モビリティ産業に並走する損保ビジネスの進化

保険のDXを描いた広告と事業成長戦略

運転中のサポートや運転技術のトレーニング、事故に遭った場合のサポート……。これらはすべて、損害保険会社大手の損保ジャパンが展開する、通信機能付き多機能ドライブレコーダーを活用した安全運転支援サービス「DRIVING(ドライビング)!」で受けられるサポート機能だ。従来のドライブレコーダーとは一線を画すこのサービスには、変革期を迎えるモビリティ産業とどう向き合おうとしているのか、いわば同社の“企業としての姿勢や思想”が色濃く反映されている。同社リテール商品業務部長 堀江裕志氏と、「DRIVING!」の広告を制作したThe Breakthrough Company GOのビジネスプロデューサー 田中陽樹氏、同社クリエイティブディレクター 砥川直大氏に、ウェブCMの狙いと損害保険業界のこれからについて聞いた。

──CASE※1やMaaS(Mobility as a Service)の進展などによって、モビリティ産業は大きく変わろうとしています。

堀江 損保業界は今、収入保険料の半分以上を自動車保険が担っています。ただ、この先はモビリティ産業の構造が変わることで、主軸である自動車保険にも大きな変化が起こることが予想されます。そこで、われわれも、保険商品の提供だけではなく、個人間カーシェア事業、駐車場のシェア事業など、モビリティ領域の新事業にも注力しています。また、保険商品の開発という面では、従来の自動車保険だけではなく、車を持たない方に対する保険など、モビリティ領域全体に視野を広げ、さまざまなサービスを展開していこうと考えています。

※1「Connected(コネクティッド)」「Autonomous(自動化)」「Shared&Services(シェアリングとサービス)」「Electric(電動化)」の頭文字をつなげたもの

──通信機能付き多機能ドライブレコーダーを活用した安全運転支援サービス「DRIVING(ドライビング)!」もその1つですよね。

損保ジャパン リテール商品業務部長 堀江裕志氏

堀江 そうです。「DRIVING!」の専用ドライブレコーダーは、蓄積された走行データを利用して事故や“ヒヤリ・ハット”が起きた場所をドライバーズページに表示したり、車間距離が一定以下になるとアラートで知らせたりする機能を備えています。万一、事故に遭われた場合には、必要に応じて24時間いつでもALSOKの隊員が駆けつけ※2、事故の初期対応※3をサポートします。

また、お客様の運転記録を分析し、“運転性向”を可視化した診断レポートやパソコンで簡単にできるトレーニングコンテンツもご提供させていただいています。

さらに2021年1月からは、「DRIVING!」にひも付く取り組みとして「走行特性割引」を導入する予定です。これは、ドライブレコーダーで取得した走行データを基に運転特性スコアを算出し、得点の高いお客様の翌年の保険料を5%割り引く仕組みです。急アクセルや急ブレーキ、急ハンドル、制限速度超過などをしなかったお客様に、保険料の割引という形で還元することで、事故そのものが起こりにくいサイクルを生み出したいと考えています。

※2 ALSOKの隊員は、場所や状況によってサービスが提供できない場合もあります。また、示談交渉を行うことはできません
※3 現場の安全確保、救急車の手配、警察への届け出のサポート、相手方や目撃者へのヒアリング、損保ジャパンへの事故報告など

「つながる」ことで大きく高まる安心感

──11月からは「DRIVING!」のウェブCMが公開されています。広告・PR・マーケティングの専門家集団であるGOに制作を依頼した決め手は何でしょう。

堀江 ほかにも候補はありましたが、ほとんど迷うことなく選ばせていただきました。最もわれわれに響いたのが、単に広告を作るだけでなく、それをきちんと届けるところまで徹底してコミットする姿勢です。

GO ビジネスプロデューサー 田中陽樹氏

田中 もちろん質の高いCMを作ることはとても大切なことですが、そもそも何のためにそれをするかというと、事業の成長をお手伝いするためです。そして事業を成長させるには、作ったものを生活者や社会にしっかり届け、そこに何らかの変化を起こす必要があります。われわれが大切にしている部分を評価していただけたのは、とてもうれしいですね。

──初めて「DRIVING!」の特徴をお聞きしたときの印象は。

田中 ただ録画するだけではなく、事前に緊急連絡先を登録しておくことで、もしものときには、保険会社や家族、代理店などにすぐ通知される。それによって事故の当事者の不安もグンと軽くなりますし、家族も安心できる。保険会社にとっても、事故の状況をいち早くつかみやすい。これが社会に普及すれば運転に対する安心が格段に高まり、安全運転の輪も広がっていくと感じました。もっと言うと、移動という行為が進化する時代における「インフラ」になるべきものだと感じました。

GO クリエイティブディレクター 砥川直大氏

砥川 そもそもドライブレコーダーには、“つながっているもの”と“つながっていないもの”があること自体が、世にほとんど知られていないと感じました。ですから、まずはその事実をきちんと伝えるべきだと。

例えば自分の親が車を運転する場面を思い浮かべたとき、通信機能が付いたドライブレコーダーを搭載しているほうが、家族としても安心です。交通事故には車同士の事故以外に、脱輪などの単独事故もありますので、そうした場合にも保険会社や家族、代理店などにすぐ連絡がいくのはとてもありがたいです。その安心を月額850円で得られるというのは、とてもリーズナブルだと感じました。そうしたことをCMできちんと伝えられるよう、制作を進めていきました。

──具体的にはどのような工夫をしましたか。

砥川 事故の実情をきちんとつかむため、ドライブレコーダーに記録されたたくさんの事故映像を見せていただく中で、「事故は誰にでも起こりうる」ということを改めて実感しました。そして、それを伝えるためには、見る人に事故の場面をより抽象的、客観的に捉えていただく必要があると考えました。そこで、ミニチュアを使って事故を再現しました。実際の事故映像は、見慣れていない人にとっては衝撃が強いですし、そこばかりに注目してしまう可能性があるため、ミニチュアを使用したのですが、リアリティーを担保するために、音は実際の交通事故のものを使っています。

他社との協業で進める「保険のDX」

──損保ジャパンでは、モビリティ産業に新しい価値を生み出す取り組みを進めているそうですね。

堀江 1つは、安心・安全な自動運転の実装に向けた取り組みです。自動運転システムを開発するティアフォー社と、高精度三次元地図技術を持つアイサンテクノロジー社と共同で、自動運転実証実験を支援するソリューションを開発しています。その一環として、自治体や交通事業者などと連携し、日本各地で行われる実証実験にこれまで60回以上参画しています。

もう1つは、従来の自動車保険のような「モビリティに付く保険」ではなく、移動手段の多様化に対応する「人に付くモビリティ保険・サービス」の検討を進めています。近年のモビリティ産業の大きな変化により、人々の移動に対する価値観が「所有から使用」へと変わってきています。そうした変化により、今後どんなリスクや心配事が新たに起こりえるのかを考えているところです。

──損害保険の役割も変わっていくということでしょうか。

堀江 何かアクシデントが起こったときの経済的な損失を補償するという従来の損保の役割は引き続き担いつつも、いかにアクシデントが起こらないようにするか、つまり、未然に防止することが非常に大切になってきます。とはいえ、われわれだけでできることは限られていますので、GOさんをはじめ、さまざまな企業様と協業し、デジタルの力も最大限に活用しながら、モビリティ全体の価値をどう高めていくのか。そこに重点を置く必要があると考えています。

田中 いうなれば「保険のDX」ですよね。今後はますます車を所有しない人が増え、シェアサイクルや電動キックボードが一般化していくはずです。自動運転の技術も進歩し、数年で移動の概念が一気に変わるでしょう。

堀江 モビリティ関連の事業もそうですが、SOMPOグループには、介護事業やヘルスケア事業もありますし、生命保険事業もあります。DXを進めながら、そうしたさまざまな業種で得たデータを活用した新しい体験価値の創出というのも、重要なテーマになってくるはずです。

田中 損保ジャパンさんは、“変わってから合わせる”のではなく、自ら挑戦し、変革を牽引されています。今後も、そうした先進的な取り組みを広めるお手伝いをさせていただけるとうれしいですね。

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