揮されている。「メディカルラボ情報研究所」では、メディカルラボ全国27校舎に集まる医学部の情報を集約・分析し、安定した情報を各校舎に提供。全国どの校舎でも、カリキュラムやテスト、指導方針などを各大学の傾向に合わせてカスタマイズし、授業に反映できるシステムを築いている。

また、全国の私立・国公立医学部の最新受験情報を網羅した『全国医学部最新受験情報』を毎年発行。21年度版も単に大学側が発表した入試概要をまとめるだけではなく、入試担当者に直接聞き取りするなどして集めた情報を精査し、出題傾向と分析のほか、入試変更点や各種ランキング、面接試験の内容など、医学部受験に必要な情報をカバーしている。

ほかにも、大学医学部の入試担当者を各校舎に招き、詳細な入試情報を話してもらう大学説明会や、医系学部受験に特化した講演会、セミナーを開催。生徒向けだけではなく、「医学部受験生を持つ保護者の役割」など、多様なテーマを設けている。

医師になりたいと思っても、難易度の高さに及び腰になる子もいるはずだ。しかし、渡辺氏は「難しいことは何もありません。野球の素振りと同じで、例えば計算や英単語の反復練習など、面倒くさくて楽しくないことをどれだけ淡々とやり続けられるかだけです。基礎ができれば、そこから標準、応用、発展へと学力は積み上がっていきます」とアドバイスする。

伴走をしてくれる大人、合格したときに心から喜んでくれる家族がいる。なりたい自分になるために必要なのは、一歩を踏み出す勇気ではないだろうか。

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