変わらぬ相談力でライフプランの悩みに対応 リモートコンサルを磨くソニー生命の挑戦

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コロナ禍の長期化で、さまざまな業界で「対面営業」が影響を受けている。生命保険もその1つで、現在は直接会って話をすることが避けられる傾向にある。実は保険の営業に関しては、以前から自宅で面談する営業スタイルを敬遠する顧客もいた。そうしたニーズの変化を受けて、「リモートコンサルティング」を始めたのがソニー生命だ。同社の強みであるライフプランニングを本当にリモートで届けることができるのか。同社の取り組みを追った。

ソニー生命がリモートコンサルティングのサービスを開始したのは、緊急事態宣言が解除されて間もない今年6月だった。独自開発したシステム「C-SAAF Remote」によって、顧客はPCやスマホなど端末の種類を問わず、アプリのインストール不要でブラウザーで利用できる。このシステムでできるのは、もちろんビデオ通話だけではない。ライフプランニングに関する資料を見やすい形で共有できるなど、コンサルティングに必要な機能が充実している。

例えば保険契約時、加入者は健康状態などを告知する義務がある。一般のビデオ会議ツールを使うと加入者は書類に直接書き込むことができないため、保険会社の営業担当者が代理で告知欄に記入するケースが起こりうる。一方、「C-SAAF Remote」は、加入者自身の操作で告知欄にチェックを入れられる。このように顧客が内容を理解したうえで契約手続を進められるのは、「C-SAAF Remote」が保険に特化したリモートシステムであるからだ。

浅沼裕治 取締役執行役員常務

独自のリモートシステムを導入したソニー生命とは、いったいどのような会社なのか。取締役執行役員常務の浅沼裕治氏は、特徴を次のように紹介してくれた。

「ソニー生命は、『ひとのやらないことに挑戦し、社会に貢献する』というソニースピリットのもと、ソニー創業者の一人である盛田昭夫によって1979年に設立されました。私たちは、『世界中どこにもない理想的な保険会社』として、『合理的な生命保険と質の高いサービスを提供することによって、お客さまの経済的保障と安定を図る』を基本使命としています」

その基本使命を体現するのが、全国約5000人のライフプランナーだ。

「商品ありきで生命保険を販売するのではなく、お客さま一人ひとりのライフプランに合った生命保険をオーダーメイドの形で提供するのがライフプランナーの役目です。ライフプランナーには担当エリアがありません。例えば東京でご契約されたお客さまが福岡に引っ越した場合も担当は代わらずに、ご契約時から一生涯の担当者になります。まさに“人生の伴走者”として、ご契約後もきめ細かなコンサルティングフォローに力を入れています」

働き方や家族観の変化でリモートのニーズが高まった

実はリモートコンサルティングのサービスは、コロナ禍をきっかけに開発されたものではない。サービス開発に着手したのは2013年。背景にあったのは、顧客のニーズの多様化だ。生命保険のコンサルティングは顧客の人生に関わることなので、しっかりと話を聞くために時間をつくってもらう必要がある。また、家族のライフプランやお金に関わるデリケートな話が含まれるため、自宅で面談を行うのが一般的だ。ただ、顧客の働き方や家族観が変化するにつれて、従来のやり方を望まない顧客も増えてきた。

「共働きのご家庭では、『仕事が忙しくて面談の時間がつくれない』『小さな子どもがいて部屋が散らかっているので、自宅には上げたくない』といったご要望が増えてきました。こういった状況を鑑みて、2013年からリモートコンサルティングの導入を計画。社内にリモート専用のコンサルティングブースを設置したり、ライフプランナー同士で見やすい資料の作り方を共有したりするなど、遠隔でも実際にお会いするのと変わらないクオリティーを目指して整備を進めていました」(浅沼氏)

サービスの開発は着々と進んだものの、従来の生活習慣や通信環境の問題があり、サービス開始にはなかなか踏み切れなかった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が状況を変えた。

「新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにリモートの機運が高まりました。また、13年当時と比べると通信や端末などのインフラ環境もかなり改善されていました。そこでリモートコンサルティングの取り組みを加速させて、6月から試験導入をしました。業界内でも早期に体制を整備することができたのは、以前から準備を進めていたからです」

テストの結果は上々だった。顧客からは「安心して話ができた」「対面と変わらない情報量だった」「家族と相談しながらリラックスして面談できる」と好意的な声が相次いだ。

これまで生命保険は「直接お会いして、ご説明する」という営業スタイルが主流だったため、一部には新しいコンサルティングへシフトすることに心理的な抵抗感を持つライフプランナーもいた。こうした現場の不安を解消するため、本社の教育部と現場のマネジャーが連携して研修を実施。その成果があったのか、いざ運用を始めてみると、「むしろ積極的に使って、『あの機能を追加してほしい』と要望が上がってくるようになりました」(浅沼氏)。

顧客とライフプランナー、双方からの高評価を得て、9月から全社で本格展開に踏み切った。実施したリモートコンサルティングは8万件を超えている。(11月末時点)

事例の共有でコンサル技術を高め合う風土

好評のリモートコンサルティングだが、「さらにサービスを磨いていきます」と浅沼氏。実際、システム面では、保険料の払込方法の変更や特約の中途付加など、今までリモートでできなかった契約後の保全手続に関する機能が順次追加されて、利便性が向上している。

進化しているのはシステム面だけではない。注目は、ライフプランナーのスキル向上だろう。ソニー生命では、ライフプランナーがリモートコンサルティングの技術を共有し合う社内イベント「リモートコンサルティングロールプレイ甲子園(以下、リモート甲子園)」を開催。11月には決勝大会が行われて、全国123の支社から選ばれた猛者たちがリモートでロールプレイングをして競い合った。浅沼氏は開催の経緯をこう明かす。

「ソニー生命には、ライフプランナーが互いに助け合い高め合う、相互研鑽の精神や文化が根付いています。これまでも全国各地でライフプランナー同士のさまざまな自主研修会が行われ、お客さまへより質の高いサービスを提供するためのノウハウやスキルが共有されてきました。リモートコンサルティングについても、全国の仲間がどのようにリモートを活用しているのかを知りたいという声が多く寄せられました。そこで今回、全国のライフプランナーの知恵を結集し学び合い、高め合う場として、『リモート甲子園』を開催しました」

立川健悟 新宿ライフプランナーセンター第6支社 ライフプランナー

参加者に与えられた時間は1組30分間。本格展開からまだ2カ月だったが、それぞれが現場で気づいた点を盛り込み、質の高いプレゼンテーションが行われた。例えば新宿ライフプランナーセンター第6支社のライフプランナー立川健悟氏は、独自の資料や動画を駆使して保険の基礎を解説していた。「スマホでコンサルティングを受けるお客さまもいらっしゃるので、スマホでも視認しやすい資料作りを心がけました。普段から全国の仲間たちとオンラインで練習していた成果が出ましたね」(立川氏)。一方、横浜ライフプランナーセンター第4支社のライフプランナー小畑章氏はトーク中心の熱量の高いプレゼンテーションを展開。「リモートは相手の表情から読み取れる情報量が少ないので、お客さまの理解度をこまめに確認しながらトークを展開しています」と、独自の工夫を凝らしていた。

小畑章 横浜ライフプランナーセンター第4支社 ライフプランナー

「現場の創意工夫は、私たちの想像を超えて進化しています」と語る浅沼氏は「『リモート甲子園』で発表された好事例は、社内のイントラネットで共有されて、全国で活用されていくでしょう」と横展開を狙っている。

リモートコンサルティングはどこまで磨かれていくのか。最後に浅沼氏は今後の展開について語ってくれた。

「リモートコンサルティングはすでに対面と変わらない品質に達していますが、今後はリモートならではの付加価値もご提供できるはずです。例えばリモートだと長時間集中するのは難しいため、30分経ったら休憩を挟むというライフプランナーがいました。休憩中は回線が切れているため、お客さまはご家族だけで話し合いができます。これはリモートだからできることです。お客さまには、ぜひ私たちのライフプランニングをリモートでも体験していただきたいですね」

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