「紙中心文化」から一気にDX推進できたワケ

「限定条件付き連帯責任」がカード導入の決め手

新型コロナウイルスが蔓延する2020年春以前から徐々に増えていたテレワークの導入により、経理業務の電子化に踏み切る企業が増えていた。大阪に本社を持つ商社の泉もそのうちの1社。同社では、会社全体の強力なDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するうえで、アメリカン・エキスプレスのコーポレート・カードを導入した。懸念されていた不正利用などのリスクヘッジも、アメックス独自の対応で課題をクリア。導入時期がコロナ禍にさしかかるも社内外の支援の下、経理業務を一気通貫するデジタル化の基盤を整えた。

コロナ禍で一気にDXを推進

泉は戦後間もなくの1947年に創業した歴史ある商社だ。工業繊維、化成品、環境、機械、食品の5つの分野を中心に事業を展開。新しい市場を開拓するコンバーター機能を持つ企業グループであり、「単なる商品の展開ばかりでなく、メーカー機能を併せ持ち、顧客のニーズにこまやかに対応するのが強み」と同社取締役 管理部門長の二見貴之氏は説明する。

本社はユーザーニーズをつかむ商社機能を持ち、工場拠点などを含めたメーカー機能は日本全国11カ所の子会社が担う。「そのため、当然、子会社とのやり取りや全国に広がるお客様のために、営業担当者はもちろんのこと、役員も全国を飛び回り、経費の経理処理も煩雑になっていました」(二見氏)。

経理業務に関しては、これまでもERP(統合業務システム)を導入し分散管理で経理部門の工数を削減するなど、業務の効率化にも取り組んできた。

取締役 管理部門長 二見 貴之氏

しかし、二見氏によれば「とにかく紙が中心の文化。子会社間のやり取りにも正確を期すために帳票などをFAXでやり取りしている状況。勤怠管理から、課ごとに上がってくる固定費の支払いや経理業務、さらには、出張による経費精算などほとんどが紙で動いている状況でした」という。

そこにきて、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の影響で同社もテレワークが実施された。同社の山中孝文代表取締役社長の号令もあり、在宅勤務を滞りなく実施するうえで管理部門および営業部門から改善提案を迅速に募った。そのうえで、スマートフォンの導入、稟議なども電子化できるワークフローシステムや電子印鑑、テレワークを後押しするWEB会議やチャットツールを導入。そして経費精算の効率化を目指し、新型コロナが広がる前から選定していた「SAP Concur」のシステムやアメリカン・エキスプレスのコーポレート・カード導入なども含め、コロナ禍にもかかわらず一気に社内DXを推し進めた。

「それまでは、ハンコを押すため、また経費精算をするために会社に出てこなければならないという状況でした。2020年10月には電子帳簿保存法が改正され、帳簿や領収書などを電子データで保管することも認められました。機は熟したということで一気にDXに舵を切ったのです」(二見氏)

コーポレート・カード導入の課題は不正利用などのリスクヘッジ

経費精算を「SAP Concur」でクラウド化する。ならばコーポレート・カードを導入して、経費精算の申請業務なども自動化するなど電子化のメリットを十分に活用したい。同社ではコーポレート・カードの導入を検討したが、そこには、懸念材料も立ちはだかっていた。

「もともと私は銀行出身なので、コーポレート・カードを扱っていたこともあるのですが、やはり重視したのがリスクヘッジです。例えば、コーポレート・カードの引き落としを会社の口座にしてしまうと、すべて事後承認になります。また、退職する予定の社員が、稟議決裁をする前にカードを使うことができるため不正利用が発生する可能性もあります」(二見氏)

管理部門 財務経理課 課長 村岡 利彦氏

そのため、同社ではいったんコーポレート・カードの引き落としを個人口座で行うようにしたかったが、そうなると今度は社員への負担が増えてしまう。管理部門 財務経理課の村岡利彦課長は「ほかのカード会社とも比較検討をしたが、なかなかこうした点に柔軟な回答はもらえずにいました。ですがアメックスさんは非常に柔軟な回答をしてくれたのです」という。

アメリカン・エキスプレスが提案したのは、「限定条件付き連帯責任」というアメックス独自の債務形態だった。通常は、コーポレート・カード使用のすべての支払債務について、企業は従業員と連帯して責任を負わなければならない。アメリカン・エキスプレスでは、ここに限定条件を付け、「従業員の私的な目的で使用されたもの、また会社から従業員への経費処理や還付が終わっているものは、会社は責務を負わない」としている。会社原因以外の延滞の際にはアメックス側が従業員への督促を行うことになる。

この「限定条件付き連帯責任」が加味されることで、同社では、万一の際の不正利用といった不安もクリアになり、進めている電子化の効果をより向上させられるコーポレート・カードの導入に踏み切れたという。

「パッケージを単に説明するということでなく、まさにひざを突き合わせてわれわれの要望を聞いてくださいました。それこそ、2日に1回は営業担当者さんに電話をして相談していたと思います」(村岡氏)

泉のDXへの挑戦。多彩なサービス利用で効率化を目指す

現在、同社ではさまざまな場面でのデジタル化が進んでいる。そのため、まずは役員レベルでコーポレート・カードの導入を進めており、今後社内でのカード利用の規定なども整備したうえで、営業部門などへの展開を進めていきたいとしている。

「まだ一部の役員が使い始めた状況ですが、反応は上々。個人的な感想になりますが、紙やハンコで行っていた処理が電子化した印象です。今回の改正電子帳簿保存法にも対応し、コーポレート・カード活用により紙の領収書さえ不要とすることで、一気通貫の環境を整えることができました。昭和の時代の業務から、平成を飛び越え、一気に令和になった感覚です」と二見氏は同社が進めるDXへの自信をのぞかせる。

また、村岡氏も丁寧なアメリカン・エキスプレスの対応を評価し、「今後、カードと連携する多彩なサービスの導入にも期待している」と語ってくれた。

「例えば、部門ごとにパーチェシング・カード(購買カード)を発行し、毎月発生する固定費の支払いを行えれば、管理の工数をかなり削減できるはずです。まずはご提案いただいた電話料金などから検討したいと思います」(村岡氏)

また冒頭でも述べたように、同社はメーカー機能としての子会社を多数持つコンバーター企業だ。「当然、子会社への展開も視野に入れている」と二見氏は今後について語った。

「当社ではこれまで、経理部門の合理化、効率化を推進してきました。子会社の経理処理の一部を本社で請け負うシェアードサービスも展開しています。今後、DXの波は子会社へも波及していきます。コーポレート・カードの導入も本社で成果が出せれば、子会社へと広げていくことができます。そうなれば、経理部門の効率化や経費精算の自動化、さらには子会社における経費の透明化なども実現できると考えています」(二見氏)

泉のDXへの挑戦はスタートしたばかり。多くの企業ではDXといいながらも一部の電子化にとどまる事例が多いが、同社ではRPAツールも導入してまさに一気通貫の環境整備が整った。アメリカン・エキスプレスでは、その一端を担い、今後もさまざまなサービス提供で支援していく予定だ。

泉株式会社

1947年創業、京都市下京区において株式会社泉商会設立。繊維/フィルム/プラスチック素材から生み出した、産業資材/環境商品/医療器具/IT商品 等の開発・製造・輸出入・販売。さらには、機械、食品等の輸出入・販売を行う。ユーザーニーズをつかむ商社機能を持つ本社と、工場拠点などを含めたメーカー機能を全国11カ所の子会社が支えるコンバーター企業。単なる商品の展開だけでなく、顧客のニーズにこまやかに対応し新たな市場を開拓している。
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