日本企業の強力な欧州拠点・ルクセンブルク 経済大臣語る「欧州の小国がここまで強い理由」

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ルクセンブルク大公国
経済大臣・開発協力大臣・人道大臣
フランツ・ファイヨ Franz Fayot
パリ第1パンテオン・ソルボンヌ大学法学部にて企業法のDEA(専門研究課程)を修了。弁護士として活動する傍ら1994年にルクセンブルク社会労働党(LSAP)入党。同党から国民議会選挙に出馬し13年初当選。19年に再選を果たし党首となる。2020年2月の内閣改造時に、民主党、LSAP、緑の党による連立政権の、経済大臣・開発協力大臣・人道大臣に就任、現職。政府財政、文化政策、社会正義と貧困問題などに注力

――ルクセンブルクとはどんな国ですか。また、経済戦略についてもお聞かせください。

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ルクセンブルクは、欧州の巨大市場であるドイツとフランスに挟まれている

わが国はドイツ、フランス、ベルギーに囲まれた人口約62万人の小国ですが、欧州有数の金融センターとして知られています。

実は数十年以上前から高付加価値をもたらし専門性がある分野で、経済多様化を推し進める戦略を取っています。とくに力を入れている産業は、ICT、宇宙技術、ヘルステック、環境技術、物流、スマートモビリティなどです。

今、経済省で優先的に取り組んでいるのは、経済のデジタル化。デジタルイノベーション政策を積極的に取り入れ、データ駆動型経済の発展を目指しています。

EUのハイパフォーマンスコンピューター(HPC)プロジェクトを管理するユーロHPC庁の拠点にルクセンブルクが選定されるなど、早速成果も上がっています。わが国独自のHPCを2021年に稼働させ、企業や研究機関に開放するための準備もしています。

デジタル化は、限られた資源の効率を上げ、環境負荷を下げる重要な戦略的手段で、持続可能な経済の実現は最優先課題です。その意味で、経済大臣としてとくに力を入れているのが循環型経済の実装です。われわれのデータ駆動型経済戦略は、ICTと循環型経済を横断的に展開しながら、あらゆるセクターを巻き込むものです。

――ルクセンブルクと日本のパートナーシップについて、どのように評価されていますか。

両国は古くから外交関係がありますが、経済面でも日本はルクセンブルクの重要なパートナーです。みずほ信託銀行、三菱UFJ信託銀行、野村グループ、楽天、ファナックをはじめとする主要な日本企業がルクセンブルクで活躍されていることもその証しでしょう。

一方、カーゴルックス、ポールワースなどルクセンブルク企業も日本で活動を広げており、関係はますます深まっています。

首都ルクセンブルクの旧市街はユネスコ世界遺産。かつては難攻不落と言われた要塞都市
© LFT_ChristopheVanBiesen

17年にルクセンブルクと日本は国交樹立90周年を迎え、アンリ大公殿下が国賓訪問し、天皇陛下にお会いしました。そこで、自動車、ICT、物流、持続可能金融、宇宙、映像産業、観光それぞれの産業で交流が図られました。今後もルクセンブルクは二国間経済関係をさらに強固なものとし、両国が共通の関心を寄せる分野に注力する意向です。

――日本企業が進出するうえでのルクセンブルクの魅力は何でしょうか。

欧州の中心という地理的環境が利点となるでしょう。EU市場との親和性、住民の国際性を誇るルクセンブルクは、欧州の強力なビジネス拠点です。ルクセンブルクは、欧州の巨大市場であるドイツとフランスに挟まれており、ヨーロッパ内の越境eコマースの商品を各国の消費者へ配送するための物流センターを置くのに適した場所です。

さらに、今は最先端のデジタルインフラとビッグデータ処理の経験を生かすことで、次世代ロジスティクス4.0のハブへと発展させようとしています。

加えて企業が活用できるイノベーション助成制度や、国公立研究機関との研究協力制度もあります。ルクセンブルクは法規制がビジネス志向で経済・政治が安定しているため、長期的な経済成長が予測されています。

――ルクセンブルクへ進出するスタートアップ企業も多いようです。

ルクセンブルクのスタートアップシーンは急速に拡大しています。ルクセンブルクをコンセプトの開発や、新製品・サービスを欧州やグローバル市場に出す前に試すのに適したテストマーケットだと考える海外の起業家が進出しています。

IT、フィンテック、サイバーセキュリティ、ヘルステック、製造やビッグデータなどの分野のスタートアップは、活力あるエコシステムと豊富な支援プログラムの恩恵に預かることができます。

最も人気が高いのは、5年前に始まった「Fit4Start」というアクセラレーションプログラム。このプログラムの参加者は各社に応じた支援を受けることができ、資金調達への足がかりを得られます。評判がよく、年を追うごとに海外の参加企業が増えています。

アルム広場(Place d'Armes)ルクセンブルクの人口は約半分が外国人。企業は複数国籍の従業員を抱えるのが当たり前だ
© Uli Fielitz/LFT

――ルクセンブルクは宇宙政策にも力を入れています。日本の得意分野でもあり、協業が楽しみです。

ルクセンブルクでは宇宙経済活動を30年以上にわたり続けてきました。長年の経験を活用して、現在、私たちは人類の宇宙探査と宇宙の利活用の次なるステップに向けたビジネスの土台をつくろうとしています。

16年に宇宙資源ビジネスを開拓するSpaceResources.lu政策を立ち上げ、17年には東京でルクセンブルク政府と日本の内閣府が宇宙資源の探査と利活用についての覚書に調印しました。

昨年、小惑星探査のパイオニアである川口淳一郎博士がルクセンブルク宇宙資源諮問委員会に参加し、宇宙資源の探査・利活用における欧州のハブとしての立場を確立するという目標に向け、アドバイスをくださいました。

ごく最近では、ルクセンブルクは日本とともに、アルテミス協定に調印した最初の8カ国に加わりました。アルテミス計画はNASAにより主導されていますが、24年に月面に2人の宇宙飛行士を送る計画です。

また、ルクセンブルクは欧州宇宙機関(ESA)と共同で「欧州宇宙資源イノベーション・センター(ESRIC)」を開設しました。同センターは、宇宙資源探査ならびに利活用と、そのための要素技術やビジネスチャンスに関する欧州の横断組織になるべく設計されています。引き続き、日本と協力していけることを期待しています。

お知らせ
ルクセンブルク貿易投資事務所は、ルクセンブルク宇宙局(Luxembourg Space Agency)と協力し、日本企業向けに、ルクセンブルクの宇宙セクターの全容と関連する政策、政府が提供するさまざまな支援スキームなどをご紹介するウェビナーを以下の通り開催します。

『ルクセンブルクの宇宙事業環境とビジネスチャンス』
ウェビナーの概要はこちら

日時  :2021年1月26日(火)17:00~18:00
参加方法:申し込みサイトに必要事項を入力してお申し込みください